GIZA studioバレンタインコンサート

at 日本武道館

LIVE REPORT!


倉木麻衣、愛内里菜、GARNET CROWらGIZA studioのアーティストが一同に会する夢の共演ライヴ「GIZA studio バレンタインコンサート」が、2月13日&14日武道館2days、2月17日&18日大阪フェスティバルホール2daysで行われた。バレンタイン・イヴとなったこのツアー初日の2月13日の模様をお届けする。

 バレンタインのイベント・ライヴという事なので、通常の各ライヴとはまた違ったセレクトで楽曲が演奏されるのか? また、“Valentine's Day”といった言葉に含まれる“愛の告白の日”に相応しいあのナンバーはやってもらえるのか……? などとあれこれ期待しなが開演時間を待つ。場内に集まった8000人のオーディエンスもきっと同じ想いだったに違いない。GIZA studioの3組のアーティストを1つのステージで見る事が出来る豪華さも、ファンにとってはたまらないものだろう。様々な想いが渦巻いている場内のざわめきが、心地良く耳に入ってくる。18時30分の開演時間ぴったりにライヴはスタートした。


1.愛内里菜
 トップ・バッターとなったのは愛内里菜。今年のファッションのテーマは“スポーティー”という彼女は、キラキラ光るピンクのサテン地のジャージで華やかに登場。曲の転調と共に激しい感情の波がグイグイと押し寄せてくる、深い愛を綴った「Deep Freeze」でまずは緊張感のある空間を作り出して、じっくりと聴かせるスタート。その緊張を和らげるように続いたのが、リアルなビート感がライヴを実感させる「I can't stop my love for you1」。オーディエンスもここで一気に弾けて応戦する。MCでは本誌Vol.99のバレンタイン特集にも出てきた、犬にマフラーを編んであげたけど、すぐによだれでベタベタになったという話を披露し、“寂しいけどバレンタインに特別な想い出はなくて(笑)。今年をみんなとの最高の想い出にさせて下さい!”と場内を盛り上げる。優しく語りかけるようなヴォーカルを聴かせた「pink baby's breath」では、セットにもたれかかってリラックスした表情を見せる。告白にぴったりなこの曲と彼女が醸し出す雰囲気で、場内は愛に満ちたピンク色へと染まっていった。ここまでは、この日に相応しいミディアム系のゆったりと、そしてじっくりと聴かせるラブ・ソングが続く。この辺りで、こういうのもいいけど、やっぱり愛内らしいノリノリのライヴを……と感じていた人もいたかもしれない。その期待に応えるように“バレンタインだからハッピーな曲ばかりを歌わないといけないかと迷ったけど、ここからはノリノリでいっちゃいます!”と嬉しい言葉が発せられ、後半戦に突入。前半は穏やかな笑顔で愛を歌っていたが、後半戦になるとそのサウンドと共に表情も引き締まり、その意気込みがひしひしと伝わってくる。この変化がまた愛内のアーティスティックさを感じさせる所。“I SAY!, YOU SAY!!”とコール&レスポンスでオーディエンスを煽った「It's crazy for you」、“まだまだ行ける?!”とさらに盛り上げ場内の時間の流れに加速を付けた「SPARK」、思いのたけをぶつけるようなエネルギッシュなヴォーカルで興奮の渦を巻き起こした「恋はスリル、ショック、サスペンス」で愛内のステージは終了。最後に感謝の笑顔で“みんなのハッピーバレンタインを祈ってます。ありがとう!”と、両手を大きく振りながらステージの左右へ走り、挨拶する姿にも彼女らしい人柄が伺えた。

1.Deep Freeze 2.I can't stop my love for you1 3.風のない海で抱きしめて 4.pink baby's breath 5.Sincerely Yours 6.It's crazy for you 7.SPARK 8.恋はスリル、ショック、サスペンス


2.GARNET CROW
 続いてはGARNET CROWの登場。熱気に満ちた場内の余韻をクール・ダウンさせるように、“動”から“静”の世界に引寄せるしっとりとしたミディアム・ナンバー「水のない晴れた海へ」で、自分達の流れを作り出す始まりを切った。今回のステージでは中央と左右にビジョンが設置されていて細かい表情も見る事が出来たのだが、GARNET CROWの時だけ彼らのツアー同様に歌詞も映し出され、その独特の世界観をさらに一層深めていた。静寂に爽快な風を吹き込んだのが、続く「千以上の言葉を並べても...」。ハッピー・ソングではないけれども、清々しい気持ちが綴られているから、バレンタインというテーマにも合うなぁ……などと新しい発見もでき、改めて彼らの歌詞とサウンドのマジックを実感してしまった。“前々日ぐらいから興奮状態でした”と息を弾ませてコメントしている中村由利の姿からも、このイベントへの想いが感じられた。また、作品以上にGARNET CROWのメンバーの個性というのは、ステージ上では顕著に表れていると感じた。中村とAZUKI 七の女性2人はどちらかというとクールにしっとりと想いを伝えており、古井と岡本の男性2人は曲にのめり込んでアグレッシヴに身体全体で表現する。特にそのコントラストが見られたのが「flying」。心の奥深い部分を静かにメロディに落とし込んでいるAZUKIに対して、向かい合っている古井は激しい気持ちを相手にぶつけるように身体全体でキーを叩いている。その正反対の2つの音色が混ざり合うと、ますます曲がドラマティックな展開を見せていく。「Timeless Sleep」はミディアム・スロー系でありながらも、オーディエンスからのハンド・クラップがより一層響き渡り、一体感が強く生み出されていた。“しっとり目だったけど、心が揺れるほど、武道館が震えるほど、ガンガンに飛ばして行きます!”と中村が言うと、「Mysterious Eyes」がスタート。歪みの効いたギターとバック・バンドで、ロック色の強いアレンジに生まれ変わった厚みのあるサウンドを、身体を揺らして受け止めていたオーディエンス。まさに場内は震えていた。腕を大きく左右に振って参加した「二人のロケット」、そしてラストは瑞々しい躍動感溢れる「スパイラル」で一気にエネルギーを放出させるようにハジけて、スタート時とはまったく温度差がある熱さに包まれて終了した。

