2006年はシングルの発表はもちろん、オリジナル・アルバムとしては約2年振りとなる『THE TWILIGHT VALLEY』をリリースし、新たな音の世界を広げたGARNET CROW。そんな彼らが2007年最初にリリースする作品は、両A面シングル「風とRAINBOW / この手を伸ばせば」。この2曲は昨年行われたライヴ・ツアー“GARNET CROW livescope 2006 〜THE TWILIGHT VALLEY〜”でいち早く披露され、ファンの間でも話題になっていた楽曲だ。ラテン・テイストが漂うロック・サウンドと無機質な言葉が綴られた歌詞が印象的な「風とRAINBOW」、ストリングスやピアノの音色に乗せて歌われる歌詞が旅立ちを彷佛させる「この手を伸ばせば」という異なるタイプのナンバーで構成されている。今回本誌は昨年のライヴの事を始め、このニュー・シングルについて、作曲とヴォーカルを担当する中村由利に話を聞いてみた。(INTERVIEWED BY EMI MORI)
●まずは去年行われたライヴ・ツアー“GARNET CROW livescope 2006 〜THE TWILIGHT VALLEY〜”についてお伺いしたいと思います。オリジナル・アルバムを引っ提げてのライヴは久々だった訳ですが、終えてみて何か思う事はありますか?
中村由利(以下中村):今回のライヴはセット・リストを変えたり、ストリングスを入れた編成でやってみたりと、今までとはガラっと変えたものにしたので、その事に対して皆さんがどういう反応するのか不安な面もあったんですけど、やってみると本当に楽しくて、成功したので良かったと思っています。今回は自分達が1番やりたい形のライヴが実現出来たので、嬉しかったですね。
●ライヴの構成を考える時、テーマに掲げていた事はあったのでしょうか?
中村:5枚目のアルバム『THE TWILIGHT VALLEY』が、自分達の中でかなり手応えの大きい作品だったので、そのアルバムの曲を聴いてもらいたいという事から考えていきました。GARNET CROWは今年で7年目を迎えますけど、それまでに大体1年に1回のペースでライヴ・ツアーをやってきたので、段々とどの曲でどういう反応が返ってくるか分かるようになってきた所もあって……。そこで先が予測出来るライヴはつまらないなと思ったんです。イントロを聴いた時に“この曲は何だろう……ああ、この曲か!?”というドキドキ感があるのもライヴの醍醐味だと思ったので、先が見えないものにしようというのはありました。だからいつもだと“これをやったら盛り上がる”というような曲は選曲から外して、新たな構成を考えて行きました。同じ曲を何度もやるより、もっと自分達の色々な曲を聴いて欲しいというのがあったので、セット・リストをガラっと変えました。今までは自分達が歌ったり演奏したりする事で精一杯だったんですけど、5年、6年と活動を積み重ねてきた事で、“見せる”という事に気を遣える余裕が出て来たんだと思います。だから“見て楽しむ”という事を考えて、衣装やセット、照明や演出に関しても今までとは違うものにしようとこだわりました。
●ステージから客席の様子は感じる事は出来ましたか?
中村:客席はちゃんと見えました。イントロが流れると隣の人に“あの曲だよね”みたいに耳打ちしてる人や、“この曲、分かった!”みたいな感じで驚いてる人もいたりしたので、そういう表情が見られたのは楽しかったですね。先が読めない感じを楽しんでもらえたんじゃないかと思います。
●このライヴで今回のシングル「風とRAINBOW /この手を伸ばせば」が初披露されましたが、その時はどうでしたか?
中村:自分達の事で精一杯な所はありました。「風とRAINBOW」はお客さんと対話していく流れで紹介して歌う感じだったので、勢いに乗って披露出来たのは良かったと思います。
●アンコールで「この手を伸ばせば」を披露された時、すごく真剣に曲に耳を傾けているお客さんが多くいらっしゃって、そこから緊張感が伝わって来ました。
中村:すごく嬉しいですね。気持ち的に前のめりになって、一字一句逃さないように真剣に聴こうとして下さる姿勢は、ステージで歌っていてもすごく伝わってくるので、ちゃんと聴いてくれいてるんだという実感がありました。「風とRAINBOW」の時もタイトル・コールをした時に客席から拍手が聞こえてきたのが分かったので、聴いてくれる方々の真摯な気持ちが伝わってきて嬉しかったですね。
●「風とRAINBOW」はアルバムを経て生まれた曲との事ですが、どういうイメージで作られたのでしょうか?
