本誌が大注目している新人アーティスト・岩田さゆり。今回、1stミニ・アルバムで既に表紙となった事でも、どれほど編集部が期待しているのかが分かってもらえるだろう。
彼女はティーン誌の読者オーディションで準グランプリを獲得し、その後、ドラマ「3年B組金八先生」で軽度の知的発達障害を抱えた飯島弥生(ヤヨ)役で繊細な演技を見せ、一躍注目を集める存在の女優となった。シンガーとしても、2月にデビュー・シングル「空飛ぶあの白い雲のように/さよならと…」、3月には「空色の猫」とシングルを2ヶ月連続で発表。これらシングル2曲も含めた全8曲を収録した1stミニ・アルバム『風と空と』が5月25日にリリースされる。
まだ中学生の彼女が作り出したアルバムとはどういったものになっているのか……? “等身大”という言葉は使い古された感があるかもしれないけれど、今年15歳になる彼女が持つ10代の繊細さや不安、そして未来を持ち受ける楽しさ希望感、ワクワクとした期待……そういったものが瑞々しい輝きと眼差しを持って描かれているのが今作。そんな澄んだ感情や清潔感は、年代を問わずに共感出来るし、感動を与えてくれるだろう。大人になり年を重ねても、誰もが通った思春期の出来事はきっと影響が大きいはず。だからこそ、素直に響いてくる不思議なパワーが携えられているのかもしれない。
例えば、 “自分には ないものはとても 綺麗に 見えちゃうんだね と言う事は 誰かに私 輝いて見えるの? うらがえしは別世界 ”(「あなたはあなた。」)なんかは、大人になるにつれて見えてくる他人との違いが描かれている。どうして自分はあの子より上手く出来ないのだろう……?といった焦りや失望や将来への懸念、そういった気持ちは誰もが持った事があるはず。そんな中で自分を輝かせるものを見つけようとするのが成長する事なのだ。“誰にもね 決められないんだ 私のしあわせは”と言い聞かせている結末は、どこかたどたどしさを持った岩田の歌声だからこそ、逆に肩を張らずに自然とその力強さを受け入れてしまえる気がする。
このどこか危なっかしさを感じさせる未完成のヴォーカル、これも岩田さゆりの魅力の1つでもあると言える。上手いとか下手では出せない空気感、醸し出すオーラが含まれていて、1度聴くとハッとさせられる印象深い歌声。クセになって何度でもアルバムをリピートしてしまう。
今作について岩田自身は「ふとした時に見上げた空の色が凄く綺麗だったり、風の匂いが温かかったり、普段気付けなかった物とか周りの人の優しさとか……ちょっと立ち止まってみたら見えてくるものもあるよって気付かせてくれるアルバムになっていると思います」とコメントしている。
“たんぽぽの ように健気でいたい どこにいても 近くで咲く たんぽぽの ように笑いながら 雨が降っても どんな時も 太陽を見上げていたいよ”(「たんぽぽ」)というフレーズからもそんな言葉が感じられる。せかせかせずに立ち止まってふと見渡せば、きっとあなたの周りには優しさが溢れているよ……、そんな風に気持ちに余裕を持たせてくれる穏やかさが心地良く響いてくる。
そんな彼女が今憧れているのは、「風の谷のナウシカ」の主人公ナウシカ。「夢のために、守りたい人のために1人でも立ち向かっていける強さを持っている憧れの人」なんだとか。たんぽぽのような少女は、きっと風が吹いても雨が降っても、“どんな事があってもそこに居る事が出来る”、そんな強さとしなやかさを持つ存在へとなりそうな予感がする。
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