松本孝弘

New Album
『House Of Strings』

11.24 On Sale!


弦楽器奏者専門レーベル“House Of Strings”の記念すべき第1弾リリースとなる松本孝弘のアルバム、その名も『House Of Strings』。今年7月にクラシックの殿堂・サントリーホールで行われ、大きな反響を呼んだ松本孝弘と東京都交響楽団によるコラボレーション・ライヴ「Collaboration 2004 松本孝弘 「華」 with 東京都交響楽団」。自身にとっても新たな試みとなった、ギターとオーケストラの融合による繊細かつ雄大なサウンドを、今回新たにスタジオ・レコーディングを行ない待望の作品化が実現。
「LOVE PHANTOM」「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」といったB'zの大ヒット・ナンバーや松本孝弘のソロ作品を織り交ぜたライヴでの演奏曲を始めとする名曲たちを、新たに松本が所有する数々のギターを駆使してレコーディングしている。

今回、ギタリストを中心とした弦楽器奏者のためのレーベル“House of Strings”を立ち上げることとなりました。
このレーベルはHeartful かつHi-Qualityな弦楽を提供していくレーベルです。
僕自身もプロのギタリストとして活動を始めて20余年が経ちましたが、未だ自身のプレイに満足することなく、探求を続ける日々であり、プレイすることを心から楽しんでいます。
カラオケとシーケンサーが普及して以来、多くの人達が歌うということ、実際に音楽を創るということが非常に身近になりました。これは素晴らしいことですが、同時に楽器人口を減少させる要因となったのも事実です。
このレーベルから発信される音楽を通して、少しでも多くの方々がギターを弾く楽しみ、ギターから放たれる美しい音や光を感じて頂ければ嬉しく思います。
そしてまだ見ぬ多くの有能なギタリスト達に出会える、意義ある場にしていきたいと考えています。(松本孝弘)


