2002年秋に行われた記念すべき初ライヴ・ツアー「GARNET CROW LIVE TOUR 2002 〜first live scope〜」から早1年以上が経過。多くの人々の心に残る印象的なステージを披露したGARNET CROWが、2004年を迎えてから全国ツアー「GARNET CROW live scope 2004〜君という光〜」を敢行した。music freak magazineでは、ツアー・ファイナルである2月13日の渋谷公会堂での模様をレポート。GARNET CROWが紡ぎ出す、生の音世界を届けようと思う。
2月13日。バレンタイン・デー前日という事もあってか、街中が華やかな雰囲気に包まれていたこの日、渋谷公会堂では「GARNET CROW live scope 2004〜君という光〜」のファイナル公演が行われた。大阪、福岡、広島、愛知でのライヴを経て迎えたツアー・ファイナル。開演前の会場は“一体どんなライヴになるのだろう”と思いを巡らせる2,000名以上の観客で既に埋め尽くされ、これから始まるライヴへの期待で満たされていた。ステージを見て、最初に目に飛び込んできたのは、左右に掛けられたエンブレム型の大きな赤いクロス。中央にはカラスのシルエットが白くプリントされ、宮廷を思わせるようなゴシック調の白い柱とマッチしていた。
開演時刻を5分程過ぎた頃、照明が落とされる。自然と沸き起こる歓声と拍手の中、薄暗いステージにゆっくりとメンバーが入場。ツアー・ファイナルは「Timeless sleep」で幕を開けた。勢いに任せてのスタートではなく、ミディアム・スローのナンバーを選ぶ辺りがGARNET CROWらしい。青い照明をバックに、こちらがドキドキする位の迫力でじっくり演奏し歌うメンバーからは、ピリッとした良い緊張感と意気込みが漂い、早くも引き込まれてしまった。“皆さんこんばんは! GARNET CROWです!”と言う中村の第一声に会場から大歓声が沸き上がる。会場全体を見渡した中村は、続けて「泣けない夜も 泣かない朝も」を力強く歌い上げた。GARNET CROWと言えば黒を基調とした衣装。今回のツアーでもそれは変わらず、赤いクロスとのコントラストが刺激的な感じがした。“今日は目一杯楽しんでいって下さい!”と言った後に歌われた「flying」は、AZUKIが奏でるドラマティックなイントロと、中村の声が突き抜けるサビが心地良かった。ハンド・マイクに持ち換えた中村からも徐々にリラックスした表情が伺え、「Endless Desire」でライヴがスピード・アップしていくのを実感した後、神秘的な歌詞とメロディが美しい「水のない晴れた海へ」が披露されると、ステージはイメージにぴったりの深海を思わせるブルーのライトに切り替わる。実に気持ち良さそうに演奏するAZUKIのテクニカルなタッチのキーボードが印象的だった。
ステージ後方には前回のツアー同様、大きなモニターがセットされている。そこにはライヴ中のメンバーの表情が色々な角度で映し出され、2階席からでも十分良く見ることが出来た。例えば、AZUKIの演奏中の指先や、岡本のアグレッシヴなギター・ソロ、古井の楽しそうな表情。時には、ステージ側から見える客席を映し、メンバーが見ている景色までも一緒に見られるのも楽しい。演奏中にはそのモニターに歌詞が映し出され、GARNET CROWの大きな魅力の1つである“歌詞”の奥深さを、サウンドと共にじっくり味わえるのも嬉しかった。「君という光」では、そのモニターに水の泡がゆらめく映像が映し出され、穏やかなイントロが始まった。岡本はエレキ・ギターからアコースティック・ギターに持ち換え、優しい音色を紡ぐ。そんなメロディに乗って温かく、それでいて芯がしっかりあるヴォーカルを聴かせてくれる中村。観客はそんなメンバーの姿に熱い視線を注ぎ、続けて披露された「今日の君と明日を待つ」では、クライマックスの部分で響き渡る中村の声に聴き入っていた。
最初に少し述べたが、今回のツアーのステージには宮廷をイメージするような白い柱や、頭上にはシャンデリアの照明がセットされている。そんなステージの雰囲気と一番マッチしていたように感じたのが「Marionette Fantasia」だった。中村の艶のある声が繊細さを放ち迫ってくると、みるみるうちに会場はファンタジックな世界になった。会場の空気が暖まっていく中、オーガニック感溢れるサウンドが爽やかな「永遠を駆け抜ける一瞬の僕ら」のイントロに合わせて、今回のツアーをバックで盛り上げてきたサポート・メンバーが紹介される。前回のツアーとほぼ同じメンバーで構成されているだけに、息もぴったり。最終公演ということもあってか、それぞれが満足そうな表情だったのが印象的だった。この曲を演奏後、引き続き中村からGARNET CROWのメンバー紹介。観客からの声援に笑顔で手を振る古井、照れ笑いを浮かべて頭を下げる岡本、中村から“この人の笑顔にいつも癒されています”と紹介されたAZUKIはいつも変わらぬ笑顔で一礼。メンバーのちょっとした自然な表情が垣間見られるのもライヴの醍醐味だ。
