倉木麻衣の2005年第2弾シングル「ダンシング」がリリースされる。どこかレトロなノリを感じさせるグルーヴを持ったR&Bダンス・ナンバーは、また一歩新しい事にチャレンジしようとする彼女の姿勢がサウンドとして表われているようだ。さらにPV&ジャケット撮影のためにニューヨークとロサンゼルスを訪れ、ビジュアル面でもこだわりを持って制作に取り掛かっている様子。異国の地で忙しく動き回っている倉木に、新曲についてメールでQ&Aに答えてもらった。
●今回の曲は80年代のグルーヴを持ったR&Bダンス・ナンバーといった感じで、ちょっとレトロさを含んだノリの良い楽曲がすごく耳に残りました。
倉木麻衣(以下倉木):去年の4月に初めてこの曲を聴いた時、迷わずすぐに「これだ!!」と思いました。ライヴでみんなで楽しめる、みんなで歌える曲を考えていたので、この曲に出逢った時から大切に温めていました。躍動感あるサビのメロディから、何か新しくスタートして「いくぞー!」という季節にリリース出来たらと思っていたので、3月に大学を卒業して社会人として音楽活動に専念していく私自身の節目にも相応しい楽曲に仕上げたかったんです。
●最初のフレーズの“矛盾だらけ”とか“うんざり”という言葉は今まであんまり使用しなかったですよね?
倉木:そうですね。でも日常生活の中で、矛盾や廃墟感をみんな感じていると思うんです。そんな事があったとしても、何か少しの光でも射せば、道になるだろうし。特に使用しなかった訳ではなかったのですが、普段の生活にありうる感情から表現したかったんです。
●そして、そこからすごく力強い内容になっていきますが、歌詞で一番大事にして伝えたかった事は何ですか?
倉木:全体的に歌詞はポジティヴに表現していますが、私の想いや考えを書いていて、それも自分に言い聞かせているので。聴いて下さる方皆さんによってポイントが違うと思います。心に響くポイントというのかな。とにかく私は内面の気持ちを解放させようという事をテーマに作ったので、皆さんが感じるままでいいと思います。
●“恐れずトライし続け 答えを見つけるから”というフレーズがありますが、倉木さんが見つけたいともがいている今の“答え”って何ですか?
倉木:答えは今まだ探し中ですね。答え=Tryし続ける事かもしれません。頑張る事を辞めた時には、その目の前にある事が答えだろうし。納得行くまで前を向いて歩く事が答えを見つける方法なのかもしれません。
●また、反対に色んな事を邪魔する “心のシェルター”って何だと思いますか?
倉木:マイナス思考になる時の心ですかね。誰でもあると思うのですが、頑張っても頑張っても壁が乗り越えられない時に、もう駄目かな……?って諦めの気持ち。まぁ〜その後にすぐに、「このままじゃ駄目だ」って気持ちに切り替わるのですが……(笑)。
●「ダンシング」というのは踊るという意味以外でも、何かを含ませて使っている気がしたのですが、他に何か意味はありますか? また、なぜカタカナなのですか?
倉木:心から込み上げる情熱や、My soul などといった内側からの想いを外に放出させたいという意味も込めています。「Dancing」と英語のスペルにすると、踊るというイメージが大きいですよね? でも今回はあえてその単なる踊るだけではなく、前向きな強さや心からの熱い想いを解放させていきたいという強い気持ちも意味しています。間奏の“ハイッ!”という掛け声からも、そんな高揚した気持ちを感じてもらえたらいいなと思います。
●ちなみに、倉木さんの“心のヒーロー”は誰ですか?
倉木:具体的な表現は難しいのですが、心のヒーローは、心の支えになるものです。辛い時・きつい時に支えになるもの。心の中で想うだけで、元気になれる人物もその表現の1つになるのかもしれません。
●“もし一秒でも 君の笑顔輝いたら 心の奥の夢見つけ出せる”というフレーズを見て、相手があっての自分の強さでもあるのかなという風に解釈しました。やっぱり“誰か”がいるからこその“自分”の存在や価値という思いは強いですか?
倉木:人は誰も1人では生きられないってよく聞く話かもしれませんが、実際本当に1人では生きていけません。家族の支えがあったり、友達の支えがあったりと一生のうち、何人の人に出逢って、どれだけの支えがあるのかと思うと、やっぱり自分の存在や価値も、感謝しながら毎日を送っていきたいです。
●倉木さんなりに、前作「Love,needing」との繋がりや関係性があれば教えて下さい。
倉木:前作は久々のLOVE SONGを歌いましたが、今回は応援歌や元気になれる曲です。繋がりというのを表現するのは難しいのですが、私自身ストーリーを持って毎回歌を歌っています。自分に言い聞かせながら歌うという事でかなり感情を大切にしています。
●ヴォーカルで何か心掛けていた事はありますか?
倉木:大切にしてきた楽曲だけに、内から漲るパワーを感じ全身全霊で歌っていきました。常に気を付けている事でもありますが、聴いて下さる方々へ伝わるように願いながら歌は歌っています。あとは、楽曲が持つ“少年っぽい”所にも注目して、歌い方、トラック選び、仕上げに至るまで、“少年っぽく感じるかどうか”というキーワードで進めました。
●「through the River」は別れの悲しみから踏み出して行こうとする主人公が描かれていますが、この歌詞で伝えたかった事、大事にした事は何ですか?
