愛内里菜

New Single「風のない海で抱きしめて」

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今の世の中をシリアスに見つめた視点で描いた 前作「Deep Freeze」に続いて、早くも愛内里菜の2003年第1弾シングル「風のない海で抱きしめて」がリリースされる。今作は新しい年の幕開けに相応しい、明るい未来が続くことを想起させるストレートなラヴ・ソングに仕上がっている。2002年に経験した事を確実に表現し続けてきている彼女。作品のことはもちろん、昨年の活動や2003年の事など色々と語って貰った。


●「Deep Freeze」はシリアスな感じでしたが、今作は素直な未来を感じさせる歌詞になっていますね。
愛内里菜(以下愛内):制作自体は夏に「Deep Freeze」と同時に行っていたものなんです。詞を書く上で愛が必要だっていうのを常に伝えていきたいって思いがあったので、愛する人とずっと一緒にいたいっていう、ストレートなラヴ・ソングにしました。ライヴをやって大きな愛を実感したっていうのもあるんですけど、根本的に自分の中でも愛っていうのがすごく大切なんだろうなって思っているので、どんな事を訴えていても、大きな愛っていうのはどの歌詞にもありますね。歌詞に“憧れた物語”って出てくるんですけど、これは小さい頃に読んだ王子様とお姫様の物語の事を表しているんです。女の子はみんな「白雪姫」や「シンデレラ」や「ロミオとジュリエット」といったお姫様の物語を読むじゃないですか。色んな結末があると思うけど、例え最後は「ロミオとジュリエット」のような死になっても、愛に囲まれてその人の全てになれた事で、人生の中で一番輝いているんだって感じられるシーンだなって思っていて。 この歌の結末も愛する人のためにどこに行くかは分からないけれども、一番愛する人のための全てになれる事、その人に全てを捧げる事によって、生きている中で一番美しいと思える瞬間を味わう事ができるんじゃないかって思いを綴っています。

●タイトルにもなっている「風のない海」とはどういう意味ですか?
愛内:最後に“二人しか知らない隠れ家を見つけようね”ってフレーズがあるんですけど、誰にも邪魔されない2人だけの世界を考えた時に、そういう真空された究極の場所として思い付いたのが「風のない海」。海っていうのは常に風がある場所じゃないですか。だから海の陸に面した部分ではなくて、深海の方。里菜の本当に真空された2人だけの誰にも見えない場所っていうのは、深海をイメージしているんです。

●ラストが「…」で終わっていて、これからまだ物語は続くのかなって。
愛内:「君」と「私」との「こういう物語です」っていうのはまだ言えないじゃないですか。憧れている物語っていうのは、「ロミオとジュリエット」のように死を選ぶ大きな愛の美しさなのか、シンデレラのような王子様に助けられる幸福なものなのか私にも分からないんです。それはきっとそれぞれが到達する、その人が最高の人生だって思える場所によって違うから、これから続く物語は人によって受け取り方が変わるので、私には断言が出来ないんです。

●次のアルバムあたりで続編が出てきたりしそうですね。
愛内:それいいかも(笑)。けっこう言い切りたがりなので、こういう終わり方の歌詞は自分でも珍しいですね。

●主人公の気持ちと一緒にサウンドも転調していて、上手く情景を作り出していますね
愛内:最初は違ったんですけど、歌詞を書きあげるごとに主人公の女の子の心情の動きに合わせたアレンジを行ったり、音を足したりして、言葉のイメージに合ったサウンド作りになるようにこだわりました。ライヴをやる事によって伝えやすいサウンドとか、みんなの受け止めてくれる感じとか、そういうのも体感できたので、それがアレンジにも出ていると思うんです。それまではわりと曲と歌詞の世界だけだったんですけど、ライヴをやる事によって全体像が見えて来たし、すごく作品を作る上では経験を活かせるようになってきました。

●クラブサーキットをやった時は「Run up」「FAITH」といった曲で歌詞が変化したんですけど、2002年のライヴではどのように変わっていったと思いますか?
愛内:具体的にこれと言うよりは、少しずつ色んな経験をして強くなれた自分がいるので、詞を書く事に怖さがなくなったと思います。気持ちに余裕を持てるようになったというか、自分の発言に対してちゃんと自信を持てるようになった。ここまで自分が言えるのかっていう詞に対しての責任とか、この言葉を言うのは怖いとか、これは胸を張って言えないとか、自分に何て答えを返していいのか分からなかったりして、答えられないものがすごくたくさんあったんです。けっこう曖昧な言い方にしていたり、ちょと抑えた部分もあったんですけど、アルバム『POWER OF WORDS』を作ってライヴを回る事によって、今は胸を張って言える事が少しずつ増えてきた。だからそういう部分で、“愛内里菜”っていう存在として変われたんじゃないかなって詞も出てきています。1つ殻を破って、さらに一層自信を持てる自分が1つ出来たって感じですね。今回の歌詞で“独りじゃね こんな私はちっぽけすぎるものだから/君の中 ひたすらにね 私を映してるの/君に映る姿が ただ唯一の/私の居場所探す 「ねぇ 頼りなんだ」”ってネガティヴな部分だけを書いたフレーズがあるんですけど、これは良い意味で勇気があったのかなって。ツアーをやるまでは1人で強がったり責任を背負い込んでいたけど、みんなで大きなものを1つやり遂げたあとでは、頼ってもいいし、頼らなきゃっていう、そういう人に頼る強さが出てきました。それまではこういう部分は隠したいって思っていたタイプだったので。弱い部分も見せる事ができるようになった事で歌詞の世界もさらに広まったと思います。

