倉木麻衣

3rdアルバム『FAIRY TALE』

10.23リリース


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MAI KURAKI Long Interview
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 楽曲制作のみならず、様々な活動を精力的に行っている倉木麻衣が約1年振りに待望の3rdアルバム『FAIRY TALE』をリリースする。10代最後のこの年に制作された今作には、現在の視点で見つめた忘れたくない想いや、未来への希望を馳せるナンバーが全12曲収録されている。いつまでもピュアな気持ちを持ち続けていたいといった願いと、夢に対する高揚感が目一杯詰め込まれている今作は、大人へと成長する倉木麻衣自身を主人公にした“FAIRY TALE”へと仕上がっているようだ。先月号のインタビューで「3枚目のアルバムは自由にできる気がする」と語ってくれていたが、出来上がった今作は果たしてその通りにできたのだろうか……? アルバムについて話を聞いてみた。

●アルバム・タイトル『FAIRY TALE』は直訳すると“おとぎ話”ですが、これはいつ頃、どのようにして決まっていったんですか?
倉木麻衣(以下倉木):タイトルと全体のコンセプトも踏まえて、5月のゴールデンウィーク頃には決まっていました。考えてみたら、この3rdアルバムは10代最後に作るアルバムだなって思って。ここから先に進んでいく前に、自分の原点に立ち返ってみたり、これからも持ち続けていきたいことを思ったりする時間も多くなってきて。小さい頃の真直ぐな気持ち、例えばおとぎ話を読んで純粋に信じていたようなことも思い出したりして、それでおとぎ話をキーワードにして、過去・現在・未来という時間の流れを綴ってみようとアルバムの制作に入りました。

●10代最後に作るアルバムっていう所から決まっていったんですね。19歳と20歳とでは数字的にも違うし、未成年から成人になる訳ですが、倉木さんの中でもこの変わり目を大きく捉えていたという事ですか?
倉木:18歳の時はそんなに大きくは考えてなかったけど、一つの区切りをつけたいというか。ハタチという響きに敏感になっているかもしれないけど、期待もありつつ色々な事でちょっとした不安と焦りがあったり。心の準備をしながら、今は一日一日を過ごしている感じかな。

●周りに「もうすぐハタチだね」と言われて、余計に気持ちが盛り上がる部分もあるのではないですか?
倉木:そうですね。周りにいわれる度に刻々と一日一日が迫ってくる感じですね(笑)。

●1曲目の「Fairy tale〜my last teenage wish〜」のサブ・タイトルからもそれは感じられますね。今回聴いていてすごく感じたのは「夢」に対する気持ちが強く出ているなって。もちろんこれまでもあったんですけど、今回は葛藤した気持ちがいつもよりストレートに出ていて、逆にそのフレーズがあるからこそ夢への強い決意を感じさせる作品に仕上がっているんじゃないかなって。
倉木: 幼い頃って漠然と何々になりたいって大きな夢を持っていたりするけど、月日を重ねていくとだんだんハッキリしてきて、夢が現実として存在するものなのか、現実逃避をするためなのかってのが分かってくる。でも私は「歌手になりたい」って思った時から、目に見えないけど、毎日が変わった気がするし、だから、これからも年齢に関係なく夢を持つことは大切だなって思えます。

●シングル「Like a star in the night」の取材時に「女性の主人公としては珍しく決意の歌になっています」って言われてましたが、その流れがこのアルバムにもあるのかなって。今まで以上に強い想いを伝えたいって感じがしました。
倉木:そうですね。歌詞を書いていても、1stアルバムや2ndアルバムを作ってきた過程の中とでは違う気持ちがあって。今までは自分の想いを伝えなきゃっていうことを一番に考えてたけど、ライヴをすることで音楽、歌に対する気持ちが変わりました。言葉がメロディに乗った時にもっと魅せることを意識していました。

●やっぱりライヴを通して得たことは、倉木さんの世界観を変えるほど大きな出来事だったのですか?
倉木:大きかったですね。初めてのファンクラブ・イベントは、私1人では出来る事や得る事のなかったこれまでを本当にみんなのおかげで実感できたし、FIFAワールドカップ・オフィシャルコンサートでは私のデビューのきっかけにもなった憧れのローリン・ヒルと同じステージに立つことが出来たし、音楽の力を改めて感じた出来事がたくさんありました。

