今年は4枚のシングルを発表し、その中の「夢・花火」「今宵エデンの片隅で」「まぼろし」は、7月から3ヶ月連続シングル・リリースという、精力的に作品を発表しているGARNET CROWが、ニュー・アルバム『THE TWILIGHT VALLEY』を10月4日にリリースした。オリジナル・アルバムとしては約2年振りとなる今作は、昨年デビュー5周年を迎え、新たなフィールドに進んでいる彼らの音世界が凝縮された1枚になっている。神秘的な歌詞、バラエティに富んだサウンドは、今まで以上に聴き手の想像力をかき立て、独特な情景を脳裏に映し出させてくれるはずだ。今回はメンバー全員にインタビューを敢行。今作の魅力に迫る。(INTERVIEWED BY EMI MORI)
●オリジナル・アルバムとしては2年振りとなりますが、アルバムの制作準備はいつ頃からされていたのですか?
中村由利(以下中村):去年はデビュー5周年という事もあってベスト・アルバムをリリースしたり、DVD や写真集を出したりという、記念作品の編集作業をしていて、それと並行しながら新譜のレコーディングをしてきたので、それが準備期間という事になるかもしれませんね。そういう意味では、制作期間が長いアルバムですし、去年作った曲から最近作ったものまでたくさん作った曲の中から選んでいるので、良いものが抽出された作品になったと思います。
●今回はシングル曲も多く入っていますが、アルバムとしてまとめる時にアルバム曲とのバランスを考えたりはしましたか?
中村:特別に気を付けたという事はないですけど、ピンとくる曲ばかりを集めました。「籟・来・也」から「夢・花火」くらいに掛けての期間に、今年の秋頃にアルバムを出そうという話が出たのですが、それ以前は1曲1曲に向かって制作していたので、アルバムに対するヴィジョンも具体的にはありませんでした。今年6月ぐらいに「Anywhere」を作った時、アルバムのイメージが出来た気はします。曲順に関しては、「Anywhere」は1曲目で、最後が「WEEKEND」にするというのは最初から決まっていて、後は順番に選んでいった感じです。
●「Anywhere」のどういう所が、アルバムの主軸になると感じたのでしょうか?
中村:シングルでは表現出来ない、自分達の世界観や深さ、微妙なニュアンスみたいなものが強く表れた曲かなと思ったんです。Aメロは静かでBメロで鋭くなって、サビで広がっていくという、自分達の要素がこの1曲に集約されている気がします。この曲が他の曲を引っ張ってくれて、アルバムが成立しているというか……。だから「Anywhere」を1曲目に持って来て、聴き手の人達を自分達の世界に招いて、最後「WEEKEND」を聴き終えて現実の世界に戻ってもらう感じです。
●『THE TWILIGHT VALLEY』というアルバム・タイトルは、どのようにして決まったのですか?