倉木:私的には今年大学を卒業し社会人として音楽活動をしていく……という変化もあるのですが。ここでの変化は……あまり具体的にはしたくないんです(笑)。
●“必要なことは 許せることでしょう”というフレーズが深いな〜と思いました。倉木さんがこのフレーズを綴った気持ちや、ここに込めた事を教えて下さい。
倉木:人それぞれ感情もあるし、考え方も違いますよね。その人にとっては必要でも、私には必要ではないかも……というような。例えば変わりたい!という気持ちは違うものだと思うし。内面的にもっと大きく大人に成長したいとか、強くなりたいとか、困難な事にぶつかってもそれを乗り越えて、更にそこから新たな自分と出逢えるかもしれないと思ったり……。外面的にはきれいになりたいとか色々……それを自分自身にあてはめてもらえたら良いなと思っています。
●「You look at me〜one」の歌詞について伝えたかった事、大事にした事は何ですか?
倉木:誰しも人は辛く苦しい闇の中にいる時って、1人寂しく孤独の世界に押しつぶされて我を見失ってしまうと思うんです……。そんな時、自分にとって何かしら1つでも希望という光が微かでも入ってくるとそこはまだ暗く霧のかかった世界だけど、わずかでも救われる……そんなふうに思います。だから私がその支えになれたらいいな(笑)って思います。
●ヴォーカル・スタイルがすごく優しくて包容力のある、今までと違った良い意味で力を入れていない雰囲気に感じましたが、ご自分ではいかがですか?
倉木:どの曲も熱い思い入れと、ポジティヴさを込めて作ったという事は変わっていません。それが自分にも言い聞かせている歌ばかり(笑)。今、自分自身、楽曲選びから、アレンジ等携わっている最中で、自分自身の新たな発見を探し、見付けている所なんです。
●前作から自分でヴォーカル・ディレクションをされているのですが、大変ではないですか?
倉木:無限なる可能性を感じた曲を、どうアレンジしていこうかとそこから悩みました……。何度か色んなパターンのアレンジを試みたんですが、最終的に求めているものが、このサウンドになりました。
●コーラスには倉木さん以外にも、マイケル・アフリックさん、徳永暁人さんが参加しているようですが、コーラス・ワークでのエピソードや感じた事があればお願いします。
倉木:コーラスはスケジュール上時間が合わずに一緒にレコーディングは出来なかったのですが、本当にコーラスを入れて頂く事で、楽曲の雰囲気も変わってきたし、幅が広がりました。色んな感じでコーラスを入れて下さったり、ご指導頂いた事でこれからの課題も自分に出来ました。
●レコーディング中のエピソードなどはありますか?
倉木:2番のサビの最後の“ダンシング もし一秒でも〜”の部分がスローになっていますが、これは一度作られたトラックを徳永さんと一緒にスタジオでテンポを決めて機械上でゆっくりと回し、それに合わせて歌ったものです。あと、英語詞のサビ部分“Love, You and Melody”の箇所は必ず歪んでいます。
●今作はジャケット撮影をニューヨークで行ったそうですが、いかがでしたか?
倉木:海外の沢山の国の中で、今どうしても行ってみたい場所でした。というのも刺激がとにかく欲しかったんですよね。NYは初めてだったんですが、とても良い所でした。アートにしても、街の雰囲気にしても、建物にしても、空気にしても……。人の動きの中で私自身本当に色々考えられるようになりましたね。
●グラウンド・ゼロなんかも行かれたのでしょうか? 何か感想はありますか?
倉木:はい。行ってきました。車を降りて場所まで行ったとたん、言葉を無くしました。なんで……?って気持ちです。ここにとても高い建物があって、この場所で大勢の方々が亡くなった事が考えられませんでした。今は囲いがあって、その周りに当時の状況写真などが説明書きと共にあったのですが、辛かったですね。
●春の曲だけど、実際に行ったのは冬のニュ−ヨーク……。服装はきっと春ものだから、ものすごく寒かったんじゃないでしょうか?!
倉木:寒かったです!! 撮影当日の朝はお天気が良く、若干暖かかったのですが、それでも寒かったです(笑)。身に染みる寒さですよね。でも空気が澄んでいる分気持ちが引き締まって良かったです。とにかくギリギリまでコートを着て、脱いでの繰り返しでした。
●PV撮影はL.Aで行ったそうですが、どのようなPVにしたいと考えて決めたのでしょうか?
倉木:ダンシングは本当に元気になれる楽曲だと思うんです。NYはとても寒かったのですが、LAは春先の陽気で(結構雨が多い)、なんて表現すればいいのか分かりませんが、映像からも元気を送れるような作品を作りたかったんです。
●今回のPVの見どころは?
倉木:現地在住のディレクターの方とのお仕事という事もあり、本当に隅から隅までを楽しんで頂きたいと思います。国や言葉の壁を音楽は越えるという素晴らしい事を映像で表現して、先程お話した元気を届けていきたいです。
|