ZARD

New Album
『君とのDistance』

2005.9.7 On Sale!


 聴き終えて、しみじみ「いいアルバムだなぁ」と思った。いつでも、どこでもアーティスト、作品の良いところを見つけるのを信条としている私ではあるけれど、今度のZARDのニュー・アルバムは、それにも増して無条件に納得させられる完成度を持った作品だった。
 何がどれほど優れているのか、まずそれを説明する前に、このアルバムはいの一番で、最近心が疲れている市井の大人達に聴かせたい。きっと、心に勇気の灯がともって、奥底にしまっていた切なくて甘い感情が蘇ってくるのを感じるはずだ。
 90年代にZARDの音楽を体験した世代はもとより、しっかり自分を持っていて、一生懸命に働いて、でもどこかやるせない空しさを抱えている、そんな生真面目な人達に最適だ。その証明として、何よりもこのアルバム、そんな彼らを鼓舞する生き生きとした詞が溢れているのだ。坂井泉水が“いつも思いつく限りの詞をメモし、その膨大な詞の中から心にひっかかる詞だけを吟味して引っ張り出し、パズルのピースのようにハメて何十回も手直しして”完成した全13編の歌詞。それらが、今回は、全編「人と人との距離感(=ディスタンス)」をテーマに綴られ、様々なシチュエーションで紡がれていく。そのリアルな心象風景の描写は、読む者の心を捕えて放さない。
 坂井泉水は今作を作るにあたり、自らが「涙を流すような、涙がこぼれるような音楽をつくりたい」と改めて感じながら制作に入ったという。悲しいからではなく、じんわりと心の琴線に響いて、思わず涙がこぼれてしまう、そんな感動が、この作品には確かにある。
 アルバムのサウンドに耳を傾けてみると、これがまた緻密かつバラエティ豊か。雄大なストリングスから始まる「夏を待つセイル(帆)のように」はオープニング曲に相応しい華やかさ、「サヨナラまでのディスタンス」では、斬新な打ち込みアレンジで新境地を聴かせ、さらにミディアム・テンポのおいしさを引き出す「かけがえのないもの」「今日はゆっくり話そう」、ピアノで聴かせるバラード「君とのふれあい」、エスニックなマイナー調のメロディが哀愁を呼ぶ「セパレート・ウェイズ」、アコースティックな瑞々しさいっぱいの「Last Good-bye」(FIELD OF VIEWのセルフ・カヴァー)、疾走感いっぱいの爽やかな「星のかがやきよ」、そうかと思えばワルツで心躍らせる「月に願いを」、二胡や北京語まで駆使した「あなたと共に生きてゆく」(テレサ・テンのセルフ・カバー)、ZARDのロック魂を感じさせる「I can't tell」、小気味よい「good-night sweetheart」そして、ラストは構想から3年の歳月を経て完成した啓示的ナンバー「君と今日の事を一生忘れない」。
 どれもが一切の妥協無く、最高の作曲家とミュージシャンとアレンジャーを起用し、一音一音まで丹念に仕上げられている。いつもながらに感心させられる音作りは今作でも健在だ。さらに曲順構成の滑らかさも魅力の1つ。アルバムならではの価値を高めて、一気に聴き通せてしまうマジックはさすがとしか言いようがない。
 そして、もう1つ、坂井泉水の繊細さと力強さを併せ持ったヴォーカリストの実力は、ここでも遺憾なく発揮されていて素晴らしい。ここに流れているのは、14年間に及ぶZARDの活動の集積、そして革新性。“最新作が最高傑作”、本当にそう呼べる作品や作り続けられるアーティストは、稀だけれど、現在までに40枚のシングルと通算16枚のアルバムを出し続けていながらにして、今回のアルバム、ZARDの最高傑作、と呼びたい衝動に駆られてしまう。
 このアルバムを手に取るあなたとZARDとの距離、是非、ここに収録されている全13曲をあなたの生活と照らし合わせて聴いてみて欲しい。“心の時代”ならではの、かけがえのない“感動”にきっと巡り合えるはずだ。(斉田 才)


ZARD

NEW ALBUM
『君とのDistance』

2005.9.7 Release


B-Gram Records
JBCJ-9012 ¥3,059(tax in)