2003年のB'zは目まぐるしいほどアクティヴであったが、そんな活動の締めくくりとなったのが、11月20日のさいたまスーパーアリーナからスタートしたB'zのライヴ・ツアー「B'z LIVE-GYM 2003“BIG MACHINE”」。全国6ケ所12公演行われたこのツアー、ラストは12月24日、25日、27日の3日間に渡って行われた東京ドーム公演。12月24日のクリスマス・イヴに行われたB'zのライヴをレポート!!
ステージ中央には大型スクリーン(LED)、左右にもこれより小さなスクリーンが備え付けられている。そして、ステージ左右には白い布が掛けられた巨大なモノが1つずつ置かれている。客電が落ちて場内が真っ暗になると、中央のLEDに岩山を登る足元が映し出される。山を登っていくとドリルで岩を砕き始め、そこから“BIG MACHINE”というロゴが踊り出てくる。赤の照明がチカチカと点灯し出すと、LEDには大きく「B'z LIVE-GYM 2003“BIG MACHINE”」の文字が浮かび、「儚いダイヤモンド」のイントロが流れる。明るくなったステージには、既に松本孝弘と稲葉浩志が登場していた。松本は白のロング・ジャケット、稲葉は青い皮ジャンに赤のパンツにサングラス姿。オープニングに相応しいスピード感溢れるロック・ナンバーで、場内はあっという間に身体全体を揺らしてサウンドに身を委ねていた。曲間にパイロが一発上がると、華やかなショウの始まりを一気に感じさせる。サポート・メンバーがドラム(シェーン・ガラース)、ベース(バリー・スパークス)、キーボード(増田隆宣)に加えて、今回はギター&コーラスで大田紳一郎が参加しているので、これまで以上により音へのこだわりを追求したステージになっている事が伺える。
「ultra soul」ではイントロが流れた瞬間から手拍子が湧き起こり、5万人収容のドームに興奮の波が一気に広がっていく。左右にあった布が取り除かれるとそこにはメンバーの白い石像が現れ、この像に曲の熱さが示されているのか、ゆらめく炎の模様が映し出される。曲が終わるとさらりと“B'zのライヴジムにようこそ!”と言い、すぐに「WAKE UP, RIGHT NOW」に突入。サビの疾走感と共に、2人が左右に弾かれるように走っていく。今回のLEDは、スクリーンが4等分されたり2等分されたりといつもと違った試みがされ、4人の松本、稲葉の姿があったり、2人の姿が同時に見られたりする時があった。
最初のMCでは挨拶をした後、クリスマスというこの大切な日にB'zのライヴに来てくれた事への感謝の気持ちを語っていた(25日には“本当にここでいいのね?”と冗談っぽく言い、場内に笑いを起こしていた)。そして“みんながBIG MACHINEに乗っているように、時に激しく、時にゆっくりと、好きなように楽しんで下さい”とライヴについての言葉を述べる。
オープニングからスピーディーなロック・ナンバーが続いていたが、ここからは“時にゆっくり”な部分なのか、「I'm in love?」「ブルージーな朝」「愛と憎しみのハジマリ」といったゆったりとしたテンポのナンバーへと変わる。生で聴くとより一層片想いの気持ちが強く伝わって来た「I'm in love?」は、ライヴの躍動感がプラスされた心地良いポップ感によって温かな空気を放っていた。「ブルージーな朝」では松本が作品とは違った雰囲気のあるフレーズをプレイして一気にアダルトな世界を創り上げ、「愛と憎しみのハジマリ」では後半にある速弾き部分で作品以上にテクニカルなプレイを披露していた。
稲葉がブルース・ハープで「ジングルベル」のフレーズを吹いて、続いて「学園天国」を吹き始める。「学園天国」の“Hey hey hey〜”の部分では稲葉がそのフレーズを吹くと、オーディエンスが歌って返すというコール&レスポンスが楽しまれた。そして、ブルース・ハープの印象的なイントロの「Don't Leave Me」へ。身体を反らして天を仰ぎ見るようなスタイルで熱唱する稲葉。ラストのシャウトからも溢れんばかりの情熱が伝わり、そんな迫力の世界に場内はグイグイと惹き込まれて、息を飲んだような静寂に包まれる。
久々にステージで披露された「ヒミツなふたり」では、イントロを聴いて歓声が湧き起こる。4等分されたLEDの画面が赤く染まり、女性のシルエットが曲に合わせてセクシーにダンスを踊る。イントロではそのスクリーン前に移動した稲葉の下からマラカスが飛び上がって来て、マラカスもプレイしていた。次に続いたのは「love me, I love you」。“そうだろ”の部分で早口に“そうだろ、そうだろ、そうだろ!”と稲葉がちょっと攻撃的に語りかけていた姿が印象に残っている。
キーボードの増田が、荘厳なオルガンの音色で「きよしこの夜」を奏で始める。そこにドラム、ベースが重なり、松本の少しルーズでブルージーなギターが絡まってのセッション。緩やかな流れを持った格好良いヴァージョンへと仕上がっていた。そして、松本ソロ・コーナーへと続き「華」が演奏される。花びら型の紙吹雪が舞い散り、LEDには和を感じさせる美しい映像が映される。歌詞がないこのしっとりとしたナンバーを聖夜に聴くと、イマジネーションがどんどん刺激されていくのを感じる。
