1stアルバム『Secret Code』の発表から約4ヶ月。上木彩矢のニュー・シングルがリリースされた。タイトルは「眠っていた気持ち 眠っていたココロ」。この言葉を読んで、ドキリとさせられた人も多いのではないだろうか。誰しも心の中に眠ったままのものがある……。それを言い訳にして生きていくのではなく、きちんと向き合って前に進む事が大切なのではないかと。情熱的なロック・サウンドに乗せて歌われるこの歌詞には、そんなメッセージが込められているように思える。今回のシングルについて、彼女に話を聞いてみた。(INTERVIEWED BY EMI MORI)
●1stアルバム『Secret Code』が発表された後の最初のシングルとなりますね。
上木彩矢(以下上木):アルバムから少し期間を空けてのリリースにはなりますが、アルバムが出てからライヴ等があって、その後すぐにこのシングルに取り掛かったという感じです。デモの段階からメロディ・ラインがすごくキレイで印象に残っていました。サウンド的にも勢いのある感じだったので、アレンジもギターをかき鳴らす感じのロックになるとカッコいいなと思ってお願いしました。
●今回の歌詞は、聴く人によっては身につまされる人もいるんじゃないかという内容になっていますが、これは何かテーマがあって書かれたものだったのでしょうか?
上木:自分が見た自分、他人から見た自分って違うと思うんです。そしたら本当の自分は一体どれなんだろうと……。そこにはまだ自分の知らない本当の姿があったりするという事を結び付けた、そんな内容の歌詞にしたいと思って書きました。詞を考えている途中に「NIGHT DEAD」のアニメを見たんですけど “分かる!分かる!”と共感出来る所が多かったので、そこから更に詞のテーマがはっきりしてきた感じがします。人って雰囲気とか喋り方や声のトーンでどういう人なのかというイメージが生まれると思うんですね。でも実際は性格や習慣という、深い部分については他人には分からない所だと思うし、私自身もそこから生まれたズレを感じた事はあります。
●そのズレを解消するために、自分の全部をさらけ出す人とそうでない人がいると思うんですけど、上木さんの場合はどちらのタイプですか?
上木:自分の事を理解してくれると感じた人や、自分の背中を押してくれる仲間とかだったら、自分をさらけ出して分かってもらおうと思うタイプですね。今回の歌詞はどちらかと言うと、自分へのメッセージが強いかもしれません。でも、それを聴いた人達にもリンクするような内容になっていると思います。
●楽曲を作って行く作業は、順調でしたか?
上木:今回は楽しく出来た感じです。曲のテンポ感も好きだったので歌入れも早かったし、言葉に気を付けて歌詞をはめていったので、スムーズに進みました。一番最初は1コーラスだけ歌う予定だったのですが、歌ってたら気持ち良くなっちゃって一気に最後まで歌っちゃったんですよ。そしたらブレスする箇所が極端に少ない事が分かって、そこは計算ミスでした(笑)。でも歌い切った後は“よっしゃ!”みたいな爽快感はありましたね。
●ライヴで歌うと大変な事になりそうですね。
上木:歌って行くうちに少し苦しいような声になった方が、よりリアルな感じがしていいかもしれません(笑)
●アルバム後のシングルという事で、気持ちの切り替えが出ていたりするのでしょうか?
上木:もしかしたら、この曲はインディーズの頃のロック・サウンドっぽいものになっているかもしれません。自分自身が今までに何をやってきて、どんなサウンドが好きだったかという事を考えた時、こういう、ギターが激しく鳴っているものが好きというのがあったので、そういう部分を出したものになっていると思います。もちろん、過去を振り返るだけじゃ面白くないので、ただギターが鳴っているというよりは、その中にキラキラしたものが聴こえたりする、自分の中での新しいロックにはなっていると思います。
●コーラスが入っている所も、そういうキラキラした部分に繋がっていますよね。
上木:これは歌入れした後に、ここにコーラスがあったらいいなと思って後で入れました。なのでしっくりきていると思います。
●「約束の場所で」は「眠っていた気持ち 眠っていたココロ」とは違った、テンポがゆったりした曲になっていますね。
上木:私自身、対照的なものが好きなので、今回もタイプの違う曲を選んだという感じです。この曲は秋をイメージして作ったものになっています。秋と言っても短い期間になってしまうんですけど、その時期に聴ける曲を意識してますね。「眠っていた気持ち 眠っていたココロ」が激しい感じの曲調だったので、カップリングはミディアム・チューンの少しおとなしめな感じの曲がいいなと思って、選曲の段階からそこは意識していました。この曲を聴いた時、夏が終わった後の寂しさみたいなものを感じて、それが秋っぽさに繋がっている気がしたので。
●歌詞にも秋の雰囲気が伝わってくる言葉が入っていますね。
上木:秋に対するイメージが、切ないというか、別れみたいなものだったので、歌詞も“届かない想い”みたいなものを中心に書いています。この歌詞は恋愛の話なんですけど、2人でいて習慣化されていたものがなくなって、急に寂しくなった感じというか……。秋はすごく寂しく感じてしまう季節なので、私は苦手なんです(笑)。夏に青々と茂っていた木が、秋を迎えると枯れ葉になって落ちてるのとかを見ると、すごく切なくなってしまうんですよね。そういう景色も思い浮かべながら書きました。
●歌詞を書いている時に、気持ちが引っ張られて暗くなってしまったりはしませんでしたか?
