聞き手の目をじっと見つめ、一語一語大切に自分の言葉で作品に対する思いを語る。デビューから全く変わらぬ、そのひたむきな姿が、彼女の何よりもの魅力だろう。3月3日にニュー・シングル「眠る君の横顔に微笑みを」のリリースが決定した三枝夕夏 IN dbのヴォーカル三枝夕夏。白いセーターにジーンズをはき、すっかりトレードマークとなったポニーテール姿で取材現場に登場した彼女は、部屋に入るなり「すごく好きな曲が出来ました!」とマスタリング完了したてのサンプル盤を手渡してくれた。これまでにも増して生き生きとしたその表情から、現在の充実ぶりが伺える彼女に、新作について話を聞いてみた。
●なんだか、いつもにも増して元気ですね。
三枝夕夏(以下三枝):そうですかね? 最近食欲もすごくて、ご飯なんてどんぶり2杯ペロリと食べちゃうんですよ。だからレコーディングも体力バッチリ。全く休みなく歌い通しって感じで。
●毎日充実していて楽しそうですね。それは制作が順調だからですかね?
三枝:12月25日にhills パン工場のTHURSDAY LIVEにメインで出演させて頂いたんですけど、あの後からまるでスイッチが入ったかのように、バリバリ意欲的に行動していますね。とにかくあのライヴは楽しかったんです。去年は初のライヴや初のテレビ出演などを経験し、無意識のうちにいつも緊張しっぱなしで毎日を送っていたような感じだったんです。それがあのライヴで硬直していたものが全て溶け出して、すごく柔軟になったっていう、なんかそんな感覚で……。よくわからないけど、去年一年で少しだけ強くなった気がします。
●三枝さんはいつもポジティヴだし、自分の意志もしっかり持っていらっしゃるから、弱いってイメージはあまりなかったですけど?
三枝:最終的にはポジティヴなんですけど、正直去年は今まで経験した事のないプレッシャーをたくさん感じていましたね。大きなタイアップを頂いたり、テレビに出たり、多くの人達が制作に加わってくれたり……。今頑張らなきゃ、私が頑張らなきゃ!みたいな気持ちが、自分を支えてもいたし、追い込んでもいました。
●今はそのプレッシャーが溶けたっていう感覚ですか?
三枝:はい。だから今回の新曲はすごく穏やかな気持ちで作っていく事が出来ました。
●それは音を聴けば瞭然ですよね。すごく心地良い曲が出来上がりましたね。
三枝:ありがとうございます。私はとにかくこの「眠る君の横顔に微笑みを」が大好きなんです。この曲を聴いて、あったかい気持ちになって頂けたら、すごく嬉しいです。
●どんな感じで制作は進められていったんですか?
三枝:三枝:去年の11月19日にフル・アルバムを出した後、何曲かシングル候補の曲を、ストックしてあったデモの中から選んで、マイペースに歌詞が出来たら歌入れしてって感じで進めていたんです。その中でこの曲が評判が良くて、「名探偵コナン」の制作サイドの方も気に入って下さりタイアップが決まった事で、シングル・リリースの制作が本格的にスタートしました。
●ドッシリとしたオケにのっかった優しいメロディ。そんな本格的なバラードに、三枝さんのヴォーカルがとてもいい感じで溶け込んでいますね。
三枝:今回は、ピッチ(音程)とかリズム感とかよりも、とにかく心地良い声質を見つけるのに時間をさきました。この曲を歌った時、声が一番魅力的に聴こえる歌い方とか、響かせ方とか、ディレクターさんやエンジニアさんと一緒に見つけていきましたね。だから声が決まってからは、割合いと早かったですね。
●歌詞が耳に入りやすく、バランス的にもヴォーカルが大きめに出ていて、歌ストレート勝負!っていうトラックダウンもすごく気持ちいいですね。
三枝:トラックダウンは私も気に入っています。今回は最後の段階で立ち会わせて頂いたんですが、一曲の中で色んなドラマがあるんです。特にドラムのタムやシンバルなどがドラマティックに、終盤に向けて盛り上げていってくれています。その中で私のヴォーカルが少しずつヴォリュームアップされていきました。
●歌詞はハッピーな感じに仕上がっていますね。
三枝:大野愛果さんのデモを聴いた段階でラブ・ソングにしようとは決めていたんですが、たまたま身近な友人が結婚する事になって、その知らせを聞いた時に自然とあったかい気持ちになったんですね。それをきっかけに、あ〜なんか寒い日が続いてるしこれから春に向けて、聴いただけで幸せであったかい気持ちになれる曲を書きたいなって思って作った歌詞です。最初にサビ終わりの「今と今がずっとつながって 未来になればいいな」っていうフレーズが思い浮かんで、そこから広げていきました。
●タイトルは?
