前作『acoustic love』から約1年振りとなる高岡亜衣のニュー・シングル「こいはなび」が7月18日にリリースされる。ドラマの話をきっかけに作り込んでいったと本人が語る今作は、ドラマのエンディング・テーマとして、ミディアム・テンポに乗せられた切ない歌詞に一瞬のときめきが表現されたナンバー。情景を映し出す様な多彩な音色と彼女の優しいヴォーカルがそっと耳を撫でる今作について、早速彼女に話を聞いてみた。
(INTERVIEWED BY EMI MORI/EDITED BY NORIKO DOTE)
●作品としては約1年振りになりますが、これまではどの様な活動をされていたんですか?
高岡亜衣(以下高岡):アルバムのリリース直後からずっと制作を進めていました。『acoustic love』でソング・ライティングとして成長出来たなと感じたし、高岡亜衣の音楽ってこういうものだなって自分でも掴む事が出来たので、原点に戻って歌そのものを良くしたいと思ったんです。いいものを作った時により伝えられる様に、自分で試行錯誤しながら歌っていました。作品が出来た時に同じ物は出したくないし、新しい一面を出していきたいので、そういう部分で色々と挑戦しつつ音作りも今まで通り並行してやっていきました。今作は、今年に入ってすぐお話を頂いたので、制作期間は長かったですね。
●作り込んだ作品になりましたか?
高岡:2月頃からお話を頂いていたので、気分的には前作のリリースが終わってからずっと制作している気分です。今回は候補曲も色々とあったので、その作業をしていく中でヴォーカルを変えたいなと思いました。
●ドラマの話があって曲も色々と作っていたんですか?
高岡:そうです。曲調は色々あったんですけど、ちょっと切なさを感じさせる様なミディアム・バラードをという事でお話を頂いていたので、そこから曲を作り始めていきました。
●今までにもそういった形で作られた事はあるんですか?
高岡:制作チームの中では、こういう感じの曲をやってみればという話は勿論あるんですけど、全く別の所からお話を頂いて制作をするのは初めてでした。よりいいものをという訳ではないですけど、確信的な何かがないと制作を進めていくのも難しいと思ったので、曲作りは頑張りました。
●歌詞はすぐに書けましたか?
高岡:そうですね。今回の曲は友達と遊んだ時、駅からの帰り道で浮かんだ曲で、さっと書けました。自分の中ではどれぐらい時間が経っているのか分からないですけど、結構集中して作業をしてましたね。それが3分かも知れないし、30分かも3時間かも、3日かも知れないですけど、そんなに時間が掛かっていなくても長く感じた様な……、でもあっという間だった様な……、とにかく入り込んで作りました。
●この他の候補曲もギターで作っていたんですか?
高岡:そうですね、ギター1本で作っています。
●その時には歌詞も出来ていたんですか?
高岡:私は絶対に曲先なので、曲から作っています。歌詞に関してはドラマの曲なので、そのドラマを盛り上げる様な、場面に沿った物をという事で、最初に頂いた台本やストーリーを見ながら主人公の目線で作ってみました。
●テーマを元に歌詞の世界を広げるという作業はどうでしたか?
高岡:最初は1回のプレゼンに2〜3曲デモ・テープを作って持っていっていたんですけど、最終的にもう1回プレゼンする事になって……。ただそれが期限の3日位前だったのでこれは1曲入魂で相当気合い入れて作りました。でも曲も詞もワン・コーラスですけど1発OKだったので、その時は“来たな!!”と思いましたね(笑)。“どうだ!!”と思ってチームの皆に聴いてもらったら“いいと思います”って言ってくれたので、これは“来てるな!!”と思って(笑)。でもワン・コーラスの中にドラマの1番求められている部分全てを歌い込んでしまったので、ある意味その部分で完結しちゃったんです。だからその後をどう広げるかという所で悩みましたね。
●アレンジはその時点でお願いをしていたんですか?
