日本音楽史上最多となる月間FM局パワー・プレイ30局を獲得した、滴草由実のデビュー・シングル「Don't you wanna see me tonight?」が7月2日にリリースされてから5カ月。その間にも、「TAKE ME TAKE ME」、アルバム先行シングル「CONTROL Your touch」を発表し、希有な程の存在感を放つヴォーカルと、独特の感性によって描き出す歌詞でアルバムへの期待を高めていたが、遂に1stアルバム『CONTROL Your touch』が完成した。今作にはR&B、HIPHOP、FUNK、SOUL、ドラマティックなバラードなど、様々なサウンドと共に生み出されるグルーヴと、滴草自身の手で描いたリアルな感情が全12曲詰め込まれている。1曲歌うごとに体力を消耗するほど歌詞の世界に没頭してレコーディングをすると言う彼女。様々な想いが綴られた音のシズクの固まりとなった今作、一体どのような気持ちで創り上げて来たのだろうか。
●1stアルバムを作り終えて、フルで聴いた時の感想は?
滴草由実(以下滴草):すっごい嬉しかった。思っていた以上の出来だから、自分でも好きだし、自信を持ってお薦め出来るなって。自分のアルバムを持てるって事が、とにかく嬉しかった。こんなに早く出来るとは思ってなかったし、みんなのおかげだなって。アルバム作りは大変だったけど、楽しく出来たのも、挫けそうになった時に立ち直って出来たのも、みんなのおかげ。自分一人のアルバムじゃなくて、みんなの集大成みたいな(笑)。
●アルバム制作で新しい発見とかはありましたか?
滴草:アルバムを作る前から今まで歌った事のないような色んなデモが来てたから、自分はこれをどうやって歌うんだろう、どういう歌詞を書くんだろうって思ってたんです。出来上がってから日にちが経って自分の歌詞を改めて見ると、こんな歌詞が書けるとは思ってなかったとか、あの時こう思ってたんだっていうのを後になって感じました。書いている時は過去のシチュエーションに戻って書いていたし、書いたらすぐに歌っていてその時もそのモードじゃないですか。だからアルバム制作が終わって、吹っ切れて違う事をして現実に戻ってから出来上がったのを読んでみると、こういう事を書く自分がいたんだなって一杯発見しました。
●女優さんでも役になりきって、私生活でも影響するぐらい没頭する人がいるらしいんですが、滴草さんも歌う時にその世界に入り込んでしまうんですね。
滴草:そうですね。歌っている時は特になんですけど、入り込んで歌うのが気持ちいいんですよね。切ないっていうのが逆に心地良かったりするから。歌う時は何か分かんないんですけど切なくなるんですよ。例えば、実家にいる時に遠くて会いたいのに会えないとか、そういう気持ちに戻っていると、彼がいなくても今そこに彼がいて付き合っている感覚になったり。歌詞の内容によっては暗くなる時もあるけど、ブースから出たらちょっと戻ります。あんまり入り過ぎると泣いて鼻声になっても困るのし、みんなも気を遣うから……。泣く時は家で泣いてますね。
●切なくなると言いましたが、これまでの滴草さんの歌詞は、片想いとか別れた後にああだったなって想いを馳せるものが多かったですよね。
滴草:そうなんです(笑)。でも最近はそれだけじゃなくて、色んな違うシチュエーションの歌詞も書いていきたいなって気持ちがあってアルバムで挑戦しています。
●そういう切なさが逆に情熱的というか、恋愛で一番パワーがあるのって片想いの時ってよく言われますし。
滴草:輝きますよね!! 女の子は特に。男の子は分からないんですけど。
●そういうのが滴草さんに多いのは自然とそうなるんですか?
滴草:自然とそうなるんです。
●好きな恋愛パターンみたいなのはありますか?