中村:“TWILIGHT”というのは、日が暮れて夜になる瞬間の事なんですけど、その時は影が1番濃くて、1番長くなる時間帯なんですね。昼でもなく夜でもない時間というか、陰でも陽でもない時間という、グレイな部分が自分達の作る音楽の世界の深さみたいなものとリンクする気がしたんです。“TWILIGHT”の時間は一瞬ですけど、とても美しいんですね。自分達の音楽は、ロックやバラードやポップなものを歌ったりしていますが、メロディが綺麗だったり、PVやジャケットにしても常に美しくありたいという思いで作品を作って来ているので、“TWILIGHT”の時間帯が自分達の音楽の世界観にマッチしていると思ったんです。夜から朝になる時間帯にも独特の空気感がありますよね。全て寝静まっている訳でもなく街が動き出す瞬間って、エネルギーがパンパンに詰まってる感じがするんです。今回のアルバムにはそういうエネルギーを1曲1曲に込めて作って来たので、そこも“TWILIGHT”のイメージに通じるものがあると思います。
●今作によってGARNET CROWという存在が、より明確になってきたようにも感じました。
中村:シングルだけでは表現出来ない部分を含めて1つの世界にしていく為にアルバムを作っているので、そういう意味では、自分達の音楽の世界を一1番分かってもらえるのはアルバムだと思います。今回の収録曲はバラエティに富んでいるので、キャッチ−な曲もあれば自分達の音を突き詰めた鋭い曲もあって、バランスの取れた作品になったと思うので、集中力が切れずに最後まで聴いてもらえるんじゃないかと。今回のアルバムは、聴くと絵が見える曲がたくさん入っているなと私達自身も実感しています。もちろんそれは意図してなかったんですけど、これらの曲は前のオリジナル・アルバムから2年という期間内で作られた曲の中から選ばれたものでもあるので、それだけ曲の個性が違うのかなと思います。そういう意味では、初めて私達の曲を聴く人にも分かりやすいと言うか、GARNET CROWの音楽の世界に入ってもらいやすいものになったかもしれません。曲を聴いて、詞を読んで、ジャケットやPVを見て、五感をフルに使って自分達の世界を感じてもらえるアルバムになったと思います。
●今までの作品が、今回のアルバムに繋がっているという意識はありますか?
中村:今までの5年の積み重ねがあったから、今も創作意欲が途切れる事なく続いていると思いますし、ベスト・アルバムを発表した事は大きいかもしれません。ベスト・アルバムを出した事によって、過去の作品が今も十分通用するという事、自分達が今までやってきた音楽が間違ってなかったという事を再確認出来たので、それが新しい自信となって “もっと良い曲を書こう”という気持ちに繋がったと思います。もちろん今までも“良い曲を書きたい”という意欲はありましたけど、ベストで過去を振り返る機会があったので、そこで更に“もっと良いものを作りたい!”という気持ちが高まったと思います。
●制作していく中で苦労した曲や、印象深い曲はありますか?
中村:歌って大変だったのは「Anywhere」ですね。自分のイメージとのギャップで驚いたのは「かくれんぼ」ですし、「春待つ花のように」は去年のプレミアム・ライヴの事が印象に残っていますね。「頼・来・也」は初めてドキュメンタリー番組のイメージ・ソングになって、サウンド・トラックも作らせて頂いたんですけど、その時に自分の声だけでコーラスを入れてアカペラ・ヴァ−ジョンを作ったのも新鮮だったし、映像に合わせた音楽の作り方を学ばせてもらった印象部深い曲です。
●それでは今回のアルバムの中から、皆さんが好きな曲3曲をそれぞれ挙げて下さい。
上原あずみ(以下上原):
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AZUKI 七(以下AZUKI):「向日葵の色」「春待つ花のように」「WEEKEND」ですね。「向日葵の色」は単純に好きなタイプの曲なので選びました。このメロディはGARNET CROWの音と言うより、ゆりっぺ(中村)の曲というイメージが強いですね。「春待つ花のように」は、去年のプレミアム・ライヴの時にやって、ようやくCD化されて聴いてもらえるので、選びました。「WEEKEND」は今までとは違って、女性が作るメロディっぽくなくて、男性的なメロディの所が新鮮でした。
