10年ぶり10万人を集めた渚園、感動のどしゃ降りレポート!
B'zの歴史にとって忘れられないエポック・メイキングなライヴとなった93年、B'z LIVEーGYM Pleasure '93“JAP THE RIPPER”。2日間で10万人を動員したそのライヴの興奮が10年の時を経て、再び同じ地で蘇る。静岡県弁天島海浜公園内渚園、日時はちょうどデビュー満15周年を迎える9月20日と21日の2日間。B'zファンにとっては忘れる事の出来ない祭典になるであろうこの日、迷わず僕も会場へと直行した。
野外ライヴにも関わらず、皮肉にも折からの台風15号!の影響で天候は雨。しかし、やはりファンは熱かった。そんな雨をものともせず、ポンチョに身を包んだ5万人は整然と会場に集まり、降り続く雨の中、B'zの出番を今かと待ち続けた。
会場の渚園は相変わらず広大で、この場所で一体となれる喜びを改めて実感する。と同時に、デビュー5年目にして既に卓越したパフォーマンスで10万人のオーディエンスを魅了したB'zの凄さも思い知る。更にデビュー15周年となる今年に同じく10万人を日本全国各地から集める事が出来た、B'zのアーティスト・パワーにも恐れ入った。移り変わりの激しいミュージック・シーンにおいて、ここまで人を惹き付けておけるのは本当にごく限られたアーティストだけでしかないという事は音楽好きなあなたならば分かるだろう。どれだけ素晴らしい作品を創り、ステージを行って来たのかを伝えてくれる集大成がこの渚園でのライヴなのかもしれない。
開演予定より過ぎる事15分、巨大スクリーンに映し出されたのは、B'z15年分のライヴの歩み。その年ごとのハイライト・シーンがフラッシュで次々と紹介され、否が応でもオーディエンスの期待を高めていく。そして、開演1分前よりカウントダウン開始。メンバーの意気込む姿がスクリーンに映し出されると、会場に怒号のような歓声が響き渡る。カウント・ゼロと同時に轟音のパイロ1発、松本のギター・リフで始まったナンバーは「アラクレ」。3日前にリリースされたばかりのニュー・アルバム『BIG MACHINE』のオープニング・トラックだ。純白のスーツ姿で登場した稲葉は、余裕の表情でそのROCK & ROLLなナンバーを歌い出す。
続いて、「Pleasure 2003 〜人生の快楽〜」そして「BLOWIN'」。いつの時代の“Pleasure”シリーズでも花形だったナンバーを惜しげもなく放出。早くもファンの期待に十二分に応える中、まだまだお楽しみはこんなものではなかった。
“みんな生きてるかー!”稲葉のMCにずぶ濡れの声援で返すオーディエンス。ステージの2人も、あっと言う間にびしょ濡れだ。そんな中、懐かしい初期の名曲「OH! GIRL」「Wonderful Opportunity」が、かと思えば最新シングル曲の「野性のENERGY」と、新旧のナンバーを配して、どの時代のファンをも喜ばせる選曲の流れが憎らしい。だから続いて松本がワン・フレーズ、ギターを鳴らしただけでその曲が「TIME」だと分かった時、そこに居合わせた誰もが“時”を超えてB'zの名曲に酔い知れる事を実感した。
毎度の事だが、各節でB'zはファンとの生身のコンタクトを忘れない。会場の広さからくるタイム・ラグもなんのその、稲葉が手拍子を導いて共に歌い上げたナンバーは懐かしい「太陽のKomachi Angel」。続く「GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-」も同様に90年のナンバーながら時代を超越した新鮮さ一杯だ。もちろん、派手なナンバーばかりじゃない。代わって、ピアノのイントロが印象的なバラード「今夜月の見える丘に」、ドラマティックな展開で涙腺を緩ませる「Brotherhood」、とにかく出す曲どの曲も全て、どこかで聴いた事のある曲、思わず口ずさめてしまう曲ばかりの贅沢さ。これこそまさにB'zの歴史的価値、“Pleasure”ツアーの醍醐味そのものなんだ。
降りしきる雨の中で震えても、その場に居たい。そんな曲のパワー、アーティストのパワー、演奏の力が渾然一体となってステージから放出されている。気が付いたらここまで演出らしい演出も見当たらない。15年間のヒット曲マジックに酔わされた前半だった。