滴草:え〜、好きな恋愛ですか(笑)。ずっと一緒にいられる事かな。それが今までにないから……。永遠に一緒にいられる人って簡単には見付からないかもしれないけど、私にはそれが理想だし、その人とずっといれたらいいなって思います。歌詞にもずっと一緒にいたいっていうのが出てますし。地元にいた時にオーディションで受かったら家を出るとか、もしかして離ればなれになるかもしれないっていうのがあったので、やっぱりそういうのが影響してるんじゃないかな……。
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●さっき色々な歌詞に挑戦したと言ってましたけど、「Boy」は三角関係の歌詞になってますね。
滴草:これは初めにデモを聴いた時から決めてたんです。歌詞は何パターンか書いていたんだけど、なんかしっくりこないというか、歌っていても一方的に情熱を出し過ぎて曲と合わなかったんです。けっこう前にデモを貰った曲なんですけど「Boy」モードになりきれてなくて、書かなきゃって思ってあせって考えを絞って出してたんです。でも、ある時にそれじゃダメだ、それじゃいかにも作り出したもので、自分の中から書いてないなって思ったんです。歌ってても作り話になるからやめようって。それでちょっと期間を置いて他の曲をやってたんですけど、「Boy」が頭になかった時に夜に外を歩いていて「大阪の空は星がないな〜」って思って、地元の鹿児島はこういう星だったなって思い出したら、その星から色々と浮かんできてその夜一晩で出来た!! 星に思い出があるとかじゃなくて、地元の事とかでそういえばちょっと苦い思い出があったかなって……。思い出って、いい事よりも苦い事とか辛い事とか、そういう事をよく覚えていますよね。私は覚えちゃってるんですよ。だからその夜もそういう風に振り返って歌詞が出来て、これは「Boy」に合うかもって詞ハメしたら良かったので全部出来ちゃった。
●メロディにマッチさせるのに苦労したのでは?
滴草:歌う時はそうでしたね
●ヴォーカルも難しかった?
滴草:「サビの所はキーが高めだけど順調でした。やっぱり難しかったのは「CONTROL Your touch」かな。
●「Tell me how you feel」は男の子が主人公になってますね。「TAKE ME〜」でも“僕”は使用していたけど、ちょっと強さが違いますね。
滴草:「TAKE ME〜」の時は男の子でも女の子でも伝わるように歌ったから、ここまで男の子っぽくはなかったです。この曲は僕がこうしてあげるよとかって、自信家の男の子(笑)。
●なぜそういう男の子を題材にしたのかな?
滴草:デモを聴いている時に、この曲は力強い歌詞がいいかなって。曲も格好良かったから。女の子が男の子っぽく言うわざとらしさでは格好良くならないって思ったので、だったら男の子はどう思っているのかなって、男の子側になってみようって。自分だけが思っているかもしれないけど(笑)、声や歌い方もちょっと変えてて。そしたら、やっぱりいいじゃんって(笑)。メロディとすごいハマる所が偶然にどんどん出来ていって、詞も浮かびやすかった。面白かったです。
●自信家で積極的な男の子ですね。
滴草:でも、そんな自信家な子でも、実は相手の女の子の気持ちがぜんぜん見えてなかった事に気付いたんです。最終的には、この子はやっぱり僕が好きなんだって気付くんだけど、それまでは女の子の様子を窺っていたんですよね。彼女が昔の恋を引きずっているから、ずっと忘れさせたいって思う。でも、女の子はそうは思ってなくて、そんな男の子に既に惹かれていたっていう。日本語が男の子で、英語が女の子の気持ちになってるんです。女の子の気持ちの部分は、本当に自分の事が好きだったらもっとちゃんと気持ちを正直に教えて欲しいって。どうしてもっと心の中を素直に私に言ってくれないの、言ってくれればいいのにって。どう思っているか教えてよって、まだ2人は探り合いな感じがあります。
●男の子は滴草さんの理想かなって思ったんですよ。グイグイ引っ張っていく感じの。
滴草:え〜、考えた事なかった! ちょっと考えてみますね。ん〜、……悪くはないかな(笑)。やっぱり男らしい人が好きだし。そういうのが出てるのかな。
●“こっちへおいで”とか、こういう事を言って欲しい?