中村:「Anywhere」「Yellow Moon」「かくれんぼ」ですね。「Anywhere」は、デモの時はこんなに難しいものになるとは思ってなかったんですが、歌ってみると難しくて、歌入れにも時間がかかった曲です。でも最後にはきちんと歌い切れて自信が付いたし、「Anywhere」が出来た時にアルバムのイメージが固まったくらいインパクトの強い曲だったので印象に残っています。「Yellow Moon」はサビ始まりの曲で、キャッチ−で耳に残る感じが良いというか。6/8拍子の曲を久々に歌ったので、そういう意味でも新鮮でした。「かくれんぼ」は歌詞を読んだ時に衝撃を受けた曲です。ここまで日本語が全面に出ている歌詞を歌った事がなかったというか……。まさか自分がヴォーカリストとして“鳥居”という言葉を曲に乗せて歌うとは思ってもみなかったので。日本の情景が浮かんでくるような“境内”とか“鬼”という言葉を、自分が作ったメロディに乗せて歌っている事がすごく不思議な感じがしたんです。「夢・花火」よりも更に日本に土着しているものを歌っている感覚がありました。「かくれんぼ」は一昨年に作った曲なんですけど、未だにこの曲を初めて歌った時の衝撃が忘れられないです。
古井弘人(以下古井):「夢・花火」「もうちょっとサガシテみましょう」「頼・来・也」です。「夢・花火」はサウンド面で言うと自分的にはアイディア満載というか、テクニカルな部分で色んなものが盛り込まれている曲になっているんです。平歌から始まってリズムのスピード感やいかにグルーヴを大切にするかをこだわって作っていて、ソロ・パートはフルートの音を入れてとか、最後の部分にはどういう楽器の音を入れようとか、そういう所にもこだわって曲を練り上げたので思い入れがあります。「もうちょっとサガシテみましょう」はデモ・テープで聴いた時にサビの部分がポップで耳に残ったんです。そこでサビのたたみ掛ける所を強調していって、曲全体を元気の良い感じにしていきました。ドラムの音とかも色々組み合わせて作っていった曲ですね。「頼・来・也」は今までのGARNET CROWにはなかったタイプのものというか、個人的にも自分の人生の中でもここまで思い切って作ったものはなかったと思います。まずメロディを聴いた時に独特の世界を感じたので、こういう曲がアルバムに入っていてもいいんじゃないかという事で作り始めた曲だったんですけど、それが巡り合わせでシングルになったという。デモの印象を大切に広げていった曲の中でも“こんな事も出来るんだ”という手応えを感じた曲なので選びました。
岡本仁志(以下岡本):僕は「まぼろし」「今宵エデンの片隅で」「晴れ時計」ですね。「まぼろし」はGARNET CROWにとって初めてのドラマのタイアップ曲という事で嬉しかったです。タイアップが決まった時はどういうドラマなのか知らなくて、スタジオでこういうドラマなんじゃないかとか色々想像してましたね(笑)。楽曲的にはギターが難しかったんですけど、曲の頭を司る部分でもあったので、ちゃんと出来て良かったです。「今宵エデンの片隅で」は一見ストレートなロックで聴きやすいんですけど、すごく個性がぶつかり合ってる曲ですね。あと、ピンポイントで“世界がスパーク”という部分がディレイで飛ばしたりしてるんですけど、ここのハマり具合が最高です! 「晴れ時計」はPV撮影の時の事を思い出します。広い芝生の所で撮影したんですけど、ケータリングのお菓子をカラスがつついていたのがすごく印象に残ってます。いっぱいお菓子を用意してもらったのに、カラスが全部ちょっとずつ食べてしまって、僕達が食べられなかったという……(笑)。この曲のジャケットを見ると思い出しますね。「晴れ時計」や「春待つ花のように」はプレミアム・ライヴでやった時の事が印象に残っています。プレミアム・ライヴは建物も独特で素敵だったんですけど、お客さんの中にもGARNET CROWのライヴを初めて見る人と何度か見た事がある人が同じ会場にいたので、不思議な空間だったなと。
●最後に読者の皆さんに、今回のアルバムについてのコメントをお願いします。
AZUKI:2年振りのオリジナル・アルバムという事で、シングル曲はもちろんアルバム曲もたくさん入った聴き応えのある作品になりました。
中村:今のGARNET CROWがたくさん詰まったアルバムだと思います。今の自分達の世界観がリアルに表れていると思うので、シングルでは表現出来なかった深い部分をこのアルバムで感じてもらえたら嬉しいです。
古井:色んなアプローチが出来たアルバムだと思います。
岡本:今回は色々な楽器を使って作っている、そういう意味でも意欲的に取り組めた作品になったと思います。
※ライナーノーツは本誌をご覧下さい。
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