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New Album『ZARD BLEND II 〜LEAF & SNOW〜』 21世紀という新しい世紀の幕開けとなった今年、デビュー10年目を迎えたZARD。それを記念すべく、11月21日にはメモリアル・アルバム『ZARD BLEND II 〜LEAF & SNOW〜』がリリースされる。ヴォーカル・坂井泉水が夏をテーマにセレクトし、300万枚の大ヒットを記録した97年にリリースされた『ZARD BLEND 〜SUN & STONE〜』に続いて、冬をテーマに選曲されたのが今作『ZARD BLEND II 〜LEAF & SNOW〜』である。もちろん今回も、坂井泉水によるこだわりのセレクト。じっくりと聴き込みたくなる、冬をイメージさせるミディアム系ナンバーを中心とした、全曲リマスタリングされた楽曲が収録されている。人恋しくなるこれからの季節にぴったりともいえる、暖かみのある空気感を持った楽曲に、ふんわりとした坂井のヴォーカルが、冷えた心と身体を優しく包み込んでくれるようだ。 今月号では10周年という点をフィーチャーして、ZARDを側で見守ってきたスタッフの方達に、この10年間の想い出や印象に残っているエピソードなどを聞いてみた。来月号では、坂井自身による各曲のライナー・ノーツを掲載する予定となっているので、そちらの方も見逃さないように……。 |
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ZARDにまつわるエトセトラ.... ●高野昭彦さん(デビュー当時から、ZARDのPVを手掛けている映像プロデューサー) 一番最初の撮影は、91年のデビュー作「Good-bye My Loneliness」だったのですが、この作品は今や映画監督として有名な岩井俊二さんにディレクターをお願いしているのです。この頃は、岩井さんも音楽のP.Vを手掛け始めたばかりで、たまたま知人から作品を見せられ、「どうでしょうか」と坂井さんにプレゼンをしました。真冬に横浜の工場地帯でのロケだったのですが、その時ほど寒かった撮影は、その後の記憶にはないです。岩井さんには、その後の「もう探さない」「不思議ね...」でもPVをお願いしたのですが、坂井さん自身が岩井さんとは意気投合して、「ここは、こうした方がいいんじゃないか」などと、現場であれこれ意見を交わしながら進めていたのを覚えています。 海外ロケは、ロンドン、ニューヨーク、ウエストコースト、シドニーに同行したのですが、ロケで興味深かったのはニューヨーク。坂井さんを撮影する時は、彼女のナチュラルな感じをどう撮っていくのかがテーマになるのですが、この時は「新たな挑戦をしてみよう」という坂井さんの提案もあり、珍しく現地のスタイリストとヘアメイクにお願いしたんです。やはりニューヨークのスタイリストやヘアメイクともなると、自らもアーティストですから当然主張も強い。だから現場では、彼らと絶えずクリエイティブな喧嘩(?)をしていましたね。坂井さん自身もこの時のトライには大変満足していたようですが、実際に作品として使用する機会を逸してしまい、今では貴重な秘蔵映像になってしまいました。 海外ロケは普通にしていても、外国の慣れない環境で、時間的にもギリギリの撮影になるのですが、特に坂井さんの場合、ひとつひとつ撮影した映像をプレイバックして、自分が納得するまでテイクを重ねるので、必ずといっていいほど予定の時間をオーバーしていました。最後の方になると、いつもこちらの方が、「坂井さん、もういいんじゃないですか」ってな感じで……。でも、仕上がった作品を見返してみると、必ず「やっぱり、坂井さんがいいという所までやって、良かった!」と思うんですよ。特にロスで撮影した「永遠」は、強風の砂漠で行われたため耳の中まで砂だらけになるし、寒いし、その上に撮影自体もヘリコプターが入ったり、道路を遮断したりで、超ハードな撮影でした。