1.水のない晴れた海へ 2.千以上の言葉を並べても... 3.flying 4.Timeless Sleep 5.Holy ground 6.夢みたあとで 7.未完成な音色 8.Mysterious Eyes 9.二人のロケット 10.スパイラル

3.倉木麻衣
 ライヴのトリを飾るのは倉木麻衣。イントロにオルゴールの音色が聴こえてきたので、オーディエンスにはすぐにあの曲だ!と分かったはず。本誌Vol.99“バレンタイン特集”の「愛の告白がわりに送りたいナンバー」で、読者アンケートの倉木麻衣ソングで1位となっていた「Can't forget your love」。ひたむきに相手の事を思う気持ちを綴った、バレンタインにぴったりのこのラブ・ソングで幕が開けた。白のタンクトップに黒のパンツというスポーティな格好で登場した倉木は、今までとちょっと感じが違う……?と思ったら、いつものトレード・マークであるMai-kヘアではなく髪を下ろして少し大人びた姿を見せていた。バンドはいつものExperienceのメンバー。今回のステージでは、ドラムとベースの低音が響く、迫力のあるサウンドが印象的。特に片想いのトキメキを表現したかのような、胸の鼓動のようにドキドキとドラムが打ち出されていた「Secret of my heart」は、グルーヴィなバラードへと変化を遂げ、切なさの中に漲る力強さが臨場感を持って迫ってきた。“色々な想い出がありますが、次は初めてボストンでレコーディングした曲です”と始まったのは「Baby I Like」。生音でプレイされると、ブラック・テイストなこの楽曲がリズミカルで軽やかな雰囲気を漂わせていて心地良い。ラストは途切れずそのまま「Stepping ∞ Out」に。濃厚なメロディに負けない、低音とファルセットを組み合わせた存在感ある歌声は、彼女のヴォーカリゼーションの幅をリアルに伝えてくる。しっとりと聴かせるバラード・ナンバー「thankful」、ハネたリズムで会場をポップな空間へと導いた「Key to my heart」と続き、そして、今や倉木のライヴのスタンダード・ナンバーとなった「always」が披露された。オーディエンスが大きく手を振ってステージとの一体感を楽しむ様子、それを見つめる倉木。しっかりとした信頼関係のようなものが、この曲の演奏中には漂っていた。バレンタイン・イヴという事で“明日も勇気を持っていきましょう!”と力強くメッセージを送り、ラスト・ナンバー「Love, Day After Tomorrow」のイントロが流れる。指で“L・O・V・E”を作る動作もすっかり恒例となっているようだった。  前者2組はスロー&ミディアム系に始まり、後半はアクティヴなナンバーで盛り上げて余韻を残すといった感じであったが、倉木は緩やかなテンポを終始保ちながら、グルーヴをおこすステージに仕上がっていた。

1.Can't forget your love 2.Secret of my heart 3.NEVER GONNA GIVE YOU UP 4.Baby I Like 5.Stepping ∞ Out 6.thankful 7.Key to my heart 8.always 9.Love, Day After Tomorrow

4.All Cast
 「Love, Day After Tomorrow」を歌い終わった後、倉木が「素晴らしいライヴを一緒に出来たメンバーを呼びます」とGARNET CROWの4人と、愛内里菜をステージへと再び呼び寄せる。倉木が司会役となり“どうでしたか?”と質問すると、中村は“とても楽しめました”、愛内は“バレンタインはチョコを贈るんだけど、音楽で愛を届けられたのが良かった”とそれぞれの感想をコメント。そして、3組でスティービー・ワンダーの「Isn't She Lovely」をコラボレーション。3人の女性ヴォーカルが並ぶと、それぞれのキャラクターがくっきりと浮かび上がっていたのも面白い。倉木は軽く身体を動かしつつもヴォーカルをしっかり歌おうといった感じ。愛内は体全体を使って踊りながら、ノリノリで投げキスなんかもしながら楽しんでいる様子。それと対照的なのが中村。クールに歌っていた姿が逆にインパクトを与える。  また、各自プレイされた楽曲を聴いていても、サウンドはもちろん、同じ「愛」をテーマとしていても倉木は“片想い”、GARNET CROWは“別れ、失恋”、愛内は“幸福な恋人同士”……と、個性を浮かび上がらせる歌詞の世界観となっていた。1組ごとのステージではあまり意識していなかった部分が、他者との共演によってさらに鮮やかに感じられたのではないかと思う。豪華なメンバーを一気に見られるといった部分だけではなく、好きなアーティストをより深く理解出来たといった点も、オーディエンスがこのイベントで得たものの1つかもしれない。

ALL CAST「Isn't She Lovely」