東京都交響楽団 Collaboration 2004 松本孝弘「華」
7月17日(土)、18(日)、20(火)の3日間、松本孝弘が東京都交響楽団(都響)とサントリーホールでコラボレーション・コンサートを行った。キャリアも実力も備えた海外ミュージシャンと組んだ、ソロ・プロジェクト「TMG」の挑戦に続く、2004年の新しい試みとなるその模様をレポート!
オープニングは都響のみで、「パリのアメリカ人」。ジャジーで耳馴染みのあるこのナンバーでの幕開けは、これから始まるオーケストラ・サウンドへの序章として、ロック系を聴いている松本ファンにも受け入れやすい作品が選ばれたように感じた。音楽の垣根を越えて楽しんで欲しいといった思いが伝わってくる。
一旦ステージから退場し、新たに都響の皆さんが再び登場し音合わせを始める。指揮者の飯森氏の登場後、松本がステージに現れると、ひときわ大きな拍手が湧き起こる。黒のロング・ジャケットに黒のパンツ、インナーには白のシャツといつもとは違った正装。その表情からもさすがの松本も緊張している様子が伺える。
ストリングスの美しい旋律のイントロが流れ「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」で、ロックとクラシックが融合するステージがスタート。松本が爪弾く緻密でテクニカルなギター・プレイに、何十人もの弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ハープ)が紡ぎ出す柔らかな音色、金管楽器(フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、トランペット、トロンボーン...)のクリアで突き抜けるような音色、打楽器(ティンパ二、木琴、鉄琴...)の個性的な音色、とそれぞれの楽器が幾重もの重なりを見せてコントラストを生み出す。今回は通常のクラシックではあまり無いであろうドラムとエレキ・ピアノも取り入れられており、まったくクラシックに寄ってしまうのではなく、松本のオリジナリティを存分に発揮した構成で、既成概念にとらわれないコラボレーションを目指した事が感じられた。
一部のラスト・ナンバーとなった「恋歌」では和太鼓やティンパニなどの打楽器が効果的に使用され、オリジナルより骨太で一層オリエンタルな香りを漂わせた素晴らしいアレンジに仕上がっていた。
ここで休憩となるが、この時間ではステージ前にセットされている松本のアンプなどをじっくりと見る観客の方々も多く見られた。アンプやスピーカーに付いているトレードマークの“玲”の文字は、モノトーンのステージに鮮やかに映えるレッド。
2部では上着を黒のベストに衣装チェンジして登場。イントロにタタタターンという懐かしいウルトラマンのテーマが流れて始まった「Theme from ULTRAMAN」。2005年公開映画「ULTRAMAN」の書き下ろしのインスト・テーマ曲を松本は手掛けているが、このコラボレーションで初お披露目となった。オーケストラ・サウンドであってもロックっぽさが拭いきれないほど疾走感溢れる今作は、厚みのある音色によって瑞々しい躍動感が与えられ、映画で流れるロック・ヴァージョンへの期待も高まる。
前半で椅子に座ってアコースティック・ギターをプレイした「BLACK JACK」。こちらもテレビ番組で流れただけの未発表曲。エレクトリック・ギターとはまた違った繊細で叙情的なメロディを紡ぎ出す。プレイの無い所ではオーケストラの音色を背に受け、身体を揺らして聴き入っていた。途中からエレキ・ギターに持ち換えるが、その音色が誘ったかのように、オーケストラもグイグイとダイナミックなサウンドに変化し、エンディングでは強さを湛えたナンバーになっていた。
ラストは「LOVE PHANTOM」。今回のコラボレーションでは、松本は通常のリフやディストーションを盛り込みながらも、メロディを追うプレイが多かったが、このナンバーでは歌メロをギターで弾き続けるという、彼の技巧が冴え渡ったプレイを見る事が出来た。その姿と音色にはただただ圧巻といった感じで、場内はその世界に“魅入らされた!”といった空気に包まれていた。オリジナルよりもさらにドラマティックさと迫力がプラスされ、後半からラストへの高揚していく場面では、各奏者がぶつかり合うかのようにエネルギッシュにプレイする様が見られ、息を飲むほどの緊張感が漂っていた。
曲が終わった瞬間に割れんばかりの拍手が起こり、スタンディング・オベーションへと自然に変わっていた。その喝采に導かれて3度ステージに現れた松本と飯森氏。松本が両手を挙げてガッツポーズを取ると、観客も同じくガッツポーズで返す。そして、オーケストラの方々もステージを去る時、場内に同じくガッツポーズをして見せたりと、ステージ上のプレイヤーと観客の双方がどれだけ楽しんだのかがこの光景からも伺える。
B'zや松本の作品を聴いていると、ついリフやギター・プレイといった部分に耳が行ってしまうけれど、今回、改めて彼が創り出す楽曲はメロディが美しくて、心地良いものばかりなのだと実感させられた。どんなにハードなサウンドに聴こえても、その根底を支えているのは美しく流れるようなメロディなのである。
今回のコラボレーションは彼にとってはチャレンジと共に、さらに自身を高める存在になっていたようだ。入念なリハーサルを行った事はもちろん、自宅でも毎朝練習していたという噂を耳にした。その真摯な姿勢には頭が下がってしまう。どんな地位にいても甘んじず常に切磋琢磨しようとする向上心、何よりもギターを愛しその可能性を信じるスピリッツ、そんな松本の内面が今回のステージには充満していたように思える。ジャンルなどに縛られずに、素直に音を楽しむ事の素晴らしさに満ちた時間となった。
稲葉浩志「THE ROCK ODYSSEY 2004」出演!!
