2004年は初のワンマン・ライヴを敢行、4カ月連続CDリリース、ファンクラブ発足と、積極的な活動を展開し着実に実力を付け、バンドとしての結束力も固まってきた4ピース・バンド、三枝夕夏 IN db。彼らの2005年第一弾作品は、何とシングルとLIVE DVDの同時発売となった。
最近では作詞家としても注目を集めるヴォーカル・三枝夕夏に、新曲について、LIVE DVDについて、作詞について、2005年についてなど語って貰った。
●ニュー・シングルはこれまでとは一味違った魅力の曲になりましたね。
三枝夕夏(以下三枝):実は去年11月に出したアルバム用に、大野愛果さんが書き下ろしてくれた曲なんですけど、これは絶対シングルで出したいと思ってお取り置きしておいたんです。
●どこに魅かれたんですか?
三枝:デモの段階からプログレっぽい雰囲気のイントロだったんですけど、そこからすでに魅かれちゃって、さらにたたみかけるようなサビのメロディを聴いて、絶対かっこいいロックになるって感じました。それにマイナー調のメロディが自分の声質に合うとも思いました。
●声質に?
三枝:ライヴでもShocking Blueとか、わりとマイナー系の60年代とか70年代の頃の洋楽を歌うと周りの評判がいいんですよ。個人的にもそういう楽曲がすごく好きだし。それに最近やっと自分のライヴを少し客観的に見れるようになってきたんですけど、メジャー系よりマイナー系の方が合ってるなって感じますね。
●三枝さんのどこかせつな気な歌声が、曲の雰囲気を一層引き立てていますよね。
三枝:今回レコーディングでは、いつも以上に感情を込めて歌っていたような気がします。多分歌詞のせいもあるんですけど。
●歌詞の影響とは?
三枝:“飛び立てない私にあなたが翼をくれた”っていうのは、ある意味私自身の事でもあるんです。去年は初めてワンマン・ライヴをやったり、テレビに出たり、リリースも一杯したり、自分なりに精一杯やってきたんですけど、振り返るとどんな時も自分1人では絶対こんなにガンガンやってこれなかったよなって感じているんです。応援してくれるファンの皆が居て、支えてくれるメンバーやスタッフや家族が居て、いつも背中を押されながらやってこれたんですよね。今回はそんな気持ちを恋愛に例えて綴っています。ちょうど作詞をしたのが、ワンマン・ライヴが終わった直後だったから、思っている事を吐き出すような感じで一気に書き上げたのを覚えています。
●三枝さん自身、飛び立てずに挫けそうになる時もあるんですか?
三枝:最終的には前向きなんですけどね、落ち込む時はすごい落ち込むし、こう見えても周りからはすごくマジメだって言われるんですよ。だから簡単に、適当とか出来ない。1つの事を始めると、もうそれしか見えないし、入り込んじゃう上に全然器用な方じゃないから、何でもすぐパッとこなせるタイプではないんですよ。だから途中で色々悩んだり、挫けそうになる事は、実はしょっちゅうあります。
●その一所懸命さが三枝さんの最大の魅力だと、個人的には思っていますが。
三枝:あっ、やっぱり必死なの分かっちゃいます? もう6月で3年目に入るし、もっと余裕を見せなきゃとか思ってるんですけどね、結構、常に一杯一杯です(笑)。
●“あなたがいるそれだけで 風が吹くたび 地球が笑ってる気がするよ”など、今回も三枝さん独特の表現が見られますね。
三枝:何かいい事があった時に、たまたま風が吹いて木の葉っぱがザワザワって揺れたりすると、あっなんか地球が笑ってる!、喜んでる! みたいな気がしちゃうんですよ。人っていい恋をしている時や、何かいい事があったりすると、何でも許せちゃったり、何を見ても綺麗だなって感じたりしません? そんな感情を表したかったんです。
●“恋はいつも泥棒 ノックもせず 忍び込み 心を盗んで行くよ”も、三枝さんらしい、ちょっとかわいらしい感じがしました。
三枝:“泥棒”って、歌詞にいきなり出てくるとちょっとビックリしちゃうかなって迷ったんですけど、ディレクターさんに、夕夏ちゃんらしくてキュートな感じでいいんじゃないって言われて採用しました。
●2005年第一弾シングルになるわけですが、あえてこの曲を持ってきた理由などはありますか?
三枝:やっぱりロックとかバンド感ってものを今年はすごく大事にしていきたいので、そういう意味では方向性を表すのにとてもいい曲だなと思いました。
●2曲目は打って変わって、心染み入るバラード・ナンバーですね。
三枝:はい。ギターの岩井さんの曲です。またタイトル長いねって言われちゃいそうですけど(笑)。この曲はタイトルの“君がそばにいるだけで心は強くなれるんだ”っていう、ただそれが言いたくて、ストレートに綴ってみました。これも1曲目と同じように、自分の周りに居てくれる人へ向けた気持ちを表しています。
●歌声もピュアでストレートな感じですね。
三枝:わりとこういう曲は苦手なので何回か歌い直したんですけど、とにかく心を込めて歌いました。
●3曲目はカヴァーですか?