ライヴも中盤に差し掛かった頃、今回のツアーの見所の1つである、岡本ソロ・ヴォーカルによる「千以上の言葉を並べても...」が披露された。岡本の傍では中村が赤いタンバリンを片手に、コーラスを務める。彼の柔らかい歌声には、ソロ作品を聴いた時から魅力を感じていたのだが、GARNET CROWの曲に彼の声がここまで溶け込み、聴き手をすんなりと歌の世界に引き寄せる事になるとは思いもしなかった。歌詞の主人公が“僕=男性”という事もあるかもしれないが、無理な力が入っていない素直な歌声は、この曲のまた違った魅力を感じさせてくれたと同時に、GARNET CROWの楽曲の素晴しさを再確認する事が出来た。
岡本の歌声に聴き入っていた観客に向かって、中村の“一番大切にしている曲です”という言葉の後に演奏されたのが「夢みたあとで」。切なさと優しさを併せ持つ美しいメロディが特徴のこの曲は、中村の圧倒的なヴォーカルで聴く者の涙腺を緩ませる程、心に染み込んでくる素晴らしいものだった。この日何度も感じたのは、中村のヴォーカリストとしての独特な存在感は、ただ“きれい”とか“上手い”というものだけではないという事。歌っている時のクールな表情とたたずまいからは見えない、内に秘めた様々な感情が、楽曲を通して時には静かに、時に激しく放たれる。1音1音を紡ぐような演奏と、作曲者である中村の曲に対する思い入れが詰まった歌声に、会場とステージが1つになった瞬間を目のあたりにしたような気がした。その後に披露された「永遠に葬れ」、「君の家に着くまでずっと走っていく」は初期の作品。みんなが心地良くなってきた所で、ステージ後方の左右に取り付けられた赤いクロスが落ち、一気にライト・アップした。ここからバンド・サウンド全開の「夏の幻」や「Mysterious Eyes」、最新シングル「僕らだけの未来」と、勢いのあるナンバーが続く。もちろん会場も観客のハンド・クラップで一層盛り上がり、ステージとの一体感は増すばかり。演奏中も全身で激しくリズムをとり、時には観客にハンド・クラップを求めていた古井の表情からも、このライヴを存分に楽しんでいる様子が伺えた。そして本編ラストに演奏されたのが、サビに向かっての盛り上がりが気持ち良い「スパイラル」。中村がステージを端から端へと左右に動き、観客にマイクを向け、会場もそれに精一杯応える。ステージと客席の距離がより縮まっていっていくのが分かった。
止まないアンコールの声援に、メンバーが再び登場。GARNET CROWのメンバーは、中村以外黒いTシャツに着替え、サポート・メンバーもブルーやイエローのTシャツ姿で現われた。アンコール1曲目に歌われたのは、まだリリースさえ決まっていないという新曲「雨上がりのBlue」。キーワードはまさに“夏”! アップ・テンポなサウンドはまるで青空のように爽やかで、外が冬である事さえ忘れてしまいそうになる。ファンにとっても、思いがけず嬉しい1曲になったはずだ。しっとりと歌い上げる「Holy ground」で会場を少しクール・ダウンさせた後、中村から“これで本当に最後です!”との言葉。アンコールのラストを飾ったのは「二人のロケット」だった。サビで両手を高く上げハンド・クラップを響かせ、最後までめいっぱい楽しんでいる観客を照明が照らし出す。それに負けないくらい本当に清々しい表情をしていたメンバーも印象的だった。きっとこれまでのツアーを感慨深く思い返し、各会場との一体感を噛みしめていたのだろう。最後に中村が言った“ありがとう! 楽しかったです!”という言葉の中に、この日のライヴが、そしてツアーが実りあるものであった事を示していたような気がした。メンバーがステージを去った後も鳴り止まない拍手が、素晴らしいクリエイターである4人が生み出す感動の大きさを物語っていた。
今回のライヴ・ツアーは全国5ヶ所という事で、見たくても見る事の出来なかったファンも大勢いただろう。是非、次はもっと多くの人がGARNET CROWの生の音楽に触れられる事を期待したい。そして、今回のツアーを経験した彼らの今後の活動がますます楽しみになった。
|