中村:ちょっと力強いものというか、骨太なサウンドをやってみたいというのがあって、作っていった感じです。あと、ラテン・テイストというのも、前のアルバムから引き継いで来た流れだったりするんですけど、そこから更にもう一歩踏み込んでロック・サウンドになっていったというか……。ラテンの持つグルーヴィなリズムやノリの良さを残しつつ、サウンド的なものはロック寄りにしていきました。
●アレンジをお願いする時、古井さんには何かリクエストされたんですか?
中村:とにかく“ロック”と伝えました(笑)。それで出来上がったものを聴いた時、思った以上にカッコ良くなっていたので、これはかなりイケると思いました。男性的なサウンドだし、歌詞も無機質な感じがするので、ピッタリだと。
●AZUKIさんの歌詞を読んだ時、印象的な箇所はありましたか?
中村:このメロディにこの言葉が乗るのか……という、自分の中にはなかった譜割りがあったりはしましたね。デモの段階でのメロディのワン・フレーズの区切りと、歌詞が出来上がって詞はめをしていった中でのワン・フレーズの区切りが微妙に違ったりとかしていたので、そういう所は面白いなと思いましたね。最初の方に出てくる“ボディ”とか“メタルハート”という言葉とかはそうですね。自分のデモの段階では、ここまで強調されていなかったのですが、こういう言葉が入った事で、よりメロディが浮き上がってきたので、そこは面白いなって。
● 「風とRAINBOW」というタイトルもインパクトがありますよね。
中村:この“RAINBOW”はカタカナじゃなくて、英語の大文字表記が一番カッコ良いと、AZUKIさんが言っていました(笑)。色々な表記で試したらしいんですけど、英語の大文字表記が一番しっくりきたんだそうです。
●“風”も“RAINBOW”も実際に掴む事が出来ないものだったりしますが、中村さんは虹に対してどんなイメージを持っていますか?
中村:今までは虹に対してメルヘンチックなイメージを持っていたんですけど、この曲の歌詞を読んでからイメージが変わりました。今までは乙女心みたいなものの延長線上にあるものだったんですけど、今はカッコ良いものに感じますね。この曲を聴いて“七色の虹”は思い浮かばないですよね(笑)? ここでのイメージは少し冷たくて掴めないものというか、無機質な感じがします。
●「風とRAINBOW」の歌詞の中で、中村さんが気に入っている箇所はありますか?
中村:最初の“陽だまり横たわる魅力的なそのボディ”という部分ですね。去年のライヴの東京公演ではやったんですよね、“ボディ”の所でポーズを……(笑)。ポーズをしなきゃと思うくらい、強い印象を受けました。最初からドキドキしますよね。GARNET CROWの曲の中では攻撃的であり、挑発的な曲だと思います。
●「この手を伸ばせば」は「風とRAINBOW」とは違ったタイプの曲ですね。
中村:これは去年のうちに大体出来上がっていて、そこに辿り着くまでに何度かメロディを直したり煮詰めて行く作業がありました。それで今の形になったんですけど、小細工をせず本当にストレートに出したというか……。メロディの良さ、歌詞のフレーズや自分の声を大切にして作りました。
●この曲にあるスケール感は、最初からあったんですか?
中村:そうですね。それは作る時から壮大なバラードにしたい、という思いはありました。その辺はアレンジをしてからも引き継いでいると思います。
●歌詞の中で中村さんが印象深い所はありますか?
