2007年上半期が経過し、GARNET CROWの音楽活動はますます活発化している。2月に初の両A面シングル「風とRAINBOW/この手を伸ばせば」を発表、6月27日にLIVE DVD「GARNET CROW LIVESCOPE OF THE TWILIGHT VALLEY」を発売。そして7月4日にリリースされたのが、ニュー・シングル「涙のイエスタデー」だ。この曲はGARNET CROWにとって通算100曲目となるナンバー。夏を意識した爽快なサウンドに乗せて歌う、切ないラヴ・ソングになっている。その他にもGARNET CROWの持つ荘厳な世界が反映された「Go For It」、こだわりのアレンジが聴き所の「一番素敵だった日」と、色彩豊かな楽曲も収録。デビュー7年で彼らが輩出してきた楽曲数を通して、GARNET CROWの音楽世界がしっかりと築き上げられている事を改めて感じる作品となった。今作について、詳しい話を作曲&ヴォーカルの中村由利に聞いてみた。(INTERVIEWED BY EMI MORI)
●この曲でGARNET CROWとして通算100曲目を迎えられましたが、それは以前から分かっていた事だったんでしょうか?
中村由利(以下中村):以前、“ところで今、何曲目位だろう……?”という話になった事があって、その時は80曲台前半位で“ふ〜ん”みたいな感じだったんです。その後少し経って聞いた時は“今、96曲目ですね”という事で、「風とRAINBOW / この手を伸ばせば」をリリースした後に“次のシングルで100曲目です!”という話になって、“えっ!マジで!!”という感じでみんなちょっと興奮気味になりました(笑)。だからたまたま100曲目がシングルになったので、調整した訳ではないですね。これは本当に良かったと思います。カップリング曲で100曲目だと、ちょっと切ないですもんね。
●次の曲で100曲目になるという事が分かった後、そういった事を意識して選曲されたのですか?
中村:いえ。この曲に関しては年明けに原型になるデモが出来ていて、それはバラード曲だったんですけど、その時にアニメのオープニングで使用されるという事が決まって、オープニングなのでアップ・テンポなものにして欲しいというお話もあり、テンポを変えて何十テイクもやり直したんです。アレンジも歌詞も歌も10テイク以上ヴァ−ジョン違いがあって、やっとこの形になりました。その時にはリリースも夏頃になるという事が決まって、100曲目という事も分かっていたんですけど、この曲がすごくポップな感じで、ダークで陰のあるという自分達のイメージとは相反するポップでキャッチ−なサマー・チューンというか、夏に踊れそうなナンバーというのが、自分達らしくはないけど、それを100曲目の作品としてリリースするというひねくれ具合が、GARNET CROWらしいなとは思います(笑)。
●最初のデモとはどの位変わっているんですか?
中村:コードは変わっていませんが、テンポも変えましたし、歌詞やアレンジが変わる事でメロディもちょっと変えました。あとは最後の部分も付け足したりして……。なのでそれぞれのテイクが何十パターンもありますね。それを通してピッタリなものが出来上がったという感じですね。
●という事は、曲の色合いも変わったと。
中村:最初は普通のビートだったんです。それが4つ打ちのリズムになった途端、ハッピーでのれる夏のナンバーに変わった気がします。そこでこの曲の世界が膨らんだというのはありますね。
●もともとこの曲を作った時は、何かをイメージされていたんですか?
中村:この曲は「風とRAINBOW」を作っていた頃と時期が重なっていて、作り始めた時が冬だった事もあったのか、温かくて、壮大なバラードだったんです。それが段々テンポ・アップしていったという……。そうしていくうちに“これでもいけるな”と思って、サビのメロディを少し直したり、Dメロを付け加えたりという作業をしていきました。それで出来上がってみると、こっちの方が良かったなと思いました。しかもシングルでここまでキャッチーさを求めたものというのは、今まであまりないので、この曲で新しい自分達のスタイルを聴いてもらえるかなと。しかも7周年目の100曲目で、この曲を出せるという事で注目してもらえる1曲になったのは良かったと思います。そこには去年のライヴでこだわった“魅せる”というものにも通じているのかもしれません。バラードやダークな楽曲もGARNET CROWぽくて良いけど、こういったGARNET CROWも見せられるという所を打ち出せた曲になったと思います。リリース時期も夏なので、この曲で夏を感じて欲しいです。
●サウンドは爽快な感じですが、歌詞は少し切ないものになっていますね。
中村:そうですね。“おセンチ”という言葉の表現が似合う感じだと思います。
●歌詞の内容も変わったとの事ですが……。
中村:色々なタイプがあって、全然違うものだったんですけど、最終的にはこの形に収まりました。
●今までにそこまで変わった曲はなかったのでは?