上木:少しどんよりしてしまった事もありました(笑)。でも最近、歌詞の書き方を変えた事もあって、すごくスムーズに書けるようになったんです。今までは煮詰まって、追い込まれて言葉を絞り出すという感じだったんですけど、今は思い浮かんだ言葉を、その時々にノートに書き溜めるようにしているので、心にゆとりが出来たかもしれません。
●この歌詞も、そのノートにあったキーワードから生まれたんですか?
上木:そうですね。言葉からイメージを膨らませて、歌詞を書く感じです。それで出来たものを組み合わせながら作っていっています。私の場合、夜に歌詞が思い浮かぶ事が多いんですね。だからそのノートは枕の下に入れておくようにしてます。
●歌詞の中の“カワラナイオモイ”“トドカナイネガイ”というカタカナの言葉がすごく印象的だったのですが。
上木:漢字で書くと綺麗におさまり過ぎてる気がしたんです。私が言葉を走り書きしたりする時、カタカナで書くんですよ。ひらがなだと読み辛い気がするし……。“カワラナイオモイ”“トドカナイネガイ”という言葉は、自分の中でも伝えたいフレーズだったので、カタカナにしてみました。
●レコーディングの時も、歌の世界に入りこんで歌っていく感じだったのでしょうか?
上木:実はこの曲、歌入れが大変でした。何度も歌って、レコーディングの終盤でやっと曲の雰囲気がつかめた感じだったので、気持ちを込めて歌えるようになるまで苦労しましたね。最初は曲に馴染めないままで歌っていたんですけど、何度か歌っていくうちにしっくりくるようになってきたんです。その時に最初から歌い直したいと思っていたら、ディレクターをはじめ、エンジニアの方もそう思っていたみたいで、意見が一致したという……。本当に“歌”って生ものだなと思いました。
●「KERA」のイベントではモデルとして出演されていましたが、イベントに参加してみてどうでしたか?
上木:ファッション・モデルとして人前に出るという事で、すごく緊張しました。ライヴやテレビで歌ったりする事はそんなに緊張しないんですけど、違うフィールドに立つ事がこんなに緊張するんだという事を思い知らされましたね。本当に心臓が口から出そうになるかと思いましたもん(笑)。イベントの最後に出演するという事もあって、余計に緊張したというか……。自分の人生の中でモデルとしてステージに立つなんて思ってもみなかったので、今回は貴重な体験をさせて頂きました。
●シングルがリリースされた後、待望のワンマン・ライヴがありますね。チケットも既にソールド・アウトという事ですが、どんなライヴにしたいと思っていますか?(10月下旬に取材)
上木:自分のワンマン・ライヴというものに対して、現時点ではまだイメージが浮かばないんですけど、とにかく純粋に音楽を楽しみたいです。見に来てくれるみなさんに向かって、ステージで私が歌える事を噛み締めたいと思いますね。ワンマンという事で、来て下さる方も、私自身もお互いに緊張すると思うんです。そんな中で、私はステージから“今までこんな歌を歌ってきました”“こんな歌詞を書いてます”というようなお披露目っぽい感じでライヴをやれたらなって……。お互いに恥ずかしいかもしれないですけど(笑)、お客さんにもそんな私を見てもらえたら嬉しいです。そして、日頃のうっぷんを11月6日と22日で晴らしてもらえたらいいなと思います。
●お客さんと上木さんとのエール交換みたいな感じがしますね。
上木:いつも応援してくれているみんなからエネルギーをもらっているので、今度は私が返す番です。
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