今年に入って精力的に作品を発表してき竹井詩織里が、ニュー・アルバム『second tune 〜世界止めて〜』をリリース! オリジナル・アルバムとしては約1年振りとなる今作は、デビュー以来着実にアーティストとしての成長を遂げた彼女の音楽観がたっぷり詰まった作品になっている。本誌ではアルバム完成間近の彼女に取材を敢行。作詞に関する話をメインに話を聞いた。(INTERVIEWED BY EMI MORI)
●アルバムの作業も大詰めですね。
竹井詩織里(以下竹井):そうですね。あと2曲ぐらいで完成です。
●アルバム・タイトルも決まったそうで……。
竹井:『second tune 〜世界止めて〜』に決まりました! 1stアルバムの時とは違う新しい竹井詩織里を感じてもらえるんじゃないかなと思って……。第2ステージというような意味も込められてます。“tune”という響きが可愛いくて好きです。
●タイトルの候補は他にもあったんですか?
竹井:ありましたね。ただ、アルバム制作にあたって最初から明確なコンセプトを決めて作ったと言うよりも、自分の好きなタイプの曲ややりたいと思っているものを形にして、その中から良いもの選んでアルバムにしようという感じだったので、新しいタイプの曲もありますし、歌詞の部分でも1stに比べてもっと肩の力が抜けて素直になれた部分もあったので、こういうストレートなタイトルの方がいいかなと思って決めました。1stの時は、聴いて頂く方に和んでもらえるようなBGM的な雰囲気だったんですけど、次のアルバムでは聴き手との距離感が近い方がいいなって思ったんです。一緒に口ずさめたり、温度とか匂いが伝わるようなサウンド面という所をもっと大切にしてもいいんじゃないかなと思ったので、そういう事を意識しながら作りました。
●歌詞の面でもそういう事を意識されたんでしょうか?
竹井:そうですね。楽曲ごとに書き分けようとは思ってますね。曲を生かせる言葉を意識するとか。
●レコーディングする時はいつも何時ぐらいにしてるんですか?
竹井:私は昼間にレコーディングする事が多いですね。午後1時から始って長くて2〜3時間ぐらい歌って、その後に録った声を聴いて選ぶという作業をしてます。だから終わるのは夕方5〜6時ぐらいですね。その方が生活リズムが整っていいので、健康にはいいかもしれません。私の場合、夜にレコーディングをすると、眠くなるんですよ(笑)。歌ってる時は大丈夫なんですけど、歌の選びになるとウトウトしちゃって……。
●睡眠時間はしっかり取る方ですか?
竹井:ちゃんと取らないと喉にも良くないんで、最低でも6〜7時間ぐらいは眠るようにしてます。だから夜の12時か1時ぐらいには寝てますね。歌詞を書くと夜遅くまでかかってしまうので、夜中3時ぐらいになってしまう事もありますけど。
●家に帰ってからする作業も色々あるんですね。
竹井:家での作業の方が多いかもしれないですね。歌いこんだりとかしてますし。一応部屋を閉め切って歌ってるんですけど、隣の部屋の人には聴こえてるみたいです。この前挨拶した時に、隣の人が“いつも犬がうるさくてすみません”みたいな事を言われたので“いや、私もうるさいと思うんで……”と言ったら、“いつも綺麗な歌声聴かせてもらってます”って言われて、ものすごく恥ずかしかったですね。もう絶対に窓を開けて歌わないでおこうと思いました(笑)。
●今回のアルバムの中でも、家でしっかり歌いこんでレコーディングに臨んだものはありますか?
竹井:基本的にはほとんどですが、「うたかた」は家で作業して歌いこんでおいて、メンバーとリハーサルで合わせたりしました。
●アルバムはいつから制作してたんですか?
竹井:今年に入ってからですね。最初はゆったりとやってたんですけど、シングルの制作もあったので最近はみっちり作業をしてます。
●収録曲を聴いた時、歌詞と曲のおさまりがいいという印象を受けました。耳に自然にすっと入ってくる感じが、前のアルバムとはちょっと違う様な気がして。
竹井:私自身はすっと流れる様な心地良いものも好きなんですけど、聴いていてどこかちょっと“あれ?今何って言った?”っていう引っ掛かりがある方が面白いのかなと思ったりしてます。そういう驚きみたいなものを歌詞に入れたいと思えるようになったのは、肩の力が抜けたからなのかなと。
●確かに余裕がないとそこまで意識が働かないですよね。それは今まで作詞をしてきた中で生まれた自信から生まれたものだったりするんでしょうか?
竹井:自信というものは感じてないですね。歌に合わせて感情を持っていくとか、歌い分けるという事に関してはコツを掴めてきたような気がします。例えば“前に歌った曲の感じをもう少し大人っぽくして歌おうかな”という感じで、今までの経験を振り返って力加減を調節出来るようになったとは思います。どうやったら新しい表現が出来るか考えてますね。
●“こういう風な曲を作って欲しい”と言うようにお願いして作ってもらった曲はありましたか?
