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この日を一日千秋の思いで待ち焦がれたファンも多いのではないだろうか。ZARD初のLIVE DVD『What a beautiful moment』が公演から1年を経てようやくリリースされる。
このLIVE DVD、昨年デビュー14年目にして初めて行われた、そして今後2度と行われるかどうかも未知数のZARD初のライヴ・ツアー「What a beautiful moment」ツアーの模様を完全収録したものだ。
パッケージングはLIVE DVDと特典ディスクの2枚組、特製ハードカバー・ケース仕様、さらに68ページ・ライヴ写真集封入と、大変豪華な仕様で登場。さらにライヴ映像とドキュメント映像で120分を越えるというヴォリューム感は、それだけでも購買意欲をそそるに十分だ。
まず、LIVE DVDを見てみよう。映像は基本的に昨年3月の東京国際フォーラムホールAでの公演のものがベースになっている。実際映像は、最初のオープニング映像のシーンから1曲目の「揺れる想い」〜本編最後の「負けないで」、さらにアンコールでのメンバー紹介の映像から最終曲「Don't you see!」に至るまで、ステージの流れと同じ時系列で全てを網羅して収録。カメラワークは至ってシンプルに、ドキュメンタリーのごとく坂井泉水の表情と歌とメンバーの演奏をカメラが切り取っていく。時折要所要所で各地の会場の様子や、ステージ設営などのインサート・ショットが挟み込まれるが、それもあくまでライヴの流れを妨げないように小出しの長さで工夫されていて嫌みがない。
ここで見る映像は、不必要な映像処理や編集がない分、全体的に淡々とした印象を与えている。が、それが返って坂井泉水のライヴにおける手振りや表情の一瞬の変化を集中して感じ取る事が出来、自らもライヴ空間に居合わせているような臨場感に浸る事が出来る。
そしてもう1つ。注目すべきは、このLIVE DVDにはどこからも音楽が鳴り響いているという事実。そう、この作品はまず第一に、音楽ありきの姿勢を貫き通している音楽映像作品なのだ。残念ながら僕はこれを5.1ch仕様で体験出来なかったが、そうでなくとも坂井泉水の息遣いまで聴こえそうなその空気感、ライヴならではの演出の中で彼女が歌うヴォーカリストとしての力量の素晴らしさ、そして総勢17名に及ぶミュージシャン達による圧倒的なスケールの演奏がしっかりと、しかもクリアーな音質で収録されているのが体感出来た。この作品が予想以上にリリースまでに時間を要したのは、多分にこのライヴ音源へのこだわりにあったのではないか？ ライヴだからといってスタジオで作り上げたZARDの多重録音による緻密な音源に一歩もひけを取らないサウンドを提供しようとするその熱意、音楽だけで聴いてもライヴ盤としても商品価値のある音質とクオリティ、音楽制作者集団ビーイング・ギザグループの面目躍如とも言える音に対する熱意が脈々とこのLIVE DVDには息づいていた。
さらに、このDVDの魅力を増大させているのは、当然の事ながら収録されている選曲。デビューから昨年までのZARDの軌跡を見事に捕らえた堂々たるベスト的選曲は、誰もが納得するところだろう。その上で「もっと近くで君の横顔見ていたい」や「明日を夢見て」「君がいない」他、ライヴ用にアレンジされた名曲の数々……。
ライヴ・ツアーから1年を経て、客観的作品として鑑賞してみてもあの時の感動が色褪せない形で残されている。そんな事にも、この作品が世に出る価値はあるだろう。
そして、2時間強に渡るこの映像作品を最後まで見終えようとした時、僕らは興味深い映像にいくつか出会う事になる。アンコール最後の「Don't you see！」では“What a beautiful moment”の全会場のライヴ映像が１曲の中に違和感なく編集されて届けられる。（という事は、制作スタッフはこのツアーの全公演を収録し、その膨大な映像ショットの中からすべてを吟味・編集した上でこの1本の映像作品にまとめ上げたという事か？ だとしたらそれは気の遠くなるような作業だったに違いない）。また、終演後に流される膨大な量のスタッフ・クレジット。その最後のエグゼクティブ・プロデューサーの欄に刻まれた長戸大幸の文字。栄光の90年代ビーイング・グループを率いた伝説的プロデューサーの名前が12年振りに復活したその背景には、この作品にかけるスタッフの熱意を感じずにはいられない。
また、特典映像に見られるZARD・坂井泉水の素顔の表情や決定的瞬間を集めたエクストラ・ショット集、さらにPHOTO BOOKとディスコグラフィetc……、そんな仕様の隅々にもZARD＝坂井泉水本人と制作者側の思いが感じられて見どころ満載だ。ファンならずとも、このLIVE DVD、じっくりと味わってみて欲しい。(斉田 才)
※本誌に掲載されておりました『Cool City Production vol.6 ZARD〜WHAT RARE TRACKS！〜ZARD Edit』は制作上の都合により発売中止となりましたので、こちらのページでは紹介文章をカットしております。ご了承下さい。
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