倉木麻衣

Mai Kuraki Live Tour 2005
LIKE A FUSE OF LOVE
2005.10.28
at 日本武道館

Live Report


今年9月からスタートした全国ツアー“Mai Kuraki Live Tour 2005 LIKE A FUSE OF LOVE”が、10月28日の日本武道館でファイナルを迎えた。武道館公演2日目となるこの日は、倉木麻衣の23回目のバースデイ。まさにメモリアル・ライヴになる条件が揃った当日の会場は、もちろん超満員だ。客席は倉木と同年代の男女はもちろん、小さな子供と共に参加するお母さんや、仕事を終えて駆け付けたスーツ姿の男性など、幅広い年齢層の観客で埋め尽くされていた。開演前の客席は彼女のステージを心待ちにする観客の熱気が充満しているのが分かる。それもそのはず、彼女のバースデイ・ライヴともなるこの日は、倉木本人には知らされていない、サプライズ企画が用意されていたのだ。入場時にそのサプライズ企画に必要なアイテムを受け取った観客達の間には、既に不思議な連帯感が生まれているような気がした。

19時7分。開演時間を少し過ぎた所で場内が暗転し、いよいよライヴが幕を開ける。観客は一斉に立ち上がり、ゆっくりと入場するサポート・バンドのメンバーに向けて大きな拍手を送った。左右のスクリーンには緑とピンクのカラフルな背景をバックにダンスを踊っている人のシルエットが映し出され、ステージが明るくなると、ドラムが刻むリズムに合わせて観客の手拍子が一層強くなってゆく。そして会場から沸き起こる“Mai-Kコール”に応えるように、倉木麻衣がステージに現れた。

オープニングは「ダンシング」。ロング・ヘア−をなびかせ、白のノースリーブにデニム・パンツというシンプルな姿の彼女は、総立ちの観客に向かって大きく手を振り上げて手拍子を取りながら、ステージを左右に移動。2人のバック・ダンサーを従え、しなやかなダンスと張りのあるヴォ−カルで会場をどんどん自らの音世界に染め上げていく。後に続く「key to my heart」ではステージ上段のスリムなスクリーンに倉木の姿が映し出され、ファンキーなアレンジが施された「Everything's All Right」ではライティングもカラフルに変わるなど、表情が変化するステージに観客は魅了されているのが一目で分かった。

「今日はツアー・ファイナル、武道館に来て下さって、本当にありがとうございます。音楽を通してみんなと一体になる事が出来て本当に感謝しています。今日は思い出に残る日になるよう、心のこもった歌を届けますので、最後まで楽しんでいって下さい!」 感謝の気持ちが詰まったMCを経て、爽やか全開の「P.S2MY SUNSHINE」、スタンド・マイクに手をかけ言葉を噛み締めるように歌う姿が印象的だった「You look at me〜one」、切々と歌い上げる「Don't leave me alone」など、最新アルバム『FUSE OF LOVE』からの楽曲をメインにライヴは進んでいく。

もちろん客席との対話も忘れていない。メンバー紹介を盛り込んだ「Come on! Come on!」の後、再び客席からのMai-Kコールを受けた倉木は、装いを新たに赤のノースリーブで登場。バンドの豪快な演奏に乗せて歌う彼女の歌によって、会場の盛り上がりは確実に頂点に向かって突き進んでいた。そしてライヴの後半は、スローなナンバーが次々と登場。じっくり聴いて欲しいという彼女の問いかけに応じ、着席する観客。真っ暗なステージにすっと降りた一筋の光に照らされた倉木がしっとりと歌う「I sing a song for you」、楽曲の雄大さが十分に伝わってきた「明日へ架ける橋」、美しい花吹雪の映像をバックに歌詞が映し出され、観客の視角と聴覚を更に刺激した「Time after time〜花舞う街で〜」など、じっくりと聴かせる演出が十分に凝らされたステージが展開され、そしてライヴはエンディングに向けて一気に加速していった。

静のステージの後は動。「Delicious Way」の前奏で一斉に立ち上がった観客は、手を左右に大きく振ってリズムを取り、体全体で音楽を感じている。ライト・アップされた客席に向けて歌う倉木の表情は清々しく、彼女自身もライヴを心から楽しんでいる事が伺えた。その盛り上がりは「Love, Day After Tomorrow」で爆発。お馴染みの“L・O・V・E”の手文字も、観客にとってはお手のものである。その光景は、彼女が今まで培ってきたライヴ活動の賜物であり、これからも輝き続けるに違いない。ステージと客席が一体と化した会場はヒート・アップしたまま「Stand Up」、「Feel fine!」でライヴ本編を終えた。