三枝:岩井さんと車谷さんが以前在籍してたニューシネマ蜥蜴の「eighteen」という曲のカヴァーです。前々回のシングルの時に同じように、車谷さんが作詞して、岩井さんが作曲した「pocket」っていうシネトカの曲をカヴァーしたんですね。それがファンの方の間で好評だったので、またやろうかって事になって。私自身、シネトカの曲はすごい好きなので、カヴァー出来るのが楽しいですね。
●青春ロックって感じで、こちらもピュアでいいですよね。
三枝:この曲はコーラスを岩井さんがセルフ・ディレクションで入れてるんですけど、コーラスに是非注目して頂きたいですね。すごい気に入っています。きっと10代の方が聴いてくれたら、共感してくれる曲に仕上がったと思います。
●作品を聴いていると、すごく安定してきたなって感じたんですが。
三枝:今はバンドでロックを作ったり演奏したりするのが楽しいので、そういういい状態でいい楽曲を作っていきたいって思っています。それに、やはりまたワンマン・ライヴをやりたいので、ライヴで気持ちのいい曲を一杯作っていきたいですね。
●ところで、またJEWELRYさんの新曲「白のファンタジー」の歌詞を手掛けられていますね。
三枝:はい。今回はアレンジ済みの音を貰ってそれを聴きながら歌詞を書いていったんですけど、キーワードは“寒いけどホンワカ温ったかい”そんなバラード曲にしたいなって思いました。描いている恋愛風景はある意味理想の形でもあるかな。大好きな人と寒さも忘れて温かい時間を過ごせたらとても幸せですよね。
●前回のアルバムではJEWELRYさんの曲をセルフ・カヴァーされていましたが、「白のファンタジー」も考えていますか?
三枝:もう冬も終わっちゃいますし、近々予定はないんですけど、この前のセルフ・カヴァーをJEWELRYさん達も喜んでくれたと聞いていますし、JEWELRYさんも私のオリジナルをカヴァーしてくれたり、そうやってお互いがカヴァーし合う事によって刺激にもなるし、いい試みだとは感じています。
●そして新人の岩田さゆりさんのデビュー曲も三枝さんが作詞されているんですよね。
三枝:はい。歌詞を書かせて頂く時、彼女の写真を見せて頂いて。すごくかわいい方で、真直ぐに何かを見つめている様な澄んだ瞳がとても印象的でした。でも、どこか寂し気な笑顔を持った少女だなとも感じたんです。それで自分は中学時代どんな事を考えていたかなって漠然と思って。それで、その頃の日記を読み返してみたんですね。思春期の頃って“生と死”とか、“自分の存在価値”とか、そういう事がすごく身近にあっていつも悩んだり不安だったなぁって思ったんですよ。それで、そう言えば私、あの頃よく空をポケ〜っと見ていたなって思い出して。“何ポケっとしてんの〜!”ってよく家族とか先生に言われて、“何にも”って答えていたけど、実は今よりずっと色んな事考えたり悩んでいたと思います。それで不安になると空見て。ゆっくりと形を変えながら空を飛んでる雲を見ていると、なんかすごく落ち着いたんですよね。それで最初にタイトルが浮かんできて、タイトルが決まったらわりと全部書き上げるのは早かったですね。3時間位だったと思います。
●作詞家としても増々幅を広げていっている感じですね。
三枝:いえいえ。もう一所懸命やらせて頂いているだけで。せっかくお話頂いたのに、書けなかったらどうしようとか、そんな恐怖もあるし(笑)。だけど、歌詞を書くのは楽しいですね。だから自分達以外の方の歌詞を書かせて頂くのは、本当に有り難いし、色々勉強していきたいと思っています。
●2004年は色々な事に挑戦されて、とにかくいつも動いているっていうイメージだったんですけど、今年はどんな1年にしていこうと思っていますか?
三枝:作品はコンスタントにリリースしていきたいなと思っていますが、今年は何より応援してくれる人達をこれまで以上に大事にしていきたいなって考えています。本当に今回の歌詞で言っているように、支えてくれるファンの人達にすごい感謝しているし、その人達が居てくれるから、今回の曲が出来たわけですから。例えばホームページの日記を毎日更新するとか、そんな小さな事でもみんなと繋がっていける方法ってあると思うんです。そんな風に感じられる今の自分って本当に幸せ者だなって感じています。
●では次にシングルと同日発売されるLIVE DVDについて内容をお聞きしたいのですが。
三枝:去年9月に大阪と東京でやった初のワンマン・ライヴの模様を収録しています。
●ノーカットで収録ですか?
三枝:演奏曲は20曲全部入っています。
●デビューから昨年までのシングルが全部入っているのに加え、アルバムの人気曲、三枝さんならではの洋楽のカヴァーと、まさにベスト選曲ですよね。
三枝:そうですね。自分としてもすごく嬉しいです。
●一番の見どころは?
三枝:一番はバンドの一体感です。サポートの方々も含め、本当にいいバンドだったんですよ。そして、もう1つ、ゲストに大野愛果さんをお迎えして一緒に歌って頂いたシーンです。大野さんは素晴らしい作曲家さんですが、ヴォーカリストとしてもとても実力のある方です。一緒に歌うのは緊張しましたが、感激しました。一番最初に大野さんに歌詞を書いて頂いたのが3枚目のシングルの「Tears Go By」っていう曲で、今回その曲も大野さんと一緒に歌ったんです。曲を頂いた時の事とか思い出したりして、感動しました。
●改めて客観的にライヴを観てみてどうですか?
三枝:なんか今でもよく分からないっていうのが、本音ですね。でも時間が経つ程に悔しい気持ちが募って来ているのは確かです。何度もこのDVDを観て、次に生かしたいなって思っています。
●しかし、ライヴに来れなかったファンの人達は嬉しいですよね。
三枝:多分、CDを聴いたり、テレビ出演の姿しか見た事がない方は、三枝夕夏 IN dbのイメージが少し変わるんじゃないかなって思います。ライヴは緊張しつつも一番自然体な私達が出ているので、是非ご覧頂きたいです。
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