滴草:言って欲しい(笑)。ああ、ついて行くって感じ(笑)。
●ラストの「I believe in you」はクリスマスの切ないストーリーですね。
滴草:クリスマスの時にこの曲を聴いたら切なくなるから、聴かない方がいいかも(笑)。でも、最後はちょっと光が見えるようにしたかったので、君の幸せ願っているからってなっています。
●セルフライナーに、この季節になると「あなたを信じてる」という言葉を思い出すってありますが。
滴草:“愛してる”=“その人を信じる”じゃないですか? だから、どんな終わり方で別れてもその人を信じていた事とか、愛していた事とかは大切にしていって欲しいっていうのを伝えたかったんです。その人の幸せを願っていたいって。あの人の事は嫌いになったって言っても、そんなのは別れて悔しかったから言っちゃうだけで、きっと信じていた事を思い出すだろうし。忘れなくてもいいから、次の人を信じられるまで大切にしていって欲しいなって思って書いたんです。クリスマスっていう名前と飾られる街並と音と、冬の星、夜の空、全部がなんか掻き立てられる切なさがあるんですよね。
●アルバムを盛り上げているのが「眠れぬ少女」なんですけど、すごい歌い上げてますね。歌詞は片想いの醍醐味だなって。
滴草:幼い頃まで戻って、純粋な気持ちになって歌詞を書こうと思っていて。純粋な気持ち+ちょっと大人になるというか、ちょっと恋が進んだ感じで、ヤバいくらい好きになった時の感情を混ぜて作って書いたんです。これも空を見ていて書きました。考える時に上を向くんですけど、上を向くと空があるじゃないですか(笑)。夜に書くから、いつも星を見て歌詞を考えてますね。
●それで歌詞に、星や月って言葉がよく登場するんですね。
滴草:夜になると、なんか気分が切なくて……。今思ったんだけど、“あの頃に戻りたいな”って思う事が、そういう歌詞を書かせちゃうのかも。あの頃に戻りたくても戻れないっていうのがだんだん分かってきて、思い出として書く事でそれを思い出したいっていうのがあるのかもしれませんね。
●これは詞先のものだから、歌詞に曲を乗せる感じだったんですよね。
滴草:そうなんです。出来上がってきて、Aメロの出だしの部分で既に“ああ、ぴったり!”って。デモを毎日聴いても飽きなくて。朝起きてつけて寝るまでずっとかけてても飽きなかったんです。それで頭にちゃんと入れてから歌ったので、気持ち良くて歌いながら酔っちゃう感じ。メロディだけでその気持ちを思い出させるんですよ。
●すごい歌い上げてますよね。
滴草:レコーディングでは興奮しちゃって、鼻血が出そうだった(笑)。内心早く歌いたいなって思っていたから、歌うってなったらウワーってなってしまって。Aメロで流れる静けさとサビとの差が余計に胸に波が押し寄せる感じで、気付いたら声が出ていました。スタジオの人はマイクのレベル下げたり、歪んでないか確認したり大変だったみたい。Aメロは自分の声の一番低いキーFより半音低いキーだったから、そこを出すのも腹筋を使って一杯息を吐いたり吸ったりしてました。サビはそんなに高くないけど、壮大なイメージだったから声がバーって出ちゃって。1曲歌った後には、息切れしたり汗かいたりして、自分が知らない間にすごい体力を消耗したってぐらい声を出していた。無心で歌っていたから、この曲はたぶん本当に好きなんだろうなって。
●レコーディングでは思わず泣きそうになったとか。
滴草:入り込んで、眠れぬ少女になってました。座り方も女性らしくなったりして(笑)。泣くというか、半泣きな感じでこらえてましたね。1フレーズ1フレーズのシチュエーションが最初から最後までグルングルンって頭の中にあって、ブースの狭い四角の中に空がある感じで、星を見ているみたいに思えて。ブースもオレンジで薄暗くてシーンってしてるから、それがまた気持ちを入り込ませてくれるんです。
●まさに体当たりで歌っていますね。
滴草:自分が出せればいいかなって。あと私はこうなんだよって、分かってもらえればいいなって。私がいつも歌詞を書く時には、勇気や力をテーマとして絶対に入れてるから、それをみんなに感じてもらえるようにしたかった。ちょっとでもモヤモヤしてた気持ちがあったりしたら、一瞬でもいいし、いつでもいいし、心に残る部分とかが私の歌にあったら嬉しいから。なんか……、いい歌が作りたかったんです。
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●前に滴草さんはマライア・キャリーの「Hero」を聴いて感動して、自分も心に残るような、胸を打つような曲を作りたいって言ってましたが、今回のアルバムの中ではその理想に近付けましたか?