ここで分割されていたLEDが一つの大画面となり、ステージも一気に後半に向けて加速を増していく。その後半戦は「CHANGE THE FUTURE」からスタート。スクリーンに映された稲葉や松本の姿の前に炎の画が重なっていたが、間奏ではステージから火の玉が打ち上げられて、本物の炎がメンバーの姿に重なる。
“BIG MACHINEに乗ってドライブしている気分でやって来たけど、ここからはマシーンをヒートアップしていこうかな。マシーンだから燃料補給しないといけないけど、BIG MACHINEの燃料はお客さんの熱い声援です。ここで補給させて下さい”と稲葉が言うと、割れんばかりの歓声が上がる。
松本がブルーの7弦ギターで激しいパフォーマンスを見せた「BIG MACHINE」。低音が効いたこのナンバーでは、稲葉の激情のヴォーカルが響く。続く「MOVE」のラストでは左右にあった石像が爆発して破壊されていた。単なるパフォーマンスなのか、それとも深い意味があるのか……、演出ではあるがB'zだからこそ何かあるのでは?なんて考えてしまう。“もっともっと!”と煽り、コール&レスポンスを起こして場内に一体感とエネルギーを生み出してスタートしたのが、B'zのライヴ・スタンダード・ナンバーとなっている「juice」。オーディエンスから湧き上がる手拍子の残響でさえも大きく聴こえるほどの盛り上がりを見せていた。間奏でメンバー紹介が行われたが、今回はシンプルに名前を呼んで紹介するだけだった。稲葉が“もっとめちゃくちゃになりたいんだろう。もっと叫びたいんだろう”とフシを付けて歌うと、大きな声援が返される。稲葉がジャンプするとオーディエンスもジャンプを返す。ステージと客席が一体となって楽しみ、そして熱狂している。
バイクのエンジンをふかす音がすると、ステージ右横には3台のバイクが待機している。ステージ左右にはいつの間にか、ジャンプ台が登場していた。ここで聴こえてきたのは「アラクレ」。イントロが鳴ると同時に、その3台のバイクが次々とステージ右から左へとメンバーの頭上を飛び、バイクの上で逆立ちしたり、身体を捻ったりといったアクロバティックなジャンプを繰り返す。ダイナミックなその演出に、バイクが飛ぶごとにオーディエンスは大興奮。
ラストは「IT'S SHOWTIME!!」。LEDにPVが映されると、イントロではブルーの照明がサーチライトのようにグルグルと場内を駆け巡る。曲中ではブルー、レッド、グリーン、パープルと色とりどりの照明がサーチライトのように巡らされ、美しい光の情景を生み出していた。稲葉が“Thank you!!”と叫んで紙コップを蹴り、ステージ左右を走り周って退場していき本編は終了となった。
メンバーがステージから見えなくなるとすぐに、恒例のウェーブが起こる。ドームの広いスタンド席で大きな波が綺麗に起こる。もちろんアリーナでも負けじとウェーブが起こる。手拍子も湧き起こり、2人の登場を今か今かといった期待感で促す。メンバーがいないのに感動を味わえるのが、5万人が一つになっているこのアンコールを待ち望んでいる瞬間ではないだろうか。
場内が一度暗転し、再び明るくなったステージには椅子に座っている稲葉と松本の姿。何も言わずに静かに松本が弾いたイントロは「いつかのメリークリスマス」。このナンバーがライヴで行われるのは9年振りなので、まさかといった嬉しい悲鳴に包まれる。ちなみに、この曲は20日の札幌ドームと、24・25日の東京ドームでのみ演奏された。純白の紙吹雪がサラサラと舞い散る中で、椅子に座って静かにプレイする松本と、座って情感たっぷりに歌う稲葉の光景、そして場内の水を打ったようなひんやりとした静けさの中には、クリスマスの雪景色にある歌詞の切ない1シーンが広がっていくようだった。
続く「Calling」はバラード部分に強さが漲った、作品よりアグレッシヴさを漂わせたナンバーとなっていた。ラストに稲葉の迫力のシャウトが導入されていた。シェーンがサンタの帽子をかぶってスマイルを見せて迎えた、ラストの「ギリギリchop」。稲葉が“東京ドーム!!”と客席を煽ると、たちまち大きな歓声にドームが揺れる。このハイパー・チューンでは燃え尽きるまでといった感じの姿を見せるエネルギッシュなメンバーと、沸点に到達したオーディエンスの熱気が充満していた。
15周年という事で、例年以上の活躍で楽しませてくれたB'z。“BIG MACHINE”の燃料となるこのオーディエンスのパワーをしっかりと受け止めて、2004年の活動に活かしてくれる事だろう。でも、あまりにもパワフルだったので、それを吸収した2004年のB'zは果たしてどんな風になるのだろう……? そんな想像をして新年を迎えられるのも、コンスタントな活動をしているB'zだからこそなのだろう。
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