2ケ月連続リリース第2弾のシングル「世界 止めて」は、夏の香りを放ったミディアム・ナンバー。インパクトのある言葉で始まるこの曲は、恋愛における幸せの1コマを切り取ったもので、今までの彼女の曲の中でも一際存在感のある作品である。力強さと凛としたたたずまい感じられる歌声からは、歌の世界を自分の中でじっくりと消化して歌う竹井詩織里という1人のシンガーのスタンスがしっかりと表れていた。今回は最新シングルの話に加え、彼女の観察眼についても触れてみた。
(INTERVIEWED BY EMI MORI)
●今回のシングルは前作「つながり」とは違って、最初からインパクトがある曲ですね。この曲を最初に聴いた時はどういう印象を持ちましたか?
竹井詩織里(以下竹井):この曲はデモをお願いする時に、サビ頭でドンと強いイメージのメロディが来るようにをお願いしたんです。それで出来上がったものを聴いた時に、恋愛をして幸せになる幼い恋というよりは、大人の視点からの恋愛を書きたいなって。
●“世界”という言葉はどういうものを指しているんでしょうか?
竹井:一番は、主人公と君が共有している空間や気持ちを含めて、“この瞬間の2人”という事ですね。それをこのまま止めて欲しいという。
●“世界 止めて”という言葉はすごくインパクトがありますが、これはどうやって出てきたんでしょう?
竹井:“世界 止めて”という言葉はすごくインパクトがありますが、これはどうやって出てきたんでしょう?
●歌う時も何度も歌われたとか?
竹井:けっこう歌いましたね(笑)。時間をかけさせてもらいました。始めからキーが高いので、そこは苦労しましたね。あとサビの部分が何度も繰り返されるので、はっきり聴こえるように心掛けました。もちろん主人公の気持ちになって歌っていたので、歌うにつれて曲のイメージも固まってきましたね。
●歌詞の中で思い入れがある箇所はありますか?
竹井:やっぱりサビの部分ですね。今回の曲はサビが5回あるんですよ。
●これだけサビが出てくると、聴いてる方も切なさがより伝わってきました。歌いながら気持ちも高揚していったりしませんでしたか?
竹井:そうですね。A、Bメロが終わった後は普通に歌って、最後はもっと強く歌ってというようなイメージとしてはありました。
●初めて聴いた時に、竹井さんの声が今までの曲の中でも特に芯が通ったように聴こえたので、意識して歌われてたのかなって。
竹井:キーが高い事もあって、歌い方も強くなったというのもありますし、詞を通しての感情の入れ具合とかが歌に繋がったというのもあるかもしれません。
●サウンドにスケール感があったり、途中で入るコーラスが神秘的な感じを出したり、聴き手の想像力を刺激する曲なんじゃないかと思いました。
竹井:大サビの部分は、音に広がりを持たせるようなイメージで作りました。メロディが多いので、コーラスでガチガチに固めてしまったら曲が重たくなってしまうんじゃないかというのはありました。A、Bメロとサビとの違いがはっきりした方がいいのかなって。
●前作の「つながり」とは違うドラマティックな感じがありますよね?
竹井:「世界 止めて」は自分の中で幸せが最高頂の時を書こうと思って詞を書き始めたんです。それでいざ振り返ってみたら、一番幸せな時の事を書いた曲がなくて……。あともう少しで幸せに近付けるとか、別れ際とか……(笑)。そういう苦しい部分の方が書きやすかったりするんで。
●では実際に、今回幸せのピークの時期を描いてみてどうでしたか?
竹井:すごい幸せだけど、それだけでいいのかって思ってしまったんですよ。“幸せです!”で終わっちゃっていいのかなって。そこは意識して書かないといけないものなのかなとは、今回書いてみて思いました。幸せに浸ってしまう事に不安になったり、そういうものに対して冷静になれる人が持っているひたむきな想いというものを描くというか……。
●今回の歌詞を書く時も、そういった考えと葛藤しながら書かれてたんですか?
竹井:そうですね。だから歌詞を書くのは難しかったです。
●今後“100%幸せ!”というような歌詞が登場する事はあるんでしょうか?
竹井:曲によってはあるかもしれませんね。
●そうやって苦労して出来た曲だからこそ、思い入れも強くなったりしますよね。
竹井:納得のいくものが出来ると、歌ってる時の気持ち良さも違いますし。
●仕上がった後は、いつもように曲を何度も聴いてましたか?
竹井:大サビの部分が好きなんで、そこになると聴く度に幸せな気分になってました。トランペットの音色やコ−ラスが入ってきますし……。歌詞も大サビの部分が好きなんで。
●今回収録されている「追憶」と「夕暮れの雨と」は同じぐらいの時期に出来上がったものだったんですか?