でも、坂井さん自身が、車を走らせてはプレイ・バックし、砂漠のド真ん中で歌ってはプレイ・バックして……と、トコトンやったおかげで、あのスケール感のある映像が撮れたと思います。 あと、坂井さんは海外へ行くと必ず自分の時間を作って、貪欲に色々な事を吸収しようとしていますね。ニューヨークではブロードウエイ・ミュージカルの「オペラ座の怪人」を見ていましたし、シドニーでは国立美術館で「ピカソの画がよかった」と半日近く出て来ませんでした。今年行ったイタリアでは、ミラノのスカラ座でオペラ「仮面舞踏会」を見に行ってましたし、ブレラ美術館でも半日近く過ごしていました。こういう時の坂井さんって、映像や写真からイメージする「静」の坂井さんとは違った、とても「動」な感じがします。実際、撮影が終わるとすぐホテルに帰って休みたいと思う我々からすると、めちゃめちゃ精力的ですよね。でもこうして、色々な場面で色々なことを積極的に吸収していく中から、あれだけたくさんの、かつ人の心を打つような詞が書けるんだなと納得します。 一言で10年と言いますが、10年前と何ら変わらず、ずっと第一線で活動し続けているというのは、スゴイことだと思います。坂井さん自身は決して口にはしませんが、陰でとても努力しているのだろうという事を、ロケや映像制作の合間から感じています。「努力する」って言うと簡単ですが、それを10年間続けるエネルギーを持っていること、それこそが坂井さんの最大の魅力だと僕は思います。 ●渡部良さん(初期のディレクター。現在はコーディネーターとして参加) 初めて彼女の歌を聴いた時は、正直、その声質の素晴らしさにびっくりしました。声を聴けばすぐに“ZARDだ”って分かる、ありきたりの声とは違う、すごく芯のある個性的な声だなって。今でも変わらないことですけれど、好奇心が強くて色んな事にトライするのが好きな人なので、ヴォーカル録りに関しては色んな実験にも付き合ってもらいましたね。常にトライしてくれる姿勢があるので、坂井さんとのレコーディングはやっていて本当に面白かったです。 そう言えば、最近聞いた話なんですけど、「負けないで」は、歌入れする前に詞だけを色んな人に見せたらあんまりノってくれなかったんだそうです。だから「歌詞が良くないんじゃないか」って最後まで悩んでいたらしいのです。でも、歌入れしたテープを聴いて貰ったら、みんなが「この曲いいね」って言ってくれたって、笑い事のように話をしてくれました。ZARDにとっての代表曲に、実はそんなエピソードがあったっていうのも面白いなって、今だから笑い事のような話ですけれど……、歌詞だけ見ても理解できない(笑)。特に「負けないで」は不思議な詞のハメ方をしていて、サビの“どんなに離れてても”でブレスを入れる所なんかは、たぶん世界中に坂井さんだけじゃないかなって思います。その独特なヴォーカルが歌詞を印象深くしているし、そういう意味で、歌ってみないと分からない曲もありますね。歌詞と歌声が1つになった時に、パワーを発揮する作品があるって事を、改めて感じました。 坂井さんとの思い出で一番印象に残っているのは、アルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』の撮影で行ったニース。僕もそれに同行したのですが、その時僕は時差ボケで朝の4時ぐらいに目が覚めてしまい、ホテルの前が海だったので、そこを散歩しながら写真を撮っていたんです。そうしたらなぜか坂井さんがジョギングの格好で現れて、「一緒に走りますか?」って。常に詞の題材になるように色んな所に出歩いたり、散策したりする、本当に活動的な人なんです。あと、彼女はすごく洞察力に優れていますね。急に「何か悩んでいるの?」と言われて、ギクッとなったり……(笑)。話を聞き出すのがすごく上手いので、つい悩み事を相談してしまったり……。そういう所に根っからの作詞家的な才能というか、取材能力を感じますね。 10年間変わらないと思う部分は、常に自分に厳しい所。上手く歌えないと自分にいつも怒っているし、常に自分を攻めてしまう。