LIVE REPORT「B'z LIVE-GYM 2002 GREEN〜GO★FIGHT★WIN〜」
8.30 at 横浜国際総合競技場

                                          相変わらず残暑厳しい30度以上の青空を見せていた8月30日・31日の2日間、横浜国際総合競技場でB'zの「B'z LIVE-GYM 2002 GREEN〜GO★FIGHT★WIN〜」が行われた。その1日目である30日の模様をレポート!

 開演時間の18時半が過ぎると、静かに暗転しステージにはスクリーンが下ろされた。いよいよ開演といった興奮の歓声が沸き上がる。スクリーンには2つのハートが映し出され、そこにB'zの2人のシルエットが重なる。左右から台が競り上がり、そこに乗っていた松本孝弘と稲葉浩志の2人が勢い良く飛び下りて登場。激しいディストーション・ギターがかき鳴らされ、アルバム『GREEN』のラストを締め、今回のツアー・タイトルにもなっている「GO★FIGHT★WIN」でライヴはスタート。“戦い続ける This is 魂のWAR”のフレーズが畳み掛けるように響き渡ると、これから約2時間に及ぶステージに対するB'zの2人から7万人への力強い宣戦布告のようにも感じられた。続いて、自分達はまだまだ未熟だと歌っているアルバムのオープニング・ナンバー「STAY GREEN 〜未熟な旅はとまらない〜」。赤いロング・コートを来ていた稲葉は激しくコートを翻し、しょっぱなからハイテンションで客席をグイグイと引き寄せていく。恒例の「LIVE-GYMにようこそ!」の言葉の後には、「ZERO」のキーボードのイントロが鳴らされ、それを聴いた客席は一気に盛り上がり熱狂の渦が巻き起こる。前半はこれに続いて「love me, I love you」「太陽のKomachi Angel」といった懐かしのヒット・シングルが盛り込まれていた。稲葉と松本の2人がステージの端から端へと走り回る姿は、どんなに経験を積んでいてもこの一瞬が楽しくて仕方がないといった様子。

 「最高の夏の夜を楽しんで下さい」と言った後に放たれたのは、リズム隊の音が強く出た重厚なロック・テイストにアレンジされた「太陽のKomachi Angel」。オリジナルの打ち込みと違った厚みのあるサウンドからは、長年の経験を経てきたベテラン・バンドの貫禄が醸し出されていた。「Blue Sunshine」では稲葉がアコギを下げて登場。ライヴがスタートした時、夕陽で微かなオレンジ色に染まっていた会場も、既にこの時間は暗闇に包まれ、昼間と違って時折、涼やかな風が吹き込んでくる。そんな野外ならではの心地よい自然の風と熱気は、雄大な風景をイメージさせるこのナンバーにマッチしている。いつまでも続く荒野の道を走る車がスクリーンに映し出され、どこか異国の草原でこの曲を聴いているような、ふとそんな錯覚が沸き起こる。この季節に行われたツアーらしさを感じる、「太陽のKomachi Angel」「SURFIN' 3000 GTR」「Blue Sunshine」といった爽快なサマー・ソングが3曲繰り広げられた。

 中盤には松本のソロ・コーナー。ここでは「奥が深いのか、俺が青いのか」となかなかギターが言う事を聞いてくれないとコメント。その言葉や表情から彼がどれほどギターを愛おしく思っているのかが伝わり、決してこの言葉は謙遜ではなく本音なのだと感じた。そして春にリリースされたソロ・アルバム『華』の中から「恋歌」を披露。オリエンタルな香り漂うこのナンバーは、リラックスした不思議な空間を会場中に作り出していた。目を閉じて黙々とつま弾くその姿には、何十年という活動の重みと共に、いつまでもギター少年であり続けている松本のひたむきさがあった。初々しいという言葉は不釣り合いかもしれないが、ギターや音楽に対する深い想い、いつまでも失わない熱っぽさがダイレクトに感じられた。こういった空気は、ナマのライヴで本人を目の当たりにするからこそのものなんだ、と改めて実感。

 「気持ち良く演奏させて貰ったので、そちらに行きたいと思います。待っていて下さい」とステージを引っ込む松本。その姿をカメラが追い、スクリーンに映し出される。ここでは彼らが持つユーモアのセンスが存分に味わえる。コント仕立てのもの(!)が展開されたりと、見ているオーディエンスにも笑顔が広がる。そして、現れたのはステージ後方に設置された丸くて狭いステージ。稲葉の姿は?と思ったら松本を誘導していたスタッフの顔がアップになり、それが稲葉である事が判明。帽子と衣装を脱ぐ姿に歓喜の声が上がる。このステージではまったく2人っきり。膝を突き合わせて、向かい合って椅子に座っているこの光景は、今までにない貴重なものかもしれない。一体どんな曲を2人きりのアコースティック・ヴァージョンで聴かせてくれるのかと息を飲み待っていると、ファン投票でも常に上位に食い込んでいる「恋心」が演奏された。悦びの声が上がり、稲葉がするライヴ恒例の振り付けにオーディエンスも呼応。場内は嬉しそうな表情で埋め尽くされた。“忘れない いつまでも恋心 いつまでも 恋心”とフレーズが繰り返される。この曲をあえて2人きりで演奏する意味は何だったのか?――まだまだ青いという気持ちを込めた『GREEN』というアルバムをリリースし、それを引っ提げたツアーで、初々しい恋の気持ちを歌ったこのナンバー――この曲に2人が持ち続けている気持ちが象徴されていると考えるのは深読みのし過ぎだろうか……?! さらにもう1曲「裸足の女神」では、7万人の大合唱が起こる。松本と稲葉が左右に別れて客席の通路を通りステージへと戻って行く。手を振りながら声援に応えつつ、ゆっくりと歩く姿。後ろの席の人達にも、少しでも近く多く自分達の姿を見せようとするサービス精神が伺えるシーンである。

