2006年7月2日の奄美文化センターからスタートしたライヴ・ツアー「B'z LIVE-GYM 2006“MONSTER'S GARAGE”」。最新アルバム『MONSTER』を引っ提げて行われたこのツアーは、ホールから5大ドーム公演を経て、2006年の夏を一気に駆け抜けた。観客に圧倒的なロック・スピリットを見せつけたB'zの壮大なステージが、全曲完全収録のライヴ映像とツアー・ドキュメンタリーで甦る。12月20日にDVDとして発売される今作の内容を紹介。(TEXT BY AKIRA OZAWA)
【LIVE DISC】は2枚組。約120分に渡る映像の中には、ライヴで披露された全楽曲が収められている。開演前の客席の様子は全景映像で綴られ、黒い骨組みがむき出しになったステージ・セット、両サイドに長く伸びたランウェイも確認出来る。既に熱気が漲った会場は、オープニングのアニメ映像が始まった瞬間から、ステージにサポート・メンバー(増田隆宣[key]、Shane Gaalaas[Dr]、徳永暁人[B/from doa]、大田紳一郎[G/from doa]が登場した時、そして、B'zが現れた時に一気に爆発! 会場を揺るがす歓声の大きさに圧倒される人もいるはずだ。また、舞台袖から撮影したメンバーが入場する映像が見られるのも嬉しい。
ライヴ映像は、実際に会場の巨大モニターに映し出されたものとは違うアングルから撮影したものが多く収められており、オープニング・ナンバーである「ALL-OUT ATTACK」では、気迫に満ちた稲葉の表情はもちろん、滑らかなギター・プレイを披露する松本、そして増田、大田、徳永らが演奏している手元のアップからバスドラを叩くShaneの足元まで、ピンポイントのカットが差し込まれているので、ライヴの臨場感がダイレクトに伝わってくる。カメラの設置台数が多い事(東京ドーム公演は30台のカメラで撮影)で収録可能となったショットもあり、「juice」では客席から見たステージ、スタンド席からの景色、そしてメンバーから見た客席の映像が登場する等、様々なアングルから楽しむ事が出来る。観客がリズムに合わせてジャンプする様子は圧巻だ。
今回のライヴは美しいライティングも見所の1つ。ステージが真っ赤なライトで照らし出された「ピエロ」やダーク・ブルーの照明の中でじっくりと披露された「ゆるぎないものひとつ」なども、会場で見ているのと同じ感覚で見る事が出来るので、そちらも是非チェックして欲しい。
常夏な雰囲気を味わえる「恋のサマーセッション」や「MVP」は、ステージに登場したダンサーと共に踊りながら楽しむナンバー。特に「MVP」の振り付けのあるダンスは、ステージ上のメンバーの動きもしっかり見られるようになっているので、こちらも楽しみな1コマと言えよう。
ライヴ中盤で披露された松本のギター・ソロでは、ブルージーな雰囲気としっとりとしたライティングが見事にマッチしていて、オーディエンスの熱い視線が注がれているのが分かる。そこに衣装チェンジした稲葉が現れ「雨だれぶるーず」を披露する流れも、張り詰めた緊張感とアダルトな香りが相俟ったステージになっていた。
そして今回のツアーにおけるサプライズ的な演出とも言える、アリーナ後方に設置された円形のセンター・ステージでの演奏。メイン・ステージから歩いて移動するシーンは、ライヴ時には細かく見られなかったメンバーの姿はもちろん、彼らが歩いて行くルート付近のオーディエンスの歓喜に満ちた様子もしっかり確認する事が出来る。そこで披露されたアコースティック・ヴァージョンの「Happy Birthday」は会場全体を一瞬にして和やかな雰囲気にさせ、客席とメンバーの心の距離をぐっと縮めた。その後の「Brotherhood」では、イントロが鳴った瞬間から突き動かされるようにオーディエンスがステージに向かって拳を振り上げ、全景映像を通して圧倒的な存在感を放っている事も分かる。
ライヴ後半の壮大なスケールで展開されるナンバーの映像美も見逃せない。まるで大海原を目の前にしているかの様な、壮大なブルーライトに包まれて披露された「OCEAN」、そして、雷鳴の様に轟く破壊力を持ったサウンドで襲い掛かった「MONSTER」。ステージにこつ然と現れた高さ13メートル、幅20メートルにも及ぶ巨大なMONSTERは圧倒的な存在感を放ち、そのパワーは映像を通しても十分伝わってくる。ステージ上に立ち上がる20本もの火柱が、会場の域を超えた空間にオーディエンスをトリップさせていく。その興奮は「衝動」に繋がり、「愛のバクダン」でMONSTERが蝶に姿を変えた事でステージに艶やかさが加わり、続く、「LOVE PHANTOM」や「SPLASH!」で展開されたステージは、メンバーが左右に駆け出してオーディエンスの声援に応え、まるで熱気のキャッチ・ボールをしているかの様だ。
アンコールは、「ギリギリchop」でオーディエンスがツアー・タオルを振り回す壮観な光景、そしてラストの「RUN」で稲葉がアリーナを1周するシーンなど、印象的なものばかり。ドームでありながらステージとの距離感をあまり感じなかったのは、オーディエンスとB'zが音楽でしっかりと繋がっている事が映像を通して確認出来たからかもしれない。様々な客席の位置から見えるステージが映し出される事で、見る側の視点がリアルに伝わり、それが新たな共感を生むような気がした。進化し続けるB'zサウンドとエンターテイメント性、そしてそれを受け止めて心から楽しむオーディエンス。最高のキャストが揃ったライヴ映像が収められた作品だ。
【DOCUMENT DISC】には、「OFF LIMITS〜HOW TO MEN CREATED AMONSTER〜」と題した、メンバー、ツアー制作スタッフのインタビューをベースに、“OFF LIMITS=立入禁止”の領域にカメラが踏み込んだツアー・ドキュメンタリーを収録。B'z LIVE-GYM 2006“MONSTER'S GARAGE”は、これまでのコンサート・スタッフを一新し、松本孝弘、稲葉浩志を含めてゼロから構築した“LIVE-GYM”という事が、このドキュメンタリーを通して知る事が出来る。ステージに登場した巨大MONSTERの制作風景や、ステージ・デザイナーであるマーク・フィッシャー(U2、ピンク・フロイド、ザ・ローリングストーンズなどのステージも担当)のコメントに加え、ステージ・プロデューサーやダンス・インストラクター、ライティング・スタッフなど、ツアーを支える大勢の人々の“LIVE-GYM”に対する想いに触れる事が出来る貴重な映像に仕上がっている。このドキュメンタリーを見れば、1つのものを創り上げていく事の意義、そして、そこで生まれる大きなパワーが“LIVE-GYM”の原動力になっている事を改めて実感させられるだろう。
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