2000年のデビュー以来全国各地、数々のライヴをこなしていく中で、愛内里菜がオーディエンスからたくさんの“空気”を受け取り、そして感じた感謝の気持ちや葛藤など、溢れ出てくる想いをそのまま歌で表現し、完成させたのが3rdアルバム『A.I.R』。前作2ndアルバム『POWER OF WORDS』に続いて、2作連続オリコン・チャート初登場1位を獲得した。そして、アルバムに込めた空気をみんなに伝えるために行われたのが、2003年11月に全国4箇所で行われたライヴ・ツアー「RINA AIUCHI LIVE TOUR 2003 “A.I.R”」。ライヴで定評のあるパワフルな歌唱力にエキサイティングなパフォーマンス、そして何といっても、常に全力を出し尽くそうとする彼女の姿に、オーディエンスのテンションも最高潮! 更に楽曲のテーマに合った衣装、舞台セット、演出、またその全体の構成さえも愛内里菜がセルフ・プロデュースしたこのステージは、まさに“里菜ワールド”。オーディエンスが一体となって生み出した最高の“空気”が流れていた感動と興奮のライヴ・ツアーが、遂に待望のDVD化! 簡単ながら、この作品についてご紹介していこう。
まず、今回のライヴ映像で感じられるのが、“見せる”ことに対するこだわり。演出では、激しくダンサーと合わせて踊るシーンもあれば、歌詞をイメージしたダンサーの動きに加わって、世界観をより一層広げるダンス・シーンがあったりと、ダンスが大きなポイントとなっている。衣装は、ドレスあり、ロック系の皮パンツあり、キュートなミニ・スカートありといった七変化が行われた。もちろんその1着ごとにオリジナリティを追求した愛内スタイルが色濃く反映されている。荘厳なバラードではドレスを身に纏い、アクティヴ・ナンバーではビタミン・カラーが一杯のカラフルなミニ・スカートと、楽曲からインスパイアされたファッションへのこだわりを実感するだろう。他にもセットや楽曲のバックで流れるオリジナル映像など、全てにおいて愛内がプロデュースしているので、細部に渡ってじっくりと堪能して欲しい。
楽曲は、ライヴという場での緊張感やグルーヴ、そして愛内本人とオーディエンスからのパワーが息吹として吹き込まれたため、瑞々しいばかりに生命力を帯びて画面から伝わってくる。言葉はなくても12の音階だけで気持ちは伝わるのだと、ステージの体験を元に描いた「our sound」は、生で演奏されたことで躍動感がプラスされ、更にフレーズが成長して伝わってくるのが分かる。続く「FULL JUMP」は、輝きを撒き散らすかのように活き活きとした、まさにパワーを全開にした彼女の姿を捉えている。初めてステージでギターを持つ姿を披露した「CODE CRUSH」では、里菜仕様にスタイリングされたギターで激しいパフォーマンスを見せる。切なさを浮かび上がらせた「Deep Freeze」の歌声があるかと思えば、「風のない海で抱きしめて」から「Fortune」までは、オーディエンスを温かく優しい眼差しで見渡しながら、言葉の一つ一つを大切に語りかけるように響かせている。特に「空気」はアルバムのメイン・ナンバーであり、彼女の伝えたかった思いが詰まっている作品。お互いがエネルギーを交換し合いながら、見守り合っている、そんな穏やかな空気の流れが胸に染み込んでくる。
「Over Shine」からラスト・ナンバー「Ohh! Paradise Taste!!」まではアグレッシヴ・モードで、一気にライヴ後半を盛り上げていく。華やかな衣装にチェンジして、身体全体を動かしてダンサブルになったこの時間は、それまで使っていたステージが狭く感じるほどのアクティヴさ。ラスト・ナンバー「Ohh! Paradise Taste!!」では、客席と一体になったハンド・クラップ、そして、愛内と同じように飛び跳ねているオーディエンスの楽しそうな姿が映し出されている。
アンコールでは、“歌詞を間違えてごめんなさい”と謝る姿が。しかし、その後に続く言葉には、オーディエンスにどれだけ会いたいと思っていたのかが分かる、彼女らしい温かな想いが語られている。
ステージというのはエンターテイメントなのだから、ある種のフィクションで包まれていると思うかもしれないけれど、愛内はそれと同時に素の部分も強く見せているアーティストだと思う。歌う表情やMCでオーディエンスに語りかける言葉の一つ一つ、それが彼女の真の姿なのだ。緻密に計算されたアーティスティックなパフォーマンスと共に、リアルな自分もちゃんと伝えてくれる、それが愛内のステージ。
全ての演奏が終わると、全会場で行われたのが、客席をバックにオーディエンスも含めた全員を入れての記念撮影。また一つメモリアルが増えた瞬間である。
愛内里菜のライヴをまだ見た事のない方は、その天真爛漫な雰囲気や可愛らしい外見からは予想も付かないほど、パワフルで熱いステージだと驚くかもしれない。実際に参加した方はもちろん、ライヴのチケットが取れない、時間的に行く機会がない、愛内里菜という名前や歌は知っているけれど、まだライヴを見るかどうかまでは分からない……、そんな方々にもこの作品を見てもっと愛内里菜の存在を感じて欲しいと思う。とはいえ、その臨場感は例え5.1チャンネルであっても、やはり伝えきれないだろう。何といってもそこにある“空気”は、その場でしか経験できないもの。だから、この作品を見てワクワクと胸が躍ったり、実際はどんなものなのだろうと興味を覚えたりした方々は、これを機会にライヴ会場に足を運んで彼女が繰り出す“空気”を思い切り吸い込んで体感して貰えたらと思う。
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