竹井:「夕暮れの雨と」は今年2月のカフェ・ライヴで歌った後に、タイトルも歌詞も変えたんですよ。最終的に岡本仁志さんにコーラスをお願いしたんですけど、雨っぽさもあって浮遊感が出て良かったです。
●最初から“雨”というキーワードはあったんですか?
竹井:そうですね。デモの時から雨っぽい感じがしてたんで、雨を見ると思い出す様な感じの歌詞はどうかなって。
●今回の3曲はどの曲もすごく声がとおっている印象を受けたんですけど、歌う時に意識した事はあったんでしょうか?
竹井:やっぱり気持ち重視になりますね。歌詞のイメージや曲の感じを大切にしたいので。「夕暮れの雨と」に関しては、“こんな事があったね”みたいに話し掛けるような感じで、イメージ作りから入っていきましたね。後はいかに気持ち良く歌えるかという。レコーディングの時は、スタッフの人達とまず雰囲気作りから始まるんです。デモをもらった時から段々と自分の中での曲のイメージが固まってくるので、スタジオではそんなに大変だったりはしないんですけど。曲の中に入り込んで、そこでようやく自分が思い描く歌になるというか……。主人公の年齢設定をして、録った声を聴いて“じゃあ、あと2歳ぐらい上な感じで……”みたいに試されたりします。それだけでぐっと変わるんですよね。
●それだけ想像力があるという事ですよね。
竹井:そういう雰囲気作りの中で、人生勉強をさせてもらってますね(笑)。今後の歌詞のヒントになったりもしますし……。私にとってはすごく大事な時間です。
●ちなみに竹井さんは、人が歌っているのを聴く時、どういう所が気になりますか?
竹井:歌ってる人のリズムの取り方とかは気になりますね。ケツメイシの「さくら」の曲の入り方はグッとくるな、とか(笑)。あとは曲を聴きながら今度は自分もこういうテーマの歌詞を書いてみたいなと思ったりします。
●それは男性アーティスト、女性ア−ティスト関係なくですか?
竹井:そうですね。最近のお気に入りはTHURSDAY LIVEでも「タイガー&ドラゴン」を歌ったんですけどクレイジー・ケン・バンドですね。さすがにあの人達程っちゃけた歌詞は書けないですけど(笑)
●あの曲を歌うなんてすごいですね。
竹井:歌詞が“オレ”ですからね。大賀さんがすごく格好良いギター・フレーズを弾いて下さって、それで気持ち良くなってしまって、姉さん気分で歌ってました(笑)。その日のライヴでは今回のシングルの3曲も歌ったし、「つながり」も歌いました。最近の曲がメインでしたね。
●3曲目の「追憶」はスタンダードな香りがする曲ですよね。
竹井:曲を聴いた時にアコースティックな感じがあったので、“そういう日もあったなぁ”と電車に乗ってたら思い出していくという内容になりました。
●歌詞を書いていく時は、何か中心になるものがあってそこから広がっていくんですか?
竹井:「追憶」に関しては、サビの部分でタイトルの言葉を歌うという様にはしたくなかったので、書きたいように書きました。思い出すという事を考えた時“追憶”という言葉が一番しっくりくるかなって。最初は神戸辺りの事を書こうとも思ってたんですけど、ちょっとズレて明石に行く車窓になってしまって(笑)。私の場合、交通手段が電車なので、電車から見えた景色とかが思い浮かんだので書いてみました。
●乗り物に乗ってる時は外を良く見る方ですか?
竹井:はい。良く見てますね。電車とか車とか…。洗濯機の中とか見るのも好きですよ(笑)川が流れてるのと同じ感覚ですね。そういう動くいてるものを見ると落ち着くんです。でも人混みとかはダメですね。自分がどこかに座って人が歩いているのを眺めているのは好きなんですけど、その中に入るのはイヤというか。
●観察する事が好きなんですね。
竹井:そうですね。
●今の話を聞くと、見てる場所が他の人と違うような気がするんですけど……。
竹井:洗濯機は見てると落ち着きますよ。水族館で泳いでる魚を見るのが好きなのと同じ感覚です。洗濯機はいつ見ても変わらずに回ってるし、魚もずっと変わらずに泳いでるし…。もちろん食い入るように見てる訳じゃないですよ(笑)
●今後の予定ではインストア・ライヴがあるとの事ですが、どんな曲が聴けそうでしょうか?
竹井:まだきちんとは決まってませんが、最新のシングルや自己紹介的にカヴァーとかも歌えたらいいなと思ってます。
●インストア・ライヴは新しいお客さんとの出会いもありますしね。
竹井:そうですね。新しい風が入ってくる気がします。
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