●カップリングの「little grey mermaid」は、海に続いて人魚が登場しますね。内容的には「Deep Freeze」に通じるシリアスな感じになっていますが。
愛内:人魚姫は愛する人のために家族を捨て、自分の声も失って王子様に会いに人間界に行くんですけど、そういう話にかけて今の時代の事を訴えているんです。「Deep〜」でも影響を受けてましたが、ファンレターに「自分は生きている価値があるのかな?」ってものがけっこうあって……。この歌詞の主人公「私」にとって「人魚」は自分の心に住み着くもう1人の「私」なんです。そんな「私」の胸の内の葛藤を表現しているんですけど、この歌詞から伝えたいことは、どんなに苦しい時にも例えどんなに絶望を感じるような時にも、ぜったいに自分だけは自分のことを裏切りはしないで!!、自分を見失わないでいて欲しい!!、という想い。やっぱり最後まで信じていけるのは自分しかいないと思うし。

●2002年初頭(Vol.87)に“今年の目標は爆進”って言われてましたけど、去年1年間で自分の中の目標はどれだけ達成できたと思いますか? 全体の満足度は?
愛内:やればやるほど物足りなくなるっていうか、上が分からなくなるんですけど(笑)。常に何をするにも100%の人なんていないだろうけど、詞を書くにしても「今」の100%を出さないと、本当に自分の想いが満足いくものにならないんです。でも、上を望むって事は逆に達成したって気持ちがあるからかなって。だから自分の達成度的には100%。手にしたものとか気付いた事が大きいし、強くなった事も実感できたので、2002年は考えていた事は100%達成していると思うんです。でも、「した瞬間」に100じゃなくなって、もっともっとって欲がすごく出てきている。

●作品面ではいかがですか?
愛内:『POWER OF WORDS』の最後の曲「Can you feel the POWER OF WORDS?」の時に一番実感できましたね。自信のある想いを、しっかりと自分の言葉で「私」って言葉を使って初めて伝えられたから。それまではずっと「僕たち」だったのが、「私たち」って言葉に変えて伝えられるようになった。その後にツアーを回ったりして、さらに少しずつ自分の世界を広げる事ができるようになったと思うし、みんなに対しての答えとかも力強い言葉で自信を持って返せるようになった事も自分の中では大きかった。

●ライヴは?
愛内:クラブサーキットの時は失敗は許されないっていうか、そういう姿は見せたく無いって、常に理想を追い求めていたんです。本当の部分を観られるのが怖いっていうか、みんなに自分を訴えかけるっていうよりも、自分に向けて愛内里菜っていうものを一生懸命に訴えて歌っているような感じがあったかもしれない。そう考えると、去年のライヴ・ツアー「RINA AIUCHI LIVE TOUR 2002“POWER OF WORDS”」では歌い手としてすごく素直に自分を出せるようになれました。そうなれたのは自分が強くなったのが1番の原因だし、また、みんながいてくれているおかげで、隠そうとして来たものをちょっとずつ出す自信も出来たし、受け止めてくれるって安心感もあるし。そういうので、やっとヴォーカリストとして当たり前の所に到達できるようになったと感じています。

●ちなみに、ツアーで印象に残っている公演はありますか?
愛内:名古屋。名古屋はライヴ・ハウスだったのでセットが組めなかったんですよ。初めてのツアーだったし、バンドと歌だけで見せるのはわりと自分の中では勝負に出た感じだったから。照明やセットで詞の世界を手助けするのが、演出じゃないですか。自分の中でも歌詞を伝えるために、ここではどういう風に見せようかって演出を考えていたので、それが一気に無くなった中でやる事に対してけっこう心配がありました。でも反対に身近に感じられてどこの会場よりもあっという間に終わってしまいましたね。すごく盛り上がってくれて、その一体感が気持ち良くて印象に残ってますね。

●それが1月に3ケ所で行われるライヴ「R-Live」に影響しているんですね。
愛内:名古屋のライヴ・ハウスは、伝えるにはベストな距離だなってすごく思ったんですよ。今回は歌と演奏っていう音楽の根本的な所を、オーディエンスのみんなとより近くで感じ合いたいし、里菜の想いや歌詞もダイレクトに伝えたいと思ってるので。だからライヴ・ハウスで絶対にやりたいなって思って選びました。

●最後に2003年の目標や新たにやってみたい事を教えて下さい。
愛内:大きな野望だと、「里菜祭り」をしたい! 里菜の理想のツアーは小祭り・小祭り……ってたくさんの大きくないライヴ・ハウスでやって、最後は大きな所で日本3大祭りぐらいの勢いで(笑)、ライヴ兼祭りって感じのものをやりたいんです。雪祭りとかも毎年やってる事が分かってるのにみんな行くでしょ。そういう感じで、みんなで「祭りやで〜!」「お〜!」っていうキズナを感じさせる、「里菜祭り」みたいなものをやって、日本3大祭りの後の4番目ぐらいになるものにしたい(笑)。里菜の誕生日が夏だから、祭りにもちょうどぴったりだし。今は小祭りから大祭りにする企画を考え中。お花が一杯付いている「里菜みこし」とかも作りたいし、大阪の天神祭に続くような名物になるようなものをやりたい! だから2003年は、それをするための下準備となるライヴ活動をしっかりとやっていきたいですね。やっぱり自分の想いをたくさんの場所で伝えたいから、一番伝えやすい距離っていうのは重要なんです。そういう中でしっかりと自信を持った歌詞を書いて、それを自分でちゃんと伝えていきたいっていうのが今年2003年ですね。


愛内里菜

New Single「風のない海で抱きしめて」

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