約3年振りとなるZARD待望のオリジナル・アルバム『止まっていた時計が今動き出した』が1月28日にリリースされる。この印象的なアルバム・タイトルからも、今後のZARDの活動を予感させるような期待感が満ち溢れてくる。揺るぎないZARDらしさに新しい世界観がプラスされた中村由利(GARNET CROW)が作曲を手掛けたタイトル曲を始め、今作には2002年の夏を鮮やかに彩った「さわやかな君の気持ち」、2003年1月から人気TVアニメ「名探偵コナン」エンディングテーマとしてオンエアされた「明日を夢見て」、そして現在オンエア中の月桂冠「月」CMソング「もっと近くで君の横顔見ていたい」の4曲のシングル作品が収録。さらにZARDへの楽曲提供においては定評のある春畑道哉(TUBE)作曲の「出逢いそして別れ」、栗林誠一郎作曲の「愛であなたを救いましょう」の新曲や、前アルバムのタイトル曲であり、サビ部分のみが明かされていた「時間の翼」もフル・ヴァージョンで登場と、まさに3年待っただけあってマスト・アイテムな内容のアルバムに仕上がっている。ロングセラーを続けている「異邦人」でも現在注目を集めている、変わらない瑞々しさに表現力を増した坂井泉水のヴォーカル、そしてさらに深みを増した恋愛観、人生観がモチーフとなった唯一無二の詞世界を堪能出来る新曲7曲を含む全11曲が収録されたニュー・アルバム。じっくりと丹念に時間を掛けて制作してきたレコーディングの事、各楽曲についてなど坂井泉水に話を聞いた。
●オリジナル・アルバムとしては約3年振りとなりますが、これまで何度かアルバム・レコーディングをされているとのコメントをされていましたが、このアルバム収録曲は実際、いつ頃からどんな風に制作していたものですか? また、コンセプトやテーマといったものはありましたか?
「結局、トータルすると2年掛かりました。アルバム用とかそういう事を考えずに、とにかく良いと思う楽曲をセレクトし、完成させていく。その作業の積み重ねでした。どちらかといえば生みの苦しみを感じた長い時間でしたね。私としては、どの楽曲も“シングルになり得る様なクオリティのもの”という思いがありました。それがイコール予定調和ではなく個性的でバラエティに富んだアルバムになると考えました」
●前作は『時間の翼』で、今作は『止まっていた時計が今動き出した』と、時間に関する言葉になっていますね? 『止まっていた時計が今動き出した』というアルバム・タイトルは前から決めていたのですか?
「そう言えば……そうですね。言われて初めて気が付きました。このタイトルは、最初にこの言葉があって、当初はいつか何かの形で、例えば本の表題などで発表出来れば……などと思っていました。評判がいいとの事だったので、楽曲というより、まずアルバムのタイトルにしようと決めました」
●アルバム・タイトルに込めた意味を教えて下さい。2004年は動くゾ〜といった決意表明にも思えました。
「決意表明とまではいかなくても、いい意味で期待を裏切りたいという気持ちはあります。そして温故知新という気持ちと」
●シングルでも度々コメントされていましたが、アルバム全曲通して聴いてもZARDらしさというか、直球なサウンドが多い気がしましたがサウンド選びに関してはいかがでしょうか?
「正にそうですね。シングルにしても良い楽曲を先ず個人的に選曲しています」
●さて、そんな中で最近は、1曲の中で静と動やドラマティックに盛り上がったりとメリハリを付ける部分で、また新しい展開に挑んでいるような気がします。色々と作業していく内にアレンジで変化した物が多かったりするのでしょうか? 坂井さんからの提案が大きく影響しているのですか?
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「長くやっていますし……意見も色々と言います(笑)。まずは、この曲のアレンジは誰にしようかという所から始まり、アレンジャーに一度お任せします。もう見事にその楽曲を活かすように、なおかつZARDらしく仕上がってくるものもありますし、ちょっとイメージが違うかなぁと思うものもありますね。場合によって、1コーラス分大まかなアレンジを作ったものを聴いて、方向性を確認し、イメージが違えば具体的に提案したり。でも、コーラスを入れたり、ギターを入れ、音色を入れ替えると(もちろんミックスバランスも)かなり良くなります」
●収録曲についてお聞きします。「時間の翼」がいよいよフル・ヴァージョンでの収録になりました。前作のショートVer.とアレンジが違うようですが、今回のためにまた練り直したという感じなのでしょうか?