 思うに、松本孝弘が交響楽団とコラボレートしたアルバムを作るという話を聞いた時、少なくともこのmusic freak magazine読者の大半やB'zファンはあまり違和感を感じなかったのではないだろうか。むしろ、ロック・ギタリストである松本が東京都交響楽団と共に演奏する事は自然な出来事であると思っているのは僕だけではないだろう。
 というのも、もともと以前から彼はB'zの楽曲において「LOVE PHANTOM」や「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」を筆頭にクラシカルなオーケストラの手法を様々な楽曲で用いてきた。ロックとクラシックの融合は、B'zの音楽や松本孝弘の音楽性にとっても極めて自然な世界であるという認識、またそういった実績を積み重ねてきた前提があるからこそ、僕らはその現実を当たり前のように受け止める。そして、完成された音を聴くまでもなく、松本の創造する世界観がどういうものであるかを想像する事が出来るのだろう。
 松本はこの夏、東京都交響楽団とのコラボレーション・ライヴ「都響Collaboration 2004 松本孝弘“華”」を経て、今回、オーケストラとの共演をスタジオ・レコーディングで実現、アルバム『House Of Strings』を完成させた。多分、松本の中にはコラボレートした当初からその構想があったのだろう。が、通常ならその時のライヴ音源リリースで落ち着かせる所を、わざわざもう一度スタジオ・レコーディングし直す所に、音楽家・松本孝弘の並々ならぬ熱意と愛情を感じないわけにはいかない。
 そんなこだわりを持って制作された、ギタリストとオーケストラとの共演アルバム、言うまでもなく素晴らしいインストゥルメンタル・アルバムに仕上がった。何よりもまず松本の唯一無二のギター・トーン、そしてロック・ギタリストならではのダイナミズムを損なう事なく、オーケストラの繊細で雄大なオーケストレーションとサウンドが絶妙のバランスで交じり合っているのが嬉しい。ほんのわずかばかりの音量差やレンジ・バランスでも崩れてしまう繊細な両者の音のタッチがくっきりと描き出され、スタジオ・ワークならではの緻密さで記録されている。特に、松本のギターの単音弾きの魅力には驚かされた。速く弾く事ではなく、適確なフィンガリング・ビブラートで艶やかなロング・トーンを奏で、時にむせび泣くような彼のマイナー・トーンのギター・フレーズ。それがオーケストラの弦と共鳴しあって導き出されるサウンドの色香とコク、これは熟練の技術と力量の賜だ。
 また、このアルバム全体を聴いてみると、松本の作品がいかに旋律を重視した作品であるかがよく分かる。というのも、基本的にクラシックにはロックのようにリズムを強調する打楽器はほとんどない。旋律主体の弦楽器がそのサウンドの要であるため、必然的に旋律なくしてはクラシックは成り立ちにくい。のだが、松本の作品はそういった意味でしっかりした美しいメロディ、構成力のある展開を併せ持ち、オーケストラとの相性も良い。今回のコラボレートで松本孝弘のメロディ・メーカーとしての確かな資質を再認識させられた。
 さて、ではアルバムの内容に移ろう。と言った所で残念ながら今僕の手元に届いているのは6曲入りサンプルのみ。そのため、アルバムの全貌は分からずじまいなのだが(多分、松本の事だろうから工程ギリギリまで作業を詰めているのだろうし、出来上がった作品は予想をはるかに上回ったりするので、あくまで予想でしか語れないのが歯がゆい)このアルバムには全14曲が収録されている。中でも、まずB'zファンにとって馴染み深いのはやはり「LOVE PHANTOM」「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」といったB'zナンバーだろう。この2曲は原曲も生オーケストラを多用し、その味わい深さを今作でも忠実に再現しているので、誰もが違和感なく安心して聴き込める。逆に松本のソロ・アルバムからのナンバー、例えば「SACRED FIELD〜RED SUN〜GO FURTHER」などのインストゥルメンタル・ナンバーはオーケストラ用に大胆にアレンジが施されていて、オーケストラならではのワイドレンジなダイナミズムが堪能出来、まるでスペクタクル映画を見ているような昂揚感を与えてくれる。
 さらに松本ならではの実験的精神や優れた感性を感じさせるのは「Theme from ULTRAMAN」や「BLACK JACK」といった新曲。ここではギターとオーケストラの共演のみならず、サウンドの棲み分けやその目的も作曲段階から意図的に練られていて、構築的なサウンドに仕上げているのが新鮮だ。まさしく21世紀のロックとクラシックの融合。1970年代前半にロック・ミュージシャンが取り上げ、一世を風靡したプログレシヴ・ロックの進化系がそこには表現されている。
 また、この時期ならではの作品として、B'zの「いつかのメリークリスマス」や「HOLY NIGHT」「WHITE CHRISTMAS」といったクリスマス・ナンバーを収録しているのが楽しい。とりわけアコースティック・ギターの音色で主旋律を聴かせる「いつかのメリークリスマス」のメランコリックな風情は、この季節にはたまらない贈り物となるだろう。
 松本孝弘が今回、送り出すアルバム『House Of Strings』。このアルバムはロックやクラシックといった音楽のジャンルの垣根を取り払い、世代や年代、音楽の聴き方と言った境界線もなく、歌ものや楽器ものといった区分けも必要ないほどに開かれた発想と豊かな音楽性で綴られた一大音楽絵巻である。このようなアルバムを今年、TMGといったワールドワイド・ロックバンドの結成&活動の後に出せてしまう松本孝弘=TAK MATSUMOTOは、まさに生粋の音楽家に違いない。
 そんな松本の音楽家としての発想はまだまだ留まる所がないらしい。このアルバム・リリースを機に、松本はB'z所属のレコード会社であるバーミリオン・レコード内にギタリスト専門レーベル「House Of Strings」を設立。ここでは本人の作品はもとより弦楽器を主体としたミュージシャンの作品を リリースしていくそうだ。
 まだまだ松本孝弘の夢は音楽を通じて拡がっていく。彼の想いを感じながら、この冬『House Of Strings』弦の調べに耳を傾けてみてはいかがだろう。(斉田才)


松本孝弘

NEW ALBUM
『House Of Strings』

11.24 Release


VERMILLION RECORDS
BMCS-8001 ¥3,059(tax in)