滴草:近付いたと思うし、近付いていて欲しいし、近付けるって思いたい。
●自分の中でお薦めの曲、自慢の曲は?
滴草:みんな好きだけど今は「眠れる少女」と「MOVE ON」と「I believe in you」。やっぱりこの時期はバラードが染みるので。
●アルバムを作ったからこそ湧いてきた欲求とか、この部分をもっとこうしたいって気持ちはありますか?
滴草:自分でどうやって歌うんだろう、どうやって作って、考えていくのかなって思いながらやってきて、けっこう自分が見えてなかった所があったし、歌詞とか歌い方も今まで私はこういう歌い方とか歌詞とか書けなかったよなとか思えるものがあったから、もっと自分に希望を持ってもいいんじゃないかなって感じました。見えない未来が見えて来たというか、もっと行けるって。行けるって思うんだけど、後から自分の考え過ぎちゃう癖とかが出て来て、不安とかも色々と出るんだけど……。でも、このアルバムを作る事が出来たから、ちょっと自信っていうのが付いたかもしれない。
●ちょっとなんですか?
滴草:私は自信を持ったとしても、すぐにそんな事ないかもなとか。自信がつきやすく抜けやすいタイプ(笑)。ヘコみやすく、立ち直りやすい(笑)。だから前進しようって自分で決心した時は、自分が思っていた以上に行くんですよ。ライヴでも自分では絶対に無理だって思ってたけど、出番の直前に何でも来いとか思ったら、力が出せたりするんですよね。落ちる時はとことん落ちるんだけど。その差が激しいんです。
●落ちたらどうやって立ち直るんですか?
滴草:落ちた末に、“ああ、このままじゃ誰も助けてくれないし、生きるのは自分だし、歌って声に出すのも自分だし。どうせ生きてるんだったら、体当たりで行っちゃえ”って開き直りがだんだんと自然に出てくる(笑)。でもまったく1人で立ち直れる事は少なくて、ある人が何気なく言った会話の中の一部分とか一言とか、メールで返って来た言葉とかで、そうだよねって。立ち直りやすくて自分でも安心(笑)。あとは音楽と歌とで立ち直る事もあります。
●シングル「CONTROL Your touch」の取材の時に、一言で救われる事があるって言っていたのは、まさに滴草さんの実体験からなんですね。ところで、12月12日は東京で初のワンマン・ライヴが行われますね。
滴草:まだぜんぜんリハもやってなくて、どんな内容になるかは分からないんですけど。私の歌を一生懸命歌う事、まずはちゃんと自分の思い通りに、伝えたい思いとかを声にして歌う事が私の今の目標。見せ方とかも絶対に大事だとは思うんだけど、やっぱり耳から入って心に伝わるから、その歌がどういう状況でも例え1人でもいいから伝われば私はいいと思います。
●ギターも披露しますか?
滴草:「眠れぬ少女」で練習してます。頑張ります!
●2004年の豊富を聞かせて下さい。
滴草:ライヴ! 直に人と向き合って歌った方が伝わると思うし。ライヴは緊張するけど、ライヴをしている時はやっぱりすごい嬉しいから。歌うんだったら機械で聴いて貰うより、やっぱり生で歌った方が絶対に数倍は伝わるし、感じてもらえると思うから、ライヴは頑張りたいと思います。
●アルバムが出たからアルバム・ツアーして欲しいですね。
滴草:そうですね。とか自分で言いながら、本当に出来るのかって心配になったり(笑)。
●地元だと友達やお母さんが来たりしますよ。
滴草:そうですね。お母さん泣いてるかも(笑)。ともかく、2004年はもっといい曲を作ってると思います!
