稲葉浩志

New Album
『Peace Of Mind』

9.22 On Sale!


 稲葉浩志の3rdソロ・アルバム『Peace Of Mind』が完成した。昨年行われたB'zのツアー中に書き溜めていた詞を楽曲として完成したいといった思いからソロの制作が行われた事からも、これまで以上に言葉を重視した作品になっているようだ。
 「“より言葉を伝えるために、そのサウンドを求める”という気持ちで作り始めた」という今作だが、とは言っても、出来る限り詰め込んだと感じるほど、相変わらずギュッと濃縮されたサウンドに仕上がっている。それは行動にも表れており、東京、大阪、ニューヨーク(N.Y)、ロサンゼルス(L.A)と場所を移してレコーディングが行われている。海外からはスティーヴィー・サラス(G)、グレッグ・アップチャーチ(Dr/パドル・オブ・マッド)、ケニー・アロノフ(Dr/スマッシング・パンプキンズ等との共演)、Tボーン・ウォーク(B/ホール&オーツ、エルヴィス・コステロ等との共演)等といった素晴らしいミュージシャンが参加し、さらに日本では絶妙なコーラス・ワークを披露しているdoaの徳永暁人(B)・大田紳一郎、ツアー・メンバーでもある小島良喜(P)、アレンジャーとしても参加している大賀好修(G)といった面々も合わさり、それぞれが個性豊かなプレイと音色でトラックを作り上げ、言葉を彩る世界観を一層深めている。もちろん稲葉自身もギターやブルースハープをプレイしており、それが加味されて彼らしい独特の空気をより濃くしていっている。

 アルバム・タイトル『Peace Of Mind』は、直訳すると心の平穏といった感じになるが、これまで以上に言葉にこだわった上でこのタイトルが付けられたとあっては、アルバムを聴く前からどのような内容になっているのか、気になるところ。
 「タイトルは最後に付けたんです。自分が求めているっていう部分は当然あると思うんですけど、今回の一連の歌詞を見てみるとテーマを決めて書いてなかったわりには、自分なりに考えるとやっぱり“やすらぎ”とか“幸せ”とか、そういうものを求めている中で、みんなもがいているんじゃないかなって感じたんです」  稲葉がこうコメントしているように、フレーズだけを抜き出すと例えば否定的であったりネガティヴに思えるニュアンスも、実は非常に前向きに転換していくし、辛い事があるからこそ逆に何かを求め続けて生きていけるのかもしれない……といった“もがき”が描かれている。人の心の強さや大切な人の存在の大きさ、そして相手を想う優しい気持ちが痛いほど伝わってくる、いつもよりもストレートな表現をみせる歌詞になっていると感じた。

 今回は1曲ごとに印象的なフレーズを抜き出してみた。下記のフレーズが一体どのように展開して、どのような世界を形成していくのか? まずは自身の中でストーリーを広げてから、実際にアルバムを聴いて確認してみるのも良いだろう。多面的に楽曲を楽しむ事で、さらにアルバムの深みを感じてもらえるのではないかと思う。

誇りをもち 動く人たちよ 口あけるのは 命がけのドア 
その愛情が ちゃんと伝わりますように(おかえり)

勝ち組なの? 負け組なの? 
っていうか人生それだけしかないの? 
そのむなしさを 時間でまぎらわすのはそろそろ無理(THE RACE)

正面衝突 間に合わない思考 Show me the way 
逃げ道の無い歓びに浸れ(正面衝突)

幸い求め 災いから逃れられないのは この心が 
あの水平線のように 完璧な美しさじゃないから(水平線)

月曜日の街で聞かれた 今あなたは幸せですか 
歩きながら 笑って答えた いいえ 別に(すべての幸せをオアズケに)

不細工に揺れる 心が嫌になり 自由を知りたくて 
手あたりしだいに やせっぽっちの体傷つけて(Tamayura)

キミがいるだけで ボクの世界は変わるよ 
何でもかんでも シアワセのリズムに変わるよ(ハズムセカイ)

空へと向かってのびる 長い坂道のぼれば 
その先に幸せがあるはずと いつか誰かに教わった(幸福への長い坂道)

どんな罰でも 受けましょう とまらない横恋慕 
見事 飲み下して見せよ きっかりハリ千本(横恋慕)

恋に落ちるということは 不安まみれで過ごすこと(SAIHATE HOTEL)

だれかぼくの名前を呼んで だれでもかまわないよ 早く(透明人間)

あの命この命 どちらがどれだけ重いんでしょう 
何もかも 消えてゆく せめてあのぬくもりよ永遠に(あの命この命)

 こだわり抜いて制作された『Peace Of Mind』。東京、大阪、N.Y、L.Aと全てのレコーディングに同行したスタッフから話を聞いてみた。

●今回東京、大阪、L.A、N.Yとレコーディング・スタジオを移った理由は?
スタッフ(以下S):曲それぞれの完成に、「欲しい音」というのがあってそれをプレイしてくれるミュージシャンのいるところが N.Y でありL.Aであったという事ですね。

●N.Y、 L.Aのレコーディングは どんな感じでしたか?
S:N.Yではドラムスにスタジオ・ミュージシャンのケニー・アロノフ、ベースにケニー推薦のベーシスト、T-ボーン・ウォークを迎え、2日間で6曲のドラム&ベース・ダビングをしました。この時、ケニーは信頼出来るレコーディング・エンジニアも紹介してくれたんですけど、その人物はB'zのアルバム『RISKY』の時に一緒に仕事した ジェイソン・コーサロだったので、みんなびっくりしました。L.Aに行ったのは、稲葉さんが以前より関心を持っていたギタリスト、スティーヴィー・サラスの音が欲しかったから。ベースのジャラ・ハリス、ドラムスのジョー・トラヴァースを加え、ジャムりながらレコーディングをしました。このジャム・セッションから生まれたのが「正面衝突」と「ハズムセカイ」。(スティーヴィーとジャラは、この2曲のプロモーション・ビデオにも出演)みんなこのセッションがとても気持ち良かったからか、スティーヴィーは予定の曲以外もプレイしましたね。「透明人間」のソロでは、稲葉さんの「アコースティック・ギターでやって」というリクエストに、スティーヴィーが「俺、アコギはあんまり得意じゃないんだ」って言いながらプレイしたんですけど、全然何も問題なかった。試しにエレキ・ギターでも弾いてもらって、アコギとエレキの音を一緒に出したら、これがOKテイクになった。それと印象的だったのは、これも稲葉さんが以前から関心を抱いていたドラムス、パドル・オブ・マッドのグレッグ・アップチャーチとのコンタクト。数日しか彼のスケジュールが空いてないと分かった稲葉さんは曲のマスターディスクを持って、ひとりL.Aに渡り、グレッグのドラムをレコーディングしてきました。そのドラムの生音をブースの中で浴びていた直後、堰き切った様に「言葉が生まれた」らしく稲葉さんは詞をノートに綴っていました。

●レコーディング現場は、どんな感じですか?
S:「音楽大好き人間」が集まって、時間を忘れて「音楽を作る」これが、N.YやL.Aでも行なわれてきた感じです。こだわる時は徹底的にこだわり、はじける時も徹底的! その中心には、いつも稲葉さんがいますね。


稲葉浩志

NEW ALBUM
『Peach Of Mind』

9.22 Release


VERMILLION RECORDS
初回盤 BMCV-8012 ¥3,059(tax in)
通常盤 BMCV-8013 ¥3,059(tax in)