三枝:「あったかい」っていうキーワードから最初に浮かんだ言葉が「微笑み」だったんです。そこからメロディに合わせてタイトルを考えました。
●御友人の結婚がたまたまきっかけになったという事ですが、結婚ソングにも合う一曲じゃないでしょうか?
三枝:そうですね。でも結婚ソングとか、ラブ・ソングっていうだけじゃなく、とにかく今回は優しい気持ちになって欲しい。それだけです。
●カップリングの「かけがえない想い君に届け」は力強いロックですね。
三枝:この曲は、実はフル・アルバム用にレコーディングした曲だったんですが、最終的に全体のバランスを見てアルバムには収録しなかったお取り置きの一曲です。主人公が、自分自身に向けた応援ソングになっています。またマラソンを意識した歌詞になっているんですが、一歩一歩地を踏みしめて走っていく感じを出したくて、あえて言葉を一語後ろにずらすなど、譜割(詞ハメ)を何回か変えて歌ってみました。
●三好誠さんの曲も三枝さんと相性が良いですよね。
三枝:はい。ちょっぴり懐かしい三好さん独特のメロディがたまらなく好きですね。いい曲を頂いて感謝しています。
●3曲目には「Graduation」のアコースティック・ヴァージョンが収録されていますが、こちらも季節的にもぴったりだし、いい感じですね。
三枝:はい。この曲はファンの方から「好きです」という感想をよく頂く作品で、中でも「It's for you」の時のようなアコースティック・ヴァージョンを作って欲しいというメールをたくさん頂いていたんです。ファンの方の声によって、今回制作する事になりました。
●そして4曲目には「君と約束した優しいあの場所まで」のテレビ・ヴァージョンという、コナンのオープニングとエンディングが両方収録されているという、ファンには嬉しい内容ですね。
三枝:テレビ・ヴァージョンはCDになったフルサイズとは、ヴォーカルが別パターンで若干譜割の違うところもあるんですよ。良かったら聴いてみて頂きたいですね。
●いい作品が出来上がりましたが、今後の予定は何か決まっていますか?
三枝:もう次の作品のレコーディングに入っています。アルバム出したら、またすぐ次のアルバム出したくなっちゃって。とにかくどんどん作品を作りためたいです。
●最近は他のアーティストの方に歌詞を提供されたりもしていますね。
三枝:いい機会を頂いて、大変感謝しています。最初にお話を頂いた時はびっくりして、ど〜しようって感じだったんですが、曲を聴いて感じたままを書いてくれればいいからと言われ、その通り感じたままを言葉にしました。そうしたら、それを気に入って下さったので、正直ホッとしました。JEWELRYさんの方は、お会いする前に韓国で出されたCDを聴いたり、映像を拝見させて頂いて、雰囲気とキー(声)の高さからすごくキラキラしたイメージを持ったんですね。本当にアーティスト名がぴったり合ってるなって。だから曲のイメージと、タイアップの「モンキーターン」というアニメの内容の他に、彼女達のキラキラしたイメージを歌詞でちゃんと表したいなって思いましたね。またWAGさんの方はお話を頂いた時、実はすごい嬉しかったんです。私の作品では書けないような男性らしさやクールな世界観を表現できる歌詞が書けるなって。それで徳永暁人さんの曲を聴かせて頂いた時、すぐにイメージが湧きました。歌が上がってきたら、よりカッコいい譜割になっていたので嬉しかったです。そして、最近は作曲の方も勉強していて、5、6曲デモを作りました。いつか作品に出来るまでになるよう絶対頑張ります。
●今年も昨年以上に飛ばしていきそうな勢いですね。
三枝:あまり目先の事に捕われないで、目標に向かって一歩一歩やって行こうって思っています。今の目標はソロ・ライヴをやる事。それにはまだまだ色々なものが足りないから、もっと努力しないと。
●まさに「今と今がつながって 未来になればいいな」ですね。
三枝:うまい! ホントそうですよね、頑張ります。
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