◆ ◆楽曲解説&Self Liner Notes (「」=Yumi Shizukusa) ◆ ◆
01. 〜Prologue〜 Tracked by DJ ME-YA
DJ ME-YAによるトラック。ヴォイス・サンプリングは滴草由実が参加したインディーズ・アルバム『DAY TRACK 〜Lady master soul〜』に収録された「Don't Say Don't Love」から使用。
02.CONTROL Your touch Music written and tracked by Akihito Tokunaga
バラードの様にゆっくりと始まるが、言葉を刻むように歌いアップ・テンポの曲へと曲調が次々に変化していく曲。メロディ、リズムに乗せ、心地良くクールなグルーヴ感を生み出している言葉のセンスと、アカペラに近いイントロ、Aメロの話すように歌うヴォーカル、Bメロのオクターヴのユニゾン、さびのメロディアスなヴォーカルと滴草の声の表情の変化がポイント。
「私が歌い始めたきっかけは、自分自身が“強くなりたい!なりたい!!”って思ってた時期で、とてつもない悔しさをいつも歌で力に変えていたんです……“勇気”が欲しくて……一歩踏み出す勇気……その内に一歩踏み出せている事に気付いて、時間はかかったけど、その一歩のおかげで今、自分がここにいて逆に歌を届ける事が出来るようになれた。心の中では今でも変わらず強くなりたいって思ってる。今回のこのアルバムの曲達にも、いろいろな形の勇気を込めました。特に「CONTROL Your touch」では、歌詞も曲、その勇気というものをとてもストレートに伝わりやすく表現しました。曲もとてもスピード感溢れていて、胸に届きやすいので、この曲の名前をアルバム・タイトルに決めました」
03.Don't you wanna see me tonight ? Music written and tracked by Akihito Tokunaga
デビュー・シングル。ユニゾンで重ねられたヴォーカルとコーラスの広がりが印象的な曲。この曲のミックスの際には、Mary J. Bligeのサウンド・エンジニアであるHorace Ward氏が参加。彼は滴草のヴォーカルを聴いて「彼女は単純に歌が上手いだけじゃない。メアリーもそうだが、本当の歌唱力とは歌が上手いだけではなく、人に訴える歌が歌えて、その歌がちゃんと音の的に当たる事だ。そういうシンガーは少ないが、彼女はそれを持っている」とコメント。日本音楽史上最多となるFM局月間パワー・プレイ30局を獲得した。
「大切なデビュー曲。“何を私は今伝えたいんだろう”と悩みながら書いた詞で、過去に私が体験した切ない思いをもとに、“誰だって落ち込んで悩んで、どうしようもない時はある。でも人は皆それに対応する力を、強い力を持っていると私は信じているから、諦めないで進んで欲しい”っていう思いを書きました」
04.MOVE ON 〜bounce mix〜 Music written by Tomoo Kasahara, Yoshinobu Ohga,
Yoko Blackstone /Tracked by Yoko Blackstone
作曲、トラックを制作したYOKO Blackstone氏の申し出により、新たなコーラス入れと再ミックスが行われた。彼女の息っぽい声のトーンを活かしたミックスになっている。2番の歌詞で“my name is yumi”と出てくるように彼女は詞に自分自身の経験や感情をありのままにさらけ出す。また、音読みすると“my name is yumi”は“eye 眠い ずっとね”にかかっている。
「この曲の主人公は、相手に対してちょっと強がってしまった素直になれない人。別れる事は簡単だけど、忘れるのって難しい。愛してたからどうしようもなく切ない。でもそれでも前に進もうとする事や、その切ない足跡〈過去〉はその人をもっと輝かせるものなんだっていう事を伝えたい」
05.眠れぬ少女 Additional English lyrics written by Yoko Blackstone
Music written and tracked by Tomoo Kasahara, Yoshinobu Ohga, Yoko Blackstone
初めての詞先曲。詞中の心の葛藤を表現するように、静かにアコースティック・ギターから始まり徐々にさびへ向かって強い心の決心を感じさせるようにドラマティックに展開するメロディが印象的。この曲が出来上がってきて、何度も繰り返し聴きながら色んな事を思い出して泣いたという彼女だったが、レコーディングの時にも思わず感情が抑えられずに泣きそうになったとレコーディングが終わってから話していた。