●「Fairy tale 〜」の、“夢を捨てるのが大人ならば なりたくない”とか“今の自分にとっての毒リンゴは誰だろう?”ってフレーズが印象に残っているんですけど。
倉木:大人になっても子供でいたいって気持ちが強いのかもしれないですね。夢を持つことで変えていけること、成長していけることははまだまだあると思うし。

●“毒リンゴは誰”っていうのは?
倉木:何でも前に進めればOKって訳じゃなくて、選択すること、見極めていくことの大切さって意味を含んで自分にも言い聞かせてる感じです。それをおとぎ話の中から“毒リンゴ”ってフレーズを持ってきて。別に誰って深い意味がある訳ではないんですよ(笑)。

●「Trip in the dream」には“夢は重くない?”ってフレーズがありますね。
倉木:夢見るって事は背負ってるものが大きかったりもするし。乗り越えるまでの心境を“夢は重くない?”“後どのぐらい?”ってサラリと、でもダイレクトに書いてます。

●倉木さんの夢は、どういう風にステップを踏んで来ているのですか?
倉木:まずは歌手になりたいっていう大きな夢があって、デビューしてから3年の中でも音楽に対して欲が出てきて、「歌いたい!」から今度は「聴いて貰いたい!」、そしたら今度は「みんなとその歌を歌いたい!」「ライヴをしたい!」という風に本当に一歩一歩新しい夢、目標が出てきているんです。今はもっともっと深く音楽を追求、幅を広げるために、いち個人としても知識や経験を積んでいくことが大事だと思ってます。

●音楽の幅を広げるっていう所を具体的に教えて下さい。
倉木:音を聴くだけじゃなくて、そのアーティストのバックボーンやその音が生まれた過程を自分の中で吸収していきたいです。

●今後、こういうのがやりたいなっていうのはありますか?
倉木:夏に行った「HOTROD BEACH PARTY」もそうかもしれないけど、アーティストやミュージシャンの方々とコラボレートをしてみたい。デュエットとか(笑)。

●どんな人とやりたいですか?
倉木:大きすぎる夢ですけど(笑)、マイケル・ジャクソンとか。

●さっき子供心を忘れたく無いって言ってましたけど、今回は「私らしくある」っていうのもテーマとしてあるなって感じました。今までの話の中でも、倉木さんって今年は色んな経験をして急激に変化してきていて、色んな事を吸収して成長する部分があったんだけど、その中でも自分というものを見失いたく無いって感じで、何かしらギャップを感じる部分もあったのかなって。
倉木:時が経つのがすごく早く感じるんですよね。ハイスピードの中にいると、結局、目的まで忘れていることもあったりするじゃないですか。残るもの、充実感は自分の意志次第かなって。

●今回は詞先の曲があるそうですね。
倉木:「不思議の国」と「fantasy」です。「不思議の国」は“白い兎”とかが出てきて異空間的な感じもあるんだけど、その中を借りて「現実」を描いたものです。「fantasy」は懐かしい感じ……学校の帰り道に友達と歩いていて、別れ際に「じゃあ、またね!」って言って、その次の日、約束もしてないのに「おはよう」って会えるっていうのは、何か純粋というか、すごい事なんだなぁって思えたことを書きました。もうそれだけで、“fantasy”だなって。

●「fantasy」はふと思い出してバーっと書いたものですか、それとも日記のように書き溜めていたもの?
倉木:夢の空間で描かれるFAIRY TALEをキーワードにした時、自分にとってのfantasyは何だろう?って考えたのが始まり。自然と昔にさかのぼってみて「そう言えばあぜ道通ったな」って。でも、あぜ道を知らない人も多いかもしれない(笑)。レコーディングの時、アシスタント・エンジニアの人に「あぜ道って何?」って聞かれたんです(笑)。小学校の時って裏道とか通って行きませんでした? 道じゃない道を通って、オットットって歩いて冒険したり探検したり。詞を書いていたのが夕方から夜にかけての、ちょうどいい感じの時間だったこともあって、何も考えずにスラスラっと一気に書けました。