高岡:アレンジもギター1本で作っていたんですけど、ドラマなのでドラマチックな展開が欲しいという事で、すぐにアレンジを発注させて頂きました。曲の出だしはしっとりと、でもサビでちゃんと盛り上がるドラマチックなアレンジをアコギの音色で作っています。
●今回は色々な種類の音が入ってますが、聴いた時はどう思いましたか?
高岡:今回のアレンジをして下さった方がすごく若い方で、最初聴いた時に、確かに若い人が作ったアレンジだなって思いました。でも私もその時聴いている曲や自分の気分で音楽の感じとか曲調が変化するタイプなので、私はそのアレンジがすごく気に入ったんです。ただ、どちらかというと『acoustic love』はシンプルなサウンドでやっていたので、周りのスタッフから高岡亜衣が今までやってきた音楽とずれてしまうんじゃないかという意見もあって……。でもそこはベテランの増崎さんのギターと若さのアレンジが上手くマッチして(笑)、また新しい感じの曲に仕上がりました。しっとりしたバラードなんですけど、盛り上がる所は盛り上がっています!! 私も聴いた事がない程色々な音が入っているんですけど、詞が決まっていた事もあってか花火みたいな効果音等も入っていて楽しいですよ。
●増崎さんにギターを弾いて頂くというお話は決まっていたんですか?
高岡:増崎さんもお忙しい方なので、そんなに簡単にお願い出来ないんですけど、スタッフからスケジュール的にもやって頂けると聞いたので、“ぜひ!!”とお願いして弾いて頂きました。
●今回ウーリッツァー・エレピという名前の楽器が使われていますね。
高岡:そうですね、エレピを入れています。他の楽器の音も、皆さんが素晴らしい演奏をして下さったので豪華になりました。でも全ての楽器の音を強調する様に作ったら音がぶつかってしまったので、そこはミックスで調整してもらっています。1つ1つの音色がすごく綺麗で、エレピの音も、増崎さんのギターも最高なので、今回の作品は耳で楽しめる部分も多いと思います。ミックスの時にはそれぞれ注目している音が違ったりして、私が聴こえていてもスタッフが聴こえていない音とか、逆にスタッフが聴こえていて私が聴こえない音とかもありましたね(笑)
●「こいはなび」というタイトルも季節を感じさせるものになっていますが、言葉はすぐに出て来たんですか?
高岡:“花火”は夏のものという事で意識していました。夏を感じさせる言葉って、例えばカップリングの中にも“太陽”“風”という言葉が出てきますが、どうしても前向きというか……、ちょっと明るいイメージになってしまう部分があるんですよね。でも“見つめられて 恋花火 君の瞳に映る私 消えないで! 誰よりも近くに居るからね”という3行が歌詞の中でも最初に浮かんできた言葉だったので、そこから“こいはなび”としてドラマの内容を表現してみました。このドラマは優雅に暮らしている“勝ち組家族”と、その同僚だった旦那さんが会社を辞めてラーメン屋を経営する事になるという格差社会のお話です。だから、今までの地位から急に普通の家庭になってしまった家族が、苦しい状況を乗り越えていく“絆”みたいな部分を意識して書きました。家族とか親しい人がいて、その相手の事がすごく好きだけど何も出来なくて……、でも向かい合った時にドキッとする一瞬のときめきを“花火”に例えています。この曲はサビのフレーズから浮かんで出来た曲で、ドラマのストーリーと歌の中の主人公を重ね合わせて作りました。
●1番と2番では状況も変わっていますよね。
高岡:1番は相手に対して何も出来ない、一瞬ドキッとして動けなくなってしまう状況、2番はちょっと頑張って進もうと歩みだす状況を書いているので時間は経っています。1番は“愛しさに潰されそう”の言葉に表されている通り、何も結論は出ずに自分の気持ちが固まったままで終わってしまうんですけど、2番では歩き出す事を歌っているので、ここから新たに話が始まっている感じはあると思いますね。私は“頑張って”と言う事は簡単だけど、答えが出てしまったら逆に困る事もあると思うんです。悩みを乗り越えたり小さな幸せを感じながら成長する部分てすごく多いし、核心的な答えに行き当たると逆に生きづらい部分もあるんじゃないかなって……。苦しくなりながらも生きていくからこそ喜びが生まれると思うし、簡単に答えを出していいのかっていう所は難しいですよね。結局は“ぐっと堪えよう”とか、“今が出る時だ”っていうタイミングを計りつつ、自分の中でこだわりを持って生きていくしかないのかな。