「そうですね。前回の続編ではあるけれど、また新たな楽曲として今現在は(表現)しています。歌詞はその当時のままです。ただKeyが違うのでショートVer.の部分も全部歌い直しディレクションしました」
●この曲はやはり第2章のスタートとして大切な役割をしているのですが、何気ないようでいてズシリとした言葉があって、全体的にとても温かくて強さがある歌詞だと思いました。この歌詞に坂井さんが込めた意味、そして伝えたかった事は何ですか?
「詞を書いた時は何となく街を歩く、恋人達の様子が浮かんだのですが、一言で言うなら“青春”という感じですね。清々しい曲、アレンジですしね」
●「もっと近くで君の横顔見ていたい」は、シングル時に、始めにCMサイズから、そして徐々に出来上がっていく音を聴かせて頂いていたのですが、どんどんドラマティックにアレンジされて行き、完成形はすごく色々とイメージを広げさせる仕上がりになりました。サウンドの変化などについて教えて下さい。
「この曲はタイアップに合わせて制作しました。CMサイズもまた雰囲気が違うんですよね。サウンドの変化は弦やオーケストレーションを得意とする池田さんのアレンジと緻密なテンポ・チェンジによる所が大きいと思います。これはみんなで相談しました」
●「pray」はハッピーなような悲しい結果があったような(過去形の描写など)、ちょっと不思議な感じがします。とても優しいヴォーカル、そしてコーラス・ワークも印象に残りますが、どのように制作されましたか?
「私はこの曲に思い入れがあって、ビートルズのような楽曲に仕上げたいと思いました。コーラスもそのようにお願いしましたね。ヴォーカルに関しては、実はカレン・カーペンターを思い浮かべ、イメージし、詞を書き、歌い込み、セルフ・ディレクションしています」
●「出逢いそして別れ」はイントロがオリエンタルでインパクトがありますね。そんなサウンドらしく情熱的な歌詞になっていますが、改めて「出逢いそして別れ」というシンプルなタイトルも意外な感じでした。今こういう言葉をストレートに綴るというのも、何か意味がある気がしたのですが……。
「この曲もシングルにしてもいいですよね。春にレコーディングした「異邦人」の影響も多少あるのかな? この曲もオリエンタルですし、でも楽曲や(アレンジが)そうさせるのか、ごく自然に最後の方では自分でフェイクして歌っていました。春畑さんのデモの段階でもアレンジが良くて、そこに更に池田さんのアレンジでドラマティックな仕上がりになりました」
●「止まっていた時計が今動き出した」は中村由利さん作曲ですが、この曲との出会いはどういうものだったのですか?
「スタッフの方から良い曲だからと勧められ、トライしてみました。余計な事を考えずZARDらしいかどうか、私の声と合っているのか、そんな基準で決めさせて頂き、結果とてもZARDらしい楽曲になりました」
●初期のハード・ロック系オケのZARDサウンドっぽさが溢れている楽曲に聴こえました。ギターの音色が哀愁を誘います。曲を初めて聴いた時の印象やイメージ、またアレンジに関して坂井さんの感じた事を教えて下さい。
「イントロのギター・フレーズが懐かしくて新しい、キャッチーなんですよね。常日頃イントロは大事だなと思っているので。あとはゴンゴン(刻み)ギターでサウンドがより安定します」
●歌詞は、過去の別れを断ち切って前に行こうとする、その瞬間が“止まっていた時計が今動き出した”となったと思うのですが、歌詞について教えて下さい。
「以前から哲学など興味があって、これはちょっとそういう視点で歌詞を書いてみました」
●「さわやかな君の気持ち」はアルバム・ヴァージョンになっていますが、この曲だけアレンジしようと思ったのはなぜですか? 他にも色んなヴァージョンがあるのですか? アコギがエレキになったり、ドラムも生に変わっていたりと、全体の印象がより鮮明でアルバムをより躍動感ある感じにする効果がすごくあった気がしました。
「ええ、全部やり直しました。Keyもオリジナルより半音下なので。こちらの方がシンプルなバンド・サウンドになりました。アレンジの彼はリミックスが得意なので、ドラムの音色やグルーヴ感を変えてくれるかなと思って」
●「愛であなたを救いましょう」はアルバム中で一番アダルトでジャジーなナンバーですが、この曲を選んだのはどうしてですか? 作曲が栗林さんでアレンジが明石さんというのも懐かしく、そして最近にはない組み合わせですね。
「正確な日付けは忘れましたが、何年も前に完成させた曲で、“すごく良いからお取り置きに”していました。ですから、この機会に発表出来て本当に嬉しい。栗林さんのデモもラフでしたが、こんな感じで、それを明石さんがよりダイナミックにアレンジしていますね。ヴォーカルに関してはオケにしっくりくるまで何度も歌ってみました」
●歌詞は、なんかすごく可愛い大人の女性だな〜と感じました。この歌詞について込めた思いを教えて下さい。
「実は歌詞は当時はあまり評判が良くなかったんですよ(笑)。今、詞を読み聴くと、私自身も新鮮ですね」
●「天使のような笑顔で」はすごく華やかなサウンドだなと思いましたが、坂井さんは曲を聴いた時の最初の印象や浮かんだ映像はどういうものでしたか?