●損得勘定のない友人関係って感じですね(笑)。
倉木:ホンネと建て前みたいな、そういうのがない(笑)。一緒に帰るだけで楽しく思える、ただそれだけっていう。

●それを綴れるのが、「19歳の倉木麻衣」なんでしょうね。ラストのこの曲はアコースティックで語りかけるように終わってるから、アルバム全体をさらにいい雰囲気にしていますね。
倉木:あと3rdアルバムでは、季節感にもこだわりがあります。「Feel fine!」「Winter Bells」「Like a star in the night」とシーズン・ソングがあるから、全体的に季節感でも時間の流れを出していきたいなって。

●「Feel fine!」と「Winter Bells」ではまったく違う季節ですね。
倉木:「Winter Bells」を作ったのは大きかったですね。ウィンター・ソングの次はやっぱりサマー・ソングと思って「Feel fine!」が出来て。で、次は秋の気配を感じつつ夏の終わりを予感させる「Like a star in the night」を作って。ある曲を聴くと、その季節感まで蘇ってくるのは素敵だな、いいなぁって、思いました。

●FAIRY TALEというキーワードで括った作詞の方はいかがでしたか?
倉木:大変だったけど(笑)、出来上がりが楽しみでした。

●自分で首を締めちゃうみたいな感じだった?
倉木:自分で決めただけに、そうも言ってられない(笑)。夢だけでは終わらずに、そこに今の気持ちを入れて書くことは自分を見つめ直す時間にもなったけど、テンポを崩さずにメロディに乗せるところで試行錯誤しました。

●一番の大変だった作品は?
倉木:「Fairy tale 〜my last teenage wish〜」ですね。

●ちなみに倉木さんは、小さい頃はおとぎ話とかをよく読んでいましたか?
倉木:グリム童話とか昔話とかイソップ物語とかを読んでました。小さい頃はその世界に入り込んでしまうんですよね。私もシンデレラや白雪姫になりたいとか、白馬の王子様がいつか来るんだって少女チックな夢を持っていた時もありました(笑)。最近ちょっと読み返してみたんですよ。小さい頃は分からなかった部分を理解したり、何を言いたかったのか現実的な教訓みたいなのを感じたりして。「白雪姫」だったらおばあさんにリンゴを貰うじゃないですか。そこで疑う心を持ちなさいって事だなって。だって知らない人からリンゴを貰って、今の世の中だったら食べられないじゃないですか。もしかして毒が入ってるんじゃないかって。私がこういう風に考えるようになったんだってちょっと寂しい部分もあるけど、すんなり受け入れていた時の気持ちも持ち続けていたいなって改めて今回読み直していて思いました。

●今作だけでなく、倉木さんの歌詞には「未来」と書いて「あす」って読む事が多いんですけど、それはどういう意味を持っているのか教えて下さい。
倉木:過去は思い出す事ができるけど戻れない、明日は何が起きるか分からないっていつも思っているんです。だから「明日」って言葉を「未来」って書いた方が希望があるかなって。「未来」って文字には、未知の世界が潜んでいるんです。

●1stアルバムの時は「無我夢中」、2ndアルバムの時は「切磋琢磨」とアルバムを表現していましたが、今回はいかがですか?
倉木:四文字熟語じゃないんですけど、「ここからスタートする気持ち」かな。まだまだこれからなんだって、新しい気持ちで歌入れをしてましたね。初めは無我夢中で、それから自分自身を切磋琢磨して来て、その2つを足してまだまだ「今からスタート」って感じなんです。

●このアルバムを引っ提げて、10月28日から8ヵ月のロング・ツアーに出られますが、やっぱりこれは倉木さんがやりたいって思いが大きくて実現したものなんですか?
倉木:そうですね。ライヴで各地を廻って、全国のみなさんに身近で会ってもっと自分の気持ちを歌を通して伝えたいって。

●ホールクラスが多いのも、間近で伝えたいって事からですか?
倉木:はい。

●20歳の誕生日からスタートするのは偶然ですか?
倉木:これはスタッフのみなさんと一緒に決めた事です。20歳の誕生日からスタートしたいって提案して。

●ステージで20代のスタートを切るのはどんな気持ちなんでしょうね。
倉木:実現できるのが嬉しいし、そこに来てくれるみんなと新しい出発を切れるようなライヴ・ツアーにしたいです。

●最後に、この作品をどういう人にどの様に聴いて貰いたいですか?
倉木:私なりのFAIRY TALEを、みなさんが持っている懐かしい想い出や未来に重ね合わせてみて欲しいな、と思います。



倉木麻衣

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