中村:全くなかったという訳ではないですが、ここ1〜2年位はなかったですね。どんどん夏向きに変わっていきました。夏でポップで明るいんだけど、ちょっとおセンチな曲です。
●「涙のイエスタデー」というタイトルも印象的ですね。
中村:ビートルズっぽくていいでしょ(笑)? “イエスタデー”と言えばビートルズでしょうという事で、ジャケットもアナログ盤を意識した様なデザインにしているので、そこに注目してもらいたいですね。CDの盤もレコードみたいになっていて、表面にはちゃんと溝も付いてるんですよ。見た目もレコードな感じなので、裏返して再生しない様に……(笑)。
●見た目の部分でも楽しめる様になっているんですね。
中村:今回はそういうものもアリかなって。今年が7周年というアニバーサリー・イヤーで進んでいて、しかも100曲目という事で、お祝いの気持ちを込めてそういう遊び心溢れるジャケットがあってもいいんじゃないかと。
●最初から“涙のイエスタデー”という言葉はあったんですか?
中村:最初はなくて、歌詞が色々変わっていく中で出て来た言葉だったんです。そういう意味でも聴き所もあり、ジャケットでも見所があるので、すごく楽しめる作品だと思います。ビートルズの邦盤のレコードを持ってる人は、見比べてもらえたりすると“ここまで同じ様な感じにしてるんだ……”と思えるかもしれませんね。
●ちなみにPVはどんな感じになっているんでしょう?
中村:PVも遊び心満載ですよ。とは言っても好き勝手に遊んでいる訳じゃなくて、お祝ムードを高めようという感じです。スタッフもみんな楽しんで作品を作ってくれて、みんなのお祝いの気持ちが入った遊び心の詰まった作品になりました。
●1曲がこれだけ盛り沢山だと、1枚のシングルにまとめる時の選曲もこだわったのでは?
中村:選曲は少し迷いました。でも2曲目の「Go For It」は、わりと早く決まりましたね。初期のGARNET CROWの匂いも感じさせつつ、ダークでヘヴィな曲として自分達の音楽らしいものをという事で選びました。3曲目をどうしようかと考えた時に、「涙のイエスタデー」が暑い夏な感じだったので、少し爽やかな夏っぽいものがいいかなと思って「一番素敵だった日」を選びました。そこでこの曲を3曲目にすると決まった時に、古井さんがイントロとアウトロのアレンジを変えて、3曲目に入る仕様にしたんです。アウトロはフェイド・アウトして1曲目の「涙のイエスタデー」に繋がるようになっています。「一番素敵だった日」は、このポジションに収録される事になったからこそ、このアレンジになったという、貴重な曲です。
●アルバム収録曲ではそういったアレンジがあったりしますけど、シングルでというのはあまりないですよね。
中村:私達もシングルというより、ミニ・アルバムを作っている様な感覚なので、曲の繋がりを大切にするという意味で、練りに練ってこの形になったという感じです。ちなみに3曲目は古井さんがお気に入りだそうです。私は2曲目も好きなんですけどね(笑)。
●何故好きなんですか?
中村:もともとダークな曲が好きというのもあって、ダークで強いものにひかれたというか……。サビの部分も強いし、Aメロの艶っぽい感じや響きも気に入っていて、そこを聴いてもらえると嬉しいですね。
●「Go For It」は歌詞も力強い感じが伝わってくるものになっているのですが、中村さんが読まれた時はどう思いましたか?