中村:“人はただ明日を信じながら歩いてゆけるものなんでしょう”“君はもう あしたを その瞳にみてるんだね”というフレーズの部分が好きですね。実は今年がGARNET CROWにとって本当の意味でスタートなのかなと思っているんです。昨年は自分達の心の中で一昨年の5周年の勢いを引きずりつつ進んできたと思っているので、今年は気持ちの上で1周した感じがして、2巡目に入るというような気持ちが去年より強いんです。そういった意味では“明日を向いて行こう”とか“前進しよう”とする気持ちが歌詞ともリンクしているので、今の自分達の思いというか今年のGARNET CROWを表した曲になったんじゃないかなと思います。しかもそれを今年最初のシングルとして発表出来るのは、良かったです。
●ライヴで披露されていた時も1つ1つの言葉を噛み締めるように歌っていた姿が印象的だったのですが、レコーディングの時もそういった感じだったのでしょうか?
中村:そうですね。この曲の歌詞は1つ1つの言葉が聞き取りやすくなっていると思うので、その辺を大切にしながら歌いました。ストレートに伝わるものの良さみたいなものがあると思ったので、敢えて変わった事をするとか新しいチャレンジなどは抜きにして、メロディの良さをそのまま歌に乗せて作ったという感じです。
●「廻り道」は始めに出来た時の曲の感じから随分変わって今のものになったと伺いましたが、最初はどんな曲だったのですか?
中村:もともとはオール・バラードで作っていたんですけど、テンポを上げたらどうなるかなと思ってそうしていったら、テンポ・アップした方がよりドラマティックでカッコ良くなったので、今の形になりました。色々試しながら作っていった曲で、イントロも古井さんに何パターンか作って頂いたりして“こうした方がいい。ああした方がいい”というような感じでやり取りしていって、歌が始まる前のイントロ部分のフレーズも結構作り込みました。今回の3曲の中では、一番時間が掛っているかもしれません。アルバム『THE TWILIGHT VALLEY』制作の時に収録曲候補の1曲になっていました。今の形になるまでに時間がかかった分、愛着も湧きますし、自分達が良いと思う形のサウンドになっているので、自信を持って皆さんにお薦め出来る曲です。
●歌詞も情景が浮かぶような内容になっていますが、中村さんは歌詞を読まれた時、どういうものをイメージしましたか?
中村:“朱焼け”という言葉が『THE TWILIGHT VALLEY』の世界を踏まえつつ、7年目の自分達が進んでいる部分が表れている曲になったと思います。“朱焼け”から空が広がって行く印象を受けたし、清々しい感じもしたので、レコーディングの時は透明感のある声や突き抜けた感じを出したいと思いながら歌いました。
●このシングルをリリースする事で2007年のGARNET CROWの音楽活動がより活発になっていくと思いますが、今年は大切な1年になると……。
中村:そうですね。先程も言いましたけど、ひと回りして2巡目に入る感じでいますし、そういった意味ではゼロからスタートするような清々しい気持ちです。去年は5周年の流れを引きずったまま色々とやっていたんですけど、今年に入ってからはそういう重荷みたいなものが、良い意味で取れた状態です。今までは自分達が積み重ねてきたものである程度のカラーも出来上がって、その中で自分達が出来る事を探していた所があったんですけど、今年はそこから次のペ−ジに進んで真っ白いノートで出発したような清々しい感じですね。去年よりも今年の方が初心に返りながらも、1つステップ・アップ出来た手応えはあります。そこからもっと良い曲を作って行こうという意欲も湧いてきたし、もちろん今年もアルバムを出したいと考えているので、楽しみですね。
●ライヴの時にもおっしゃっていましたが、7年目にちなんで、“7”にまつわる色々な企画が行われるそうですね。
中村:最初はシャレで“こういう企画が出来たらいいよね”くらいに思ってたんですけど、いざ言ってみたらスタッフの方がすごく協力して下さっているので、今はすごく盛り上がってます! もともと考える事は好きなので、音楽制作以外の部分でもこうやって色々考えるのも楽しいです。ファンの皆さんに喜んでもらえる企画をやっていきたいですし、作品と同じく楽しみにしてもらいたいですね。
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