「シンコペーションのリズムやファルセットも必要ですし、トライするのに難しい曲だなと思いました」
●フェイクを一杯入れたり、跳ねたヴォーカルが楽しそうです。でもA・Bメロはメロの移り変わりが多く、特に2コーラス目の“昨日今日〜まどわされたくない、ね!”のパートはメロに乗っていかないと難しそうだなと感じました。ヴォーカルについて教えて下さい。
「この曲は本当に難しいんですよ(笑)。でも、だからこそ挑戦し甲斐がある。裏のリズムから入ったり、言葉数の多い所は音符にない音を歌う訳ですし、色々試したので時間が掛かりました。ファイクに関しては大野さんのデモを参考にさせてもらいました」
●歌詞は男性から好きな女性への視点で描かれているのですか? もしそうなら坂井さんも“天使のような笑顔”を浮かべていたい、相手の人にそういう存在でいたい、といった気持ちがあるのかなと思ったのですが。歌詞について教えて下さい。
「これは解釈が難しいと思います。男性から見た“彼女”かもしれませんし、所々「あら? いつの間にか主人公は女性に……」というマジックでもあります」
●この曲はライヴでやるとすごい合唱が起こりそうな、そんな元気で楽しそうな雰囲気があります。そういう事もレコーディングの時に考えたりしますか? みんなで歌いたいなぁとか…….
「イントロのフェイクの“シャラララ〜”や“チュチュルチュルル”など可愛くて盛り上がりそうですよね」
●「悲しいほど 今日は雨でも」はタイトルからするとバラードで悲しい曲かと思ったら、意表を付いた感じでした。タイトルと歌詞についてどういう気持ちを描いているのか教えて下さい。
「元のデモはミディアム・スローでしたし、最初は南国風アレンジにしてもらって、温かなフラ(フラダンス)を踊るような歌詞にしようと思っていましたから、アレンジの方向性が変わって詞はガラリと現代的になりましたが、元の歌詞のゆっくりした“名残”があります」
●女性なら誰でも自分で“可愛くないな”って分かっていても取ってしまう行動などがあるのですが、坂井さんも歌詞で描いているって事はあるのですね。ちなみに、どんな所が私は可愛く無い……、と感じる事があるのか教えて頂けますか? また坂井さんが思う“可愛い女性像”ってどんな人ですか?
「私の性格はちょっと男性的かもしれません(あまり可愛くない!)。憧れる女優さんはオードリー・ヘップバーンと吉永小百合さん」
●特に印象に残っている曲や、苦労した曲、想い出深い曲などがあれば教えて下さい。
「苦労した曲はアルバムの中では「悲しいほど今日は雨でも」ですね。こう、テニスで言う(ガットの)スィート・スポットが小さくて……。思い入れある曲は全部ですが、強いて言えば「pray」です」
●レコーディングで印象に残っている事や何かエピソードがあれば教えて下さい。
「マイペースな私のお尻を周りのスタッフの方々が叩いてくれましたので、マイペースを少し返上出来、無事完成する事が出来ました。途中倒れたりもしましたが、まぁ、それも後になってみれば良い思い出?(笑)」
●アルバム全体を通して聴くとエネルギーを漲らせてくれるというか、相変わらずのポジティヴ・サウンド&歌詞の世界観に満ちていると思いました。坂井さん自身が今作を聴き返して感じた事をお聞かせ下さい。また、どういう人にどのように聴いて欲しいといったものもあれば教えて下さい。
「そう、待っていて下さるファンのみなさん、サポートして下さるスタッフのみなさんがいるから作品創りに没頭出来、“音楽”を表現出来るので「私も頑張るからみんなも頑張って」という想いです」
●さて、前々からライヴをやりたいといった発言がありますが、具体的にどんなライヴをやりたいと思われていますか?
「年齢と共に変化させたいと思っていますが、今はまだシンプルで元気なステージでいいと思っています。観に来て下さるファンの方に楽しんで頂けるようなステージが理想ですね」
●2004年はアルバムからスタート!と、すごくワクワクしてくるのですが、このアルバムが第2章とするなら、坂井さんの第1章はどんな感じで、第2章はどうしていきたいと思っていますか?
「第1章は急いで駆け抜け、第2章はその景色を味わいながら着々と歩いてゆきたいですね。2004年は、新しい自分を発見したいと思います」
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