 ステージに戻りバンドの演奏を再開した1曲目のナンバーは、FIFA公式アルバムに収録されている「DEVIL」。グリーンのスポット・ライトを浴びる稲葉のヴォーカルは、どこか別世界に導いて行くかのようにセクシーかつ妖艶な雰囲気。曲のラストではキーボードの増田隆宜が紹介され、荘厳なメロディでのソロが奏でられた。これまでハード&ポップ・ナンバーが続いていた中、ここでドラマティックなバラード「Everlasting」の美しいメロディが紡ぎ出され、しっとりとしたムードに変化。こうやって違和感なく緩急を付け、あっという間に切り替えて聴かせる、こういう所からもB'zの力量を感じる。ラストにドラムのシェーン・ガラースが紹介され、躍動感あるビートを叩き出していた。

 静寂の後はヒット・シングル「FIREBALL」「Liar! Liar!」「さまよえる蒼い弾丸」「ギリギリ chop」「ultra soul」の攻撃的なハード・ナンバー5連発!! あっという間にヒートアップした場内では、思い思いに身体を揺らす7万人の波が押し寄せていた。「さまよえる蒼い弾丸」のラストでベースのビリー・シーンが紹介され、陶酔して激しくかき鳴らす彼のソロに場内は触発され、さらにエキサイトしていく。この鼓動の高まりを携えたまま、さらにアッパーなナンバーにアレンジされた「ギリギリ chop」、そしてハイパー・ロック・チューン「ultra soul」へと突入し、あっという間に本編は終了を迎えた。

 アンコール前。客席からは「アンコール」のコールではなく、ウェーブが何度も作り出されていた。7万人が一体となるその光景は圧巻。そしてメンバーが再び登場。B'zはケツが青いからまだまだやる事がたくさんある!と稲葉が力強く発言し、さらに「みんなで頑張って行きましょう」と会場に温かい言葉を掛ける。まさにその言葉を体感させるように、何かをしなければと気持ちを奮い立たせる「熱き鼓動の果て」のイントロが奏でられ、再びラスト・ステージが始まった。大ラスの「juice」では、入場の時に配られた笛が場内で一斉に鳴らされる。随所に渡って、客席とステージ、松本とビリー、稲葉とビリーといったコール&レスポンス的なパフォーマンスがあったり、曲ラストにはメンバー全員で熱いインプロヴィゼーション的なプレイが行われたりと、鮮烈な疾走感を落として遂に幕は閉じられた。

 ステージ中央に集まり、全員で「お疲れ」のポーズを取る。バンド・メンバーがいなくなった後も、松本、稲葉は左右の花道を駆け巡り最後までファンへの感謝の気持ちを表していた。ステージ中央に寄り添い「どうもありがとう」と深くお辞儀をして、名残り惜しそうにステージを後にする。

 2人の世界観を放った激しいナンバーの連発、そこにジョークを効かせた映像を盛り込んだり、ファン・サービスとも言えるようなヒット・シングル満載のセット・リストを組んだり、全体の構成からもまさに“エンターテイメント”という言葉がぴったり当てはまるステージングであった。そしてさらに今回は、B'zとそれを支えるオーディエンスとの信頼感もしっかりと伝わってくる内容になっていたと思う。もしかしたら、この「B'z LIVE-GYM 2002“GREEN〜GO★FIGHT★WIN〜”」は、初心に返ってまた新たなスタートを切るといった、折り返し的な意味を秘めたツアーだったのだろうか? 彼らが打ち出した“GREEN”という言葉、思っている以上に深みがあるのかもしれない、とこのライヴを見て感じた。





【Set List】

1.GO★FIGHT★WIN/2.STAY GREEN 〜未熟な旅はとまらない〜/3.ZERO
4.love me, I love you/5.Warp/6.太陽のKomachi Angel
7.SURFIN' 3000 GTR/8.Blue Sunshine/9.恋歌 〜TAK SOLO〜
10.恋心 〜Acoustic Corner〜/11.裸足の女神 〜Acoustic Corner〜/12.DEVIL
13.Everlasting/14.FIREBALL/15.Liar! Liar!/16.さまよえる蒼い弾丸
17.ギリギリ chop/18.ultra soul
EN1.熱き鼓動の果て/2.juice