真夏に押し寄せる感動、B'z王道バラードの傑作、完成
B'z39枚目のシングル「OCEAN」がバラード曲だと聞いて、そろそろ、いよいよ、やっと、と思っていたファンも多いのではないだろうか。というのも、ここ2〜3年の彼らのシングル曲は、「熱き鼓動の果て」から「IT'S SHOWTIME!!」「野性のENERGY」「BANZAI」、そして「愛のバクダン」とアップ系ナンバー続きだっただけに、そろそろB'zのバラードが聴きたいなぁと思っていたファンも少なからずいたに違いない。また、前々作シングル曲「ARIGATO」がバラードではないけれどもミディアム・スローのメロディアスなナンバーという事を踏まえて、いよいよ、バラードが出てくるのでは?と予想していたファンもいただろう。そして、シングルでは2002年の「GOLD」以来となるバラード曲の出現を今か今かと待ち望んでいたファンも数多く存在するだろう。かく言う僕も我がままなB'zファンの1人として、壮大なる美メロ・バラードが出てこないかなぁと密かに期待していたのである。
そんなファンの心中を察知でもしているかのようにこの「OCEAN」、いよいよ登場だ。この曲、すでに導入部から期待にたがわぬ滑り出しを見せる。情緒たっぷりのストリングスとアコースティック・ギターの響きが絶妙に流れ出し、そして一瞬、ピアノだけの音色に、そこに再びストリングスが重なり、その響きに導かれて稲葉の艶やかなヴォイスが、コーラスが、ギターが、ドラムが徐々に重なり壮大さを増してサビ・メロディに向かっていく。優美にして繊細なるメロディがサウンドと絡み合い、構築されてクライマックスに到達する構成。これこそB'zバラードの真骨頂。初期の名作「ALONE」を彷佛させる響きを継承しつつ、「GOLD」のような壮大さも併せ持つ。まさに直球ド真ん中の麗しさと力強さを兼ね備えたバラードだ。ただ、だからといってこの曲、大仰なわけではない。このバラードの新鮮さは、余計な重厚さをそぎ落としたより簡潔にして明瞭な音作りの中に、奥深い響きとメッセージが共存しているところにある。何度でも噛みしめたくなるバラード。B'zの匠の技が生かされた、他ではなかなか真似できない境地の歌声とサウンドがここには確かにある。
さぁ、そして、そんなB'zのバラード・シングルといえば、毎度のことながら話題性にも事欠かない。「OCEAN」は、話題のフジテレビ系夏の新ドラマ「海猿」の主題歌。シングル書き下ろし曲がドラマ主題歌となるのは「今夜月の見える丘に」以来、実に5年振りの事だ。海難救助の最前線で活躍する潜水士の苦悩・友情・恋愛を壮大なるタッチで描き、昨年映画も大ヒットした「海猿」の大海原を駆け抜けるような感動そのものズバリを「OCEAN」という名の楽曲に仕立て上げた2人。このコラボレートに間違いはないだろう。さらに今回、B'zのプロモーション・ビデオは史上初!、「海猿」のメイン舞台ともいえる、海上保安庁の巡視船“みずほ”の船上で撮影されたというから、その出来栄えも大いに気になる。
今年も再び、相変わらずのようにニュー・アルバムをリリース、半年間に及ぶツアーを行い、17年目の航海に乗り出しているB'z。アルバム総売り上げ枚数が前人未到の4000万枚を突破してもなお彼らの挑戦は続いている。
その果てしない活躍に僕らはまだまだ乗せられていくしかないだろう。人生という海原は、バラードだ。(斉田 才)
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