こちらがOKを出しているものでも、自分が納得がいかなかったら何回でもやり直す。だから歌入れだけで100時間近くかけた曲もありますよ(笑)。 最近のZARDの作品は、より裸というか、彼女の素顔に近付いているように感じます。アーティストっていう肩書きを背負っている以上、止まってはいられないし、10年前とは一緒じゃいけないって悩みをいつも抱えているみたいです。だから、あんまり頑張り過ぎなくていいよって言ってあげたいですね(笑)。 ●鈴木謙一さん(デビュー当時から、ZARDのジャケットなどを手掛けているデザイナー) 坂井さんはセットを組んで構えて撮影するのが苦手だし、自然体のものの方がいい表情をしていると思うので、なるべくそういった撮影の仕方をしています。レコーディングの時にスタジオに行ってスナップ的なものを撮ったり、スタジオ近辺でスタッフが撮影したり。特に初期の頃は週に1回ぐらいは、そうやって写真を撮る機会を持つようにしていました。そのため、ジャケットに使用している写真は、真正面というよりは、横顔であったりレコーディング・スタジオで何かをしている感じのものが多くなっているんです。もちろん、ちゃんとセットを組んだり、ロケに行って撮影しているものもたくさんありますが。 「サヨナラは今もこの胸に居ます」は逗子で撮影したのですが、これはバスではなくホットドッグ屋さんの中なんです。「もう少し あと少し…」はハウス・スタジオで撮影したのですが、すごく自然な笑顔になっていますよね。これは隣のスタッフとおしゃべりしていたのを、カメラマンが撮ったものなんです。だから、本当に仲間と接している時の、ナチュラルな坂井さんの素顔を捉えた1枚と言えます。 海外ロケに行ったのは、ニース、ロンドン、ニューヨーク、ウエストコースト、シドニーの計5カ国。特に印象深いのが、「Don't you see!」の時に行ったニューヨークです。この時は現地で外国人カメラマンに撮影してもらったのですが、いつものスタッフとは違って冒険的な写真をたくさん撮りました。ジャケットの信号機にぶら下がっているものもそうですし、他にもゴミ箱の上に立ったり、タクシーの屋根に座ったり……。衣装もミニスカートにブーツといったものや、ジャケット写真のようなきっちりとしたスーツ姿など、今までにないテイストに挑戦していました。いつも側にいる僕達では先入観を持ってしまっているので、けっこう刺激のある撮影でした。まったく坂井さんを知らない人が新しい提案をし、それを坂井さんも楽しみながら受け入れようとする事で、また違った表情や新たな面をみんなに見せてくれていました。 「痛いくらい君があふれているよ」の撮影の時は、アクシデントが発生したんです。坂井さんの右足を良く見てもらうと白いものが見えるのですが、これはシップを貼っているんです。走ったり飛び越えたりと、活発に動いてもらっている写真を撮っていたのですが、途中で捻挫をしてしまって。でも、怪我をしたにも関わらず、痛みを顔に出す事もなくちゃんと最後まで続行してくれました。葉山で撮影した「愛がみえない」では撮影後にアクシデントが起こりましたね。みんなで寄ったカフェの店員さんが坂井さんを見て緊張してしまい、カフェオーレを坂井さんに思いきりこぼしてしまったんです……。まさか生の坂井さんが来るとは思ってなかったので、かなり緊張していたみたいですね。 10年間、たくさんの作品がリリースされていますが、ジャケットに関してはブルー系のものが多い事に、今、改めて気づきました。これは坂井さん自身もブルーがすごく好きだから、その影響が出ているのだと思います。色の出方には坂井さん自身も気を使っているのですが、特にこだわっていたのが『ZARD BLEND 〜SUN&STONE〜』。この時の写真の空の紺色にはかなりのこだわりがあったようで、微妙な色違いの印刷見本を何十パターンも見比べて決めていたのを覚えています。 |
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