ここからがこの日のもう1つのお楽しみの始まりだった。会場にアンコールの声が響く中、観客は入場時に渡された緑色のサイリウムを次々に光らせ手に持ち始めた。倉木麻衣の誕生日をお祝いすべく、観客とスタッフで彼女を驚かせようという企画だ。この日は特別に倉木にファン代表で花束を渡す人を客席から選出。抽選でアリーナ席にいた親子が選ばれると、会場から自然と拍手が起こった。こうして準備が整った所でいよいよ倉木を迎える事に……。心地良い緊張感と連帯感に会場が包まれる中、白いツアーTシャツに着替えた倉木がステージに現れると、バンドの演奏に合わせて緑のサイリウムが一斉に振られ、 “ HAPPY BITHDAY TO YOU〜♪”という観客の合唱が会場全体に響き渡った。みるみるうちに表情が変わって涙ぐむ倉木の目の前には、ローソクに火が灯された大きなケーキが登場。客席から届けられた“おめでと〜〜う!”という言葉に胸がいっぱいの表情の彼女は「こうしてライヴ会場で誕生日を祝ってもらえて幸せです!」と涙ながらに話した。そして一呼吸おいてからローソクの火を吹き消し、ファン代表からの花束をしっかりと受け取った後、鳴り止まない拍手と歓声に包まれながら、客席に向かって深々と頭を下げた。
「これからも精一杯歌い続けていきたいと思います!」
そう言い放つ彼女を見つめる観客の視線は暖かく、中には感動して目頭を熱くしている人もいた。 そしてアンコールのステージがスタート。緑のサイリウムの光に包まれて「Honey, feeling for me」を幸せそうに歌う彼女の姿は観客の目に焼き付いた事だろう。続けて披露された新曲「Growing of my heart」もしっかり歌い上げ、ライヴは本当のエンディングに向かって進んで行く。客席からの声援が一層大きくなる中、「chance for you」を大合唱した所で、ツアー・ファイナルという事で特別に込み上げてくるものがあったのか、再び涙で声を詰まらせる倉木。観客の歌声に支えられながら最後まで歌いきった時、客席からは大きな拍手が起こった。「always」で完全に客席とステージが一体となった所で、ライヴは終幕へ……。深くお辞儀をしてステージを去った倉木だったが、鳴り止まない拍手に再び登場。感無量といった表情で「来年も全国ツアーをして、まだ行った事のない場所に行って歌を届けたいです」と話すと、マイクを口元から離し、生の声で「ありがとうございました!!」と言って深々と頭を下げた。その後、ツアー・ファイナルに相応しくダブル・アンコールで「Stay by my side」が披露され、武道館は感動と達成感に満ち足りた状態で幕を閉じた。

今回のステージを通じて、日頃彼女が口にしている“心と心のつながりを大切にしたい”という言葉が実際に形になった光景を確認する事が出来た。武道館に集う1万人以上の観客を、自分の歌声で1つにまとめ上げ、音楽の楽しさを一緒に分かち合う事の素晴らしさを伝える倉木麻衣。あの小柄な身体から生まれる計り知れないパワーに、これからも作品とライヴを通じて触れていきたいと思った。(TEXT BY YUKI TACHIBANA)

【SET LIST】
01. ダンシング 02. key to my heart 03. Everything's All Right 04. P.S2MY SUNSHINE 05. You look at me〜one 06. Love, needing 07. Don't leave me alone 08. Come on! Come on! 09. 駆け抜ける稲妻 10. I sing a song for you 11. happy days 12. 明日へ架ける橋 13. Time after time 〜花舞う街で〜 14. Secret of my heart 15. Delicious Way 16. LOVE SICK 17. Love, Day After Tomorrow 18. Stand Up 19. Feel fine!
<ENCORE>01. Honey, feeling for me 02. Growing of my heart 03. chance for you 04. always 05. Stay by my side


倉木麻衣

NEW SINGLE
「Growing of my heart」

2005.11.9 Release


GIZA studio
GZCA-4054 ¥1,260(tax in)