竹井:自分の曲じゃなくても、洋楽のカヴァーとかでも歌ってみてしっくりくるものってありますよね。ライヴで歌ったりした時に“これいいな”と思った曲の感じでアレンジをリクエストしたりはありました。
●今回も色々な方が作曲で参加されていますが、それらの曲が作詞に影響を及ぼしたりしましたか?
竹井:そうですね。曲を聴いた時の第一印象を大切にしたり、そこから“こういう言葉がいいんじゃないか”と言うアイディアが浮かんだりするので、そこで書き分けていきたいとは思ってます。全部が全部同じ様な歌詞だと聴いてる方もつまらないだろうし、私自身も歌詞を書いていてつまらないと思うので、そこでも新しいものが出せたらいいなと思います。
●歌詞の中で新しい挑戦をしている曲はありますか?
竹井:「slow step」は今まで使わなかった名詞を使ったりしてますね。“犬”とか、こういうダイレクトな言葉はずっと避けてたんです。
●それは何故でしょう?
竹井:たぶんカッコつけてたんじゃないですかね。曲を聴いて浮かんだ景色を導く言葉なら、どんなものでもいいんじゃないかと思えるようになりました。歌詞を書く事で、随分きたえられましたね。最初の頃は歌詞を “あまり良くない”と言われると、自分を否定されたような気分になってたんです。でも本当はそうじゃなくて、自分が十分に歌詞を書き切れてなくて相手に伝わってないという事で指摘されているだけであって、自分自身を否定されている訳じゃないという事が歌詞を書くにつれて分かるようになりました。自分が納得して、必要な言葉でパズルみたいに1つでも欠けたらダメと思えるように書けた歌詞だと、出来上がった時に達成感がありますね。言葉の羅列とかではなく、伝えたい事があっての言葉ですからね。
●深いですね。
竹井:いやいや……(笑)。だから悲しい事があっても“ネタにすれば……”みたいな感じで明るくなれたりして、自分でもすごいなと思いました。悲しい事は誰でも起こる事だし、そこの部分で共感してもらえるならラッキーじゃないかと考えられるようになって、生活面でも前向きになれるようになりました。だから、こういう作詞をしたり音楽を作る作業というのは、竹井詩織里だけじゃなくて、自分の生活を良い方向に導いてくれている気がしますね。
●まさに生活に反映されているんですね。
竹井:そうかもしれません。自分が書きたい歌詞に嘘は書けないし、全てが実体験という訳ではないですけど、生活と密着したものだったりするので、日常生活と歌詞との距離が近付いている気はします。でも身を削ってる気は全然しないんですよ。たぶん“これが全部私です”って出しちゃったらすごいしんどいと思うんですけど、私の場合は1つのお話として捉えているので。空想をして書く事もあれば、友達の話を聞いて自分の思いを書いたりするし……。
●作品と自分との距離が取れているという事ですね。
竹井:そうですね。歌う時も自分とは違う主人公だからこそ、なりきって歌えるというのもありますし。
●竹井さんの歌詞って、どこの国とかどこの場所であった事かは分からないんですけど、そこであった事が映像になって伝わってくるんですよね。どこの国でも起こりうる事なんですけど、場所は断定されてないという……。それがすごく不思議だなって。
竹井:それは面白い話ですね。最近音楽を作っていて思うのは、今私が歌ってリアルな事って何だろうって。外国に行った事のない私が、異国の事を書いたとしても共感してもらえるのかなって。それで生活の中で見える景色を歌詞にしてるんだと思うんですけどね。
●それだからこそ聴く人も共感出来るんだと思うんです。
竹井:それは今後の課題ですね。何か今すごいいいアイディアもらったような気がします。
●ちなみに竹井さんは外国に興味はありますか?
竹井:すごくありますね。ヨーロッパには建造物を見に行ったりしてみたいし、ボサノヴァの本場の場所にも行ってみたいですし……。海外に出掛けたら、また違う空気を吸って新たなアイディアが沸くでしょうね。
●アルバム発売の前にインストア・ライヴがありますね。竹井さんは歌ってる時はお客さんをしっかり見てる方ですか?
竹井:私は見てますね。見られてるという意識を持たない方がいいと思っていて、インストア・ライヴはステージを見てないお客さんもいらっしゃるので、その人の動きが気になったり……。
●現段階でのアルバムの聞き所を改めて教えて下さい。
竹井:聴いて口ずさめるようなメロディを基本にしながら、新たな竹井詩織里を感じてもらえるアルバムにしたいと思って作ったので、歌の部分もそうですし、作詞の部分でも楽しんでもらえると思います。
●アルバム制作も終盤を迎えているそうですが、手応えはありますか?
竹井:いい感じになるんじゃないかと思っています。自分でも何度も聴いてます(笑)。
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