暗転してステージからメンバーが消えると、爽やかな音楽と共に現れたのは、センター・ステージ。どうやってそこまで辿り着くのだろう?と訝しがっていると、登場したのはシングル「juice」のジャケットとそっくりな真っ赤なオープンカー。松本の運転でメンバー5人が乗り込み、ゆっくりと観客の間を縫ってステージに到着した
センター・ステージでは稲葉が最後尾の観客に向けて話し掛けたり、メンバーの自己紹介があったりと和みムード満点。そんな中、ラフな演奏で披露されたのはこの3曲「EASY COME、 EASY GO!」「月光」「恋心(KOIーGOKORO)」。いずれもB'zファンにとっては忘れられない、そしてライヴでもお馴染の名曲をしっとりと親密さを感じさせながら演奏してくれた。
再び、今度は稲葉の運転でメイン・ステージへ……。スクリーンには砂漠でカーチェイスを繰り広げる2人の映像が……、これはなんと、96年“spirit loose”ツアーのオープニングで流された映像のディレクターズ・カット版。映像終わりと共に始まったのが「Real Thing Shakes」。まんまその時代にタイム・スリップしたような演出だ。続く「LOVE PHANTOM」では、あの稲葉のマント姿が復活! しかも95年の「BUZZ!!」ツアーで披露された幻のダイブ・シーンが、ここ渚園でも再現されてしまった。そこからはもう後半戦、LIVEーGYM恒例、怒濤の心臓破りナンバーの連続だ! LIVEーGYM定番中の名曲「ZERO」、ブッ倒れるまでやり切る意欲を見せる「juice」、パワー全開の「ultra soul」が、そして灼熱の「IT'S SHOWTIME!!」が次々と繰り広げられる。さらに「juice」では、今度は伝説の93年渚園ライヴで見せた松本の火吹きギター・パフォーマンスが復活。最後にレスポールをスピーカーに投げつけて爆発させるシーンにはゾクッとさせられた。
そして、本編ラストに持って来たのは、これでもかのダメ押しナンバー「BAD COMMUNICATION」。B'zの歴史的名曲として名だたるこのナンバー、稲葉と松本の絶妙の絡みも健在だった。もう、「すごい!」としか言いようがない。
大雨の中で総立ちの2時間半、それでも誰も帰れない。両手はかじかんでふやけてしまった。それでも、拍手は鳴り止まない。
この15年間を統括する“快楽”を一瞬でも伸ばそうとするアンコール。そんな興奮をちょっと和らげたのは、スクリーンに映し出された2人の「ファイト!一発」映像。これも「juice」ツアーで流されていたもの。その時にフラッシュ・バックしたファンも多かったに違いない。
アンコールに応えて登場した2人。なんと!松本は10年前の渚園で着用したものと同じゼブラ柄のオーバーオール姿で登場。ファン心理をくすぐるサービス精神満点だ。アンコール1曲目に聴こえて来たストリングスの調べは、B'z史上ベストセリング・シングルの記録を打ち立てた「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」。続いて2人の巨大パボットが現れると、やはりこの会場では外せない93年の大ヒット曲「裸足の女神」が、そして最後は、これからもB'zのアンセムとして鳴り響き続けるだろう「RUN」。“よくまあ俺たちきたもんだなと〜何もないところからたよりなく始まって”。まさにB'zとそれを取り巻くあらゆるファンの歴史を統括した象徴的なエンディング・ナンバーだった。
稲葉はこの日、最後のMCで「15年間やってきて本当に良かった」と笑顔で語った。今まで15年間走り続けて来た2人が、初めて余裕を持って自らのキャリアを振り返った瞬間だ。
最後に打ち上げられた無数の花火と共に、2003年、B'z“The Final Pleasure”の祭典は幕を閉じた。しかし、まだまだ歴史は終わったわけじゃない。この日の大雨もいづれは伝説になるだろう。そうして僕らはまた、明日に向かい、バラを咲かせよう。(斉田才)
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