「恋をすると、寝る時に頭の中で好きな人の事を色々と考えてしまって、もうそれだけで胸がドキドキして眠れない時ってありませんか? それがキーワードに繋がりました。 純粋な気持ちになって書きました。どんな人であろうと、好きになったのなら、真実を恐れず失う事なんか恐れずありのまま自分の気持ちを伝えようという思いを託しました。後悔すると、逆にそれが心に残り、また眠れなくなってしまうから……」
06..星月夜 〜angel vs devil version〜 Music written by Yoko Blackstone/
Tracked by heavy hitters productions
L.A在住のHeavy Hitters Productionsが手掛けたこのヴァージョンは、シングルに収録されたヴァージョンよりもダンサブルに仕上がっている。彼らは西海岸を中心として制作活動を行っており、En Vogueを始めとする様々なアーティストのプロダクションやライヴに携わっている。最初は、HIPHOP色が強くテンポも遅いアレンジだったのだが、もっとアップ・テンポで踊れるグルーヴの方が合いそうだという彼らの意見でこのアレンジとなった。作曲者でありシングル・ヴァージョンのトラックを制作したYOKO Blackstone氏も、新たな楽曲の一面を発見したと絶賛のミックス。
「夜、星の明かりが水面に反射して、水の上に星の輝きがキラキラと揺れ輝いている様子をイメージしてこのタイトルにしました。私が一番最初にこのデモを聴いた時に、何だか不思議な感じで、そういう風景が頭に浮かんだんです。不思議なムード感と切なさがマッチしているところを出したくて、自分が歌う時もムードにどっぷりと入り込んでレコーディングしました」
07.Boy Music written and tracked by Akihito Tokunaga
アコースティック・ギターのイントロが少しUK的なサウンド。良い時もあれば悪い時もあると歌詞でも言っているように、マイナーな曲調のABメロと明るいサビ部分が対照的な曲。また、“So, I say you say “Hey aha ha””という詞には、いつかライヴでこの曲を歌う日が来たら、みんなに歌ってもらいたいという彼女の願いが込められている。
「晴れの日があれば、雨の日がある。笑う日もあれば泣いちゃう日もあるから、そういう意味も込めてSOMETIMESにしました。色んな事を一人で抱え込んでつまづいたり、毎日を流されて過ごしてしまったり、そんな時もあるけど何か一つでも信じるもの(愛や夢など)があって、それを持ち続けていれば、いつか輝ける日がくるんだよっていう事を伝えたかった。自分にとっての過去はこれからを生きていく為の土台なんです。そして私にとって思い出は根っこみたいなもので、そこから色んな花が咲いて、詞や歌にあらわれてくるんだって思います。私が歌を歌う上でとても大切なものです」
08.SOMETIMES Music written and tracked by Akihito Tokunaga
アコースティック・ギターのイントロが少しUK的なサウンド。良い時もあれば悪い時もあると歌詞でも言っているように、マイナーな曲調のABメロと明るいサビ部分が対照的な曲。また、“So, I say you say “Hey aha ha””という詞には、いつかライヴでこの曲を歌う日が来たら、みんなに歌ってもらいたいという彼女の願いが込められている。
「晴れの日があれば、雨の日がある。笑う日もあれば泣いちゃう日もあるから、そういう意味も込めてSOMETIMESにしました。色んな事を一人で抱え込んでつまづいたり、毎日を流されて過ごしてしまったり、そんな時もあるけど何か一つでも信じるもの(愛や夢など)があって、それを持ち続けていれば、いつか輝ける日がくるんだよっていう事を伝えたかった。自分にとっての過去はこれからを生きていく為の土台なんです。そして私にとって思い出は根っこみたいなもので、そこから色んな花が咲いて、詞や歌にあらわれてくるんだって思います。私が歌を歌う上でとても大切なものです」
09.TAKE ME TAKE ME
Music written and tracked by Akihito Tokunaga