7月24日、横浜国際総合競技場にて行われた、サマー・ロック・フェスティバル「THE ROCK ODYSSEY 2004」に稲葉浩志が出演! ソロとしての参加は初めてとなるこのライヴ・イベントで一体どんなステージを魅せてくれるのか? 現在、ソロ・ツアー中という事もあるので、簡単なレポートを掲載!
当日はロック・イベントにふさわしい晴天で、もちろん気温は30度以上の炎天下。そんな青空の下、15時20分から約1時間のステージを魅せてくれました。現在行われている「稲葉浩志 LIVE 2004 〜en〜」のツアー・グッズである黒のタンクトップにパープルのパンツで登場。オープニングは9月15日にリリースされるソロ・アルバム『Peace Of Mind』収録の「正面衝突」。いきなり意表を突く未発表曲でのスタートは、その意気込み……と言うか彼の無邪気さも含め、このステージを楽しいものにしてくれるに違いないという高揚感が漲る。途中でdoaの徳永暁人、大田紳一郎の2人が登場し、これまたアルバム収録の未発表曲「おかえり」を披露。アコースティック・ギターを弾きながら歌う稲葉、それに重なるコーラスが何とも心地良い軽快なミディアム・ロック・チューンで、和やかなムードに包まれる。
ブルーズ・セッションから始まる後半、ハードなナンバーを展開していく稲葉はシャウトやフェイクを多様しながら、歌詞に込めた静かな情熱や渇望している自身の姿に魂を宿らせるかのような迫力が漲っていた。ブルースハープを吹きながらのシャウトといったパフォ−マンスなど鬼気迫るシーンもあったりしたが、今、このステージ上から何かを伝えようとする姿に感動すると同時に、むしろ清々しささえ感じる突き抜けるような歌声が届いてきた。
いちアーティストとしての稲葉浩志は、現在進行中のソロ・ツアーでも回を重ねる度に新しい彼が創り出されていくのかもしれない、そう期待した真夏の1日だった。
ニュー・シングル「ARIGATO」9月1日リリース!
すでにテレビ朝日系列のアテネオリンピック関連番組で大量オンエアされており、オンエア直後からリリースに対する問い合わせが殺到していた「ARIGATO」は、メッセージ性の高いロック・チューン。イントロ、インタールード、アウトロで印象的に現れるオリエンタルなギターのフレーズや、楽曲後半にテンポ・チェンジするドラマティックな展開がスパイスとなって、よりそのメッセージを際立たせています。さらに今回は3曲目に、昨年行われた全国ツアー「B'z LIVE-GYM 2003“BIG MACHINE”」終演後に会場で流れ、ファンの間で大きな話題を呼んだナンバーも収録されています。要チェック!
徳永暁人(B/M-1、M-2)、元MR.BIGのビリー・シーン(B/M-3)、昨年の“BIG MACHINE”ツアーのサポート・メンバーとしても知られるシェ−ン・ガラース(Dr/M-1、M-3)といった豪華な参加メンバーも見逃せない所です!!
稲葉の作品には哀しみや葛藤、渇望して何かを追い求めているシチュエーションが多いけれど、だからこそ明日への希望や願いがより強く浮き彫りにされて、痛いほど切なく胸に響いてくるのだと感じる。どんな状況にいても、一縷の光が射してくる事を忘れない、求める視線だけは失わない――これこそが稲葉作品の最大の魅力なのだ。
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