中村:すごく言葉が強くて、自分への応援歌の様に聴こえました。実は今年に入ってすぐ、少し喉を痛めて思う様に歌えない時期があって、それが自分の中でストレスになっていたんです。その時に歌っても、納得出来ない部分があったり、上手くレコーディングが進まなかったりした事があって、少し落ち込んでいた時にこの歌詞の“まだ 立ち上がれるでしょう”という部分が、自分を奮い立たせてくれる様に思えたんですよね。その他にも“敵は我が身の内”という部分も、声が出なくて葛藤しているのも自分自身と戦っているから、そことすごくリンクして、自分の応援歌みたいに聴こえて歌ってました。
●“自分の力で切り開け”という様なメッセージはありますよね。
中村:そうですね。“その命の限り 下ろせHummer”という部分とかも、自分の置かれている状況と重なった事もあって、“まだ行けるよ”と言ってもらえている様な気がして励まされました。
●レコーディングはスムーズに進みましたか?
中村:特に引っ掛かる所もなく歌えたし、逆に歌い切れた事で自信にもなりました。そういう意味で思い入れが強いので、好きな曲になったんだと思います。
●3曲目の「一番素敵だった日」は前からあったものだったんですか?
中村:これは去年の7月にはありましたね。そこから少しアレンジを変えていった感じです。それで今回3曲目に収められるという事で、更にイントロとアウトロを変えてという様に、3段階で変わっていった曲です。
●アレンジが変わったものを聴いた時はどう思いましたか?
中村:“カッコいい”と思いましたね。イントロのフレーズが印象に残っていて、水面のようにキラキラしてるのが夏っぽいなと。「涙のイエスタデー」とは違う夏っぽさが表現出来て、夏にリリースする為の3曲が収まったなと思いました。
●歌詞に関しては、中村さんはこういう内容のものになるとは予想していましたか?
中村:思っていなかったですね。AZUKIさんが言っていたのは、希望と破滅が重なった時、アドレナリンがドッと出ている感じがするという……。
●歌詞の中の主人公が前向きなのか、もういいやと思っているのかが分からないというのは、まさにそういう事なんですね。歌っている時はそういう事は思っていましたか?
中村:そういう事は全然思っていなくて、後からAZUKIさんから聞いてビックリしました。割とへヴィだったんだなって……(笑)。サウンドに乗せて歌っていると、そこまでヘヴィには感じないんですね。後でそういう風に聞いて歌詞だけ読むと、ヘヴィだなと思いました。そういう意味では、曲調の明るさと歌詞の重さのバランスは取れていたのかもしれません。
●今までの曲にも曲と歌詞のバランスを楽しむタイプのものはあったと思いますが、その中でもギャップが激しい部類に入りますよね。
中村:ギャップはかなりあると思います。でも何も考えずにサラッと聴ける曲でもあるんですよね。でも歌詞を深く読もうとすると、どこまでも深く読み進めるという……。これも聴いて楽しめて、歌詞を読んで楽しめる1曲です。3曲目の歌詞はGARNET CROWの世界観が好きな人にとってはたまらないのではないでしょうか(笑)。
●タイトルに因んで1つ質問させて頂きたいんですが、中村さんが今まで過ごして来た日々の中で“一番素敵だった日”というのはどんなものですか?
中村:沢山ありますね。ライヴで初めてステージに立った日とか、旅行に行った日とか、最近だと美味しくパンが焼けた日とか……(笑)。そんな中でもすごいと思ったのは、やっぱりライヴかな。日常生活の中では体験出来ない事だし、あの空気感はステージに立たないと分からないものだったりするので、あれはすごいなと思いますね。あとは野外でライヴをした時も、日が落ちて暗くなっていく中で歌って、すごいなと思いました。日々のスタジオ・ワークって今が何月か分からない様な感覚に陥ったりするので、ライヴとかそういう非日常的な空間にいた時に、強く印象に残る事が多いですね。
●これからもそういう素敵だと思える日が増えていきそうですか?
中村:増やしたいですね。毎日が素敵、毎日が記念日というのが理想です。
●今回のシングルは、色々な偶然が重なったアニバーサリー的な作品になりましたが、その楽しみはまだまだ続く感じですか?
中村:今年いっぱいは色々やりたいですよね。6月、7月はファンクラブ・イベントもありますし、そこでも新しい事をやっていきますので、楽しみにしていて欲しいです。楽曲に関しても、最近すごく良い曲がどんどん出来上がって来ているのと、自分達の中で波に乗って来ている感じがあるので、そこに7周年というお祝いムードの追い風を受けて、今年は疾走していきたいと思います。
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