2ndシングル。サビの部分では一緒に歌えるような曲にと、この曲のエンディングの部分では実際にシンガーを目指しているヴォーカル・スクールの学生達数十名が参加してレコーディングを行った。またこの曲のマスタリングはエアロスミスやホイットニー・ヒューストンを手掛けてグラミー賞を受賞したMasterdisk〈NYC〉のLeon Zervos氏が手掛けた。
「色んな人達が普通に生きて行く中で、前に進みたい!ここから飛び立ちたい!って思っていても、どうしても出来ないっていう人達はきっと沢山いると思う。やっぱり一人じゃ何も出来ないと思ってしまって、周りの人に合わせてしまったり流されてしまう事もあるし、見かけで簡単に人を判断されたりする事もあると思うんですけど、最終的には世間や周りじゃなくて自分だって思うから例え弱い自分でも、強がっていても本当は寂しかったりする自分でも、“君は君でいればいいんだよ”っていうことが伝えたかった」
10.any more 〜no more tears version〜 Music written by Deron Reynolds
Tracked by Akira Onozuka, Yoshinobu Ohga, Buddaphonic
アルバムの日本語ヴァージョンでは、より切ない気持ちを意識してレコーディングを行った。また、そのヴォーカル・テイクに併せてコーラスも新しく違うラインを再レコーディングしている。日本語詞は同じメロディ・ラインでも英語詞より文字の数量が減ってしまう為、いかに短い言葉数の中に同じメッセージを込めるのか、実際のスタジオ作業中に歌いながら試行錯誤して作っていった曲。
「“私はもうあなたを愛さないわ……”と自分に言い聞かせている感じにしたかったから「any more」というタイトルにしました。あの人はもういないのに、まだ愛しているという虚しさ。だけど、もう一人で歩いて行けるようになろうと自分で決意しないと……と、新しく今までの空から抜け出そうとしているんです。AメロBメロが英語だったシングル・ヴァージョンとは、また違ったany moreです。だって、〜no more tears version〜ですから」
11.Tell me how you feel Additional English lyrics written by Yoko Blackstone & Classical
Music written by Tomoo Kasahara, Yoshinobu Ohga,
Yoko Blackstone/Tracked by Yoko Blackstone
YOKO BlackstoneのR&Bグルーヴがクールなトラック。トラックのリズムとヴォーカル・メロディのリズムが絶妙なバランス。所々に出てくるフェイクやコーラス・ワークにもこだわってレコーディングした曲。日本語詞の部分では“僕”と男性の立場で歌っているが、英語詞で歌っている部分では女性の立場での詞の内容になっておりその歌い方の変化も面白い。
「君はどんな風に感じているのか教えて……っていう相手に対して積極的なニュアンスです。これは男性の立場になって書いてみたら、とても合いそうだなぁ〜って詞のイメージが湧いてきました。レコーディングでは気分も歌詞の言葉使いも男の人になったつもりで歌ったんですよ。やってみたら、イメージ以上に合って少し嬉しびっくりでした」
12.I believe in youMusic written and tracked by Jeffrey Qwest, Stephen Hanuman
Additional tracked by Hirohito Furui
このアルバムで最後にレコーディングを行った曲。寒い季節にぬくもりを感じるようなスロー・ソング。滴草が歌う80年代のR&Bバラードをイメージしてジェフリー・クエスト氏に曲を書いて貰った。シンプルなトラック&優しさと共に内に秘めた強さを感じるヴォーカルが魅力。曲中の本人のさりげないフェイクも80年代のR&Bソングを彷彿する。クエスト氏とはライヴで共演した事もあり、「Yumiの声にはドラマがある。彼女がステージに立つとその場の空気が変わる。まるでテレビやラジオのチャンネルを変えるみたいに。ルーサーヴァンドロスがステージに立って歌った時と同じ声のオーラを彼女は持っている」とレコーディングが終わった際にスタジオで話していた。
「この季節になるといつも思い出す事があります。“あなたを信じている”この信じていた事が私にとっては大事でタイトルにしました。冬をイメージした歌です。とっても切ないんだけど、最後には何だかやわらかな光を感じるような曲です。大好き」
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