●今後ドラマのストーリーが進んで色々な展開が起こってもぴったりな曲になりましたね。
高岡:ドラマの内容は最初の方しか知らないので、どうなっていくか分からないですけど、どの場面でもしっくりくる曲になったと思います。大人でも子供でも、場面的な物でも、どこかで共感してもらえる所があるかなって。
●こういった大胆な歌詞は、今までになかった様な気がするんですけど。
高岡:今までは全部自分発信で作りたいもの、高岡亜衣というチームの目線を通して作った作品だったので、やんわりとした雰囲気の曲が多かっと思うんですけど、今回は全く別のきっかけから出来た曲だったので、いいチャンスになったし、いいものを作れたと思っています。私は“平和主義=LOVE&PEACE”な人で、どちらかと言うと何か起こった場合も“私が折れるから”っていうタイプなので、そういう面が今までの作品にも現れていたのかも知れないですね。今回はドラマの主人公や、もしそれが自分だったらどうするかという、人の目線を借りて世の中を見た曲なので、逆に自分自身を突き通せたという部分で大胆になれたのかも知れないです。音楽を作っていても新鮮だったし、また新しいタイプの曲が出来たので、すごく思い入れのある1曲になりました。
●そういう新しい経験があると、自信にも繋がりますよね。
高岡:自分が知らないうちに作品の世界が広がっていってくれるので、逆にありがたかったです(笑)。今ある自分を引き出してもらえたというか、この作品が出来たから、こういう曲もあって本来の自分も居ていいのかなって思えました。カップリング曲も何かのきっかけがないとここまでメリハリが出た曲にはならなかったと思うので、今回こういったお話を頂けて貴重な経験が出来た事は本当に良かったです。
●「あなたのココロ晴れますように」は「こいはなび」があって出来た曲なんですか?
高岡:そうですね。「こいはなび」があって出来た曲です。作品としてこの曲を聴いてくれるのは、ドラマを見た方が多いと思ったので、1曲目からの流れを意識して作りました。何も出来ないけど自分なりに答えを出して進んでいくという、切ないけど力強いラヴ・ソングです。肩をぽんぽんって叩く様な“頑張れるよ”という感じの私らしい歌になったと思います。
●これは曲としてあったものに、後から歌詞を付けていったんですか?
高岡:元々夏っぽくていい曲があったので、やっぱり「こいはなび」にも通じる所があった方が良いかなって思って作っていきました。音もすごく爽やかな曲なので、横ノリで聴きたいです(笑)
●アレンジでリクエストした部分はあるんですか?
高岡:アレンジャーさんが岡本仁志さんで、私の好きな感じを分かってくれている方なので、大まかなイメージだけ伝えてお任せしました(笑)。高岡チームは岡本さんにアレンジして頂く事が多いので、“岡本さんなら間違いない!!”と思っています。
●大田さんのコーラスを入れる事も決まっていたんですか?
高岡:大田さんとはデビューして1年位の時に一緒に制作をさせて頂いていて、今回もその時と同じ様なノリの夏ソングだったので、久々に男性の声を入れたいなと。doaファンの方々には高岡亜衣のコーラスをしているのを初めて聴く人がいるかも知れないですけど、私達チームの中では大田さんのコーラスがあってスタートした部分もあるので、原点に戻った感じです。皆でわいわいと身体を揺らしながら、爽やかに聴ける曲になりました。
●歌詞にも少し遊びが入っている部分がありますね。
高岡:この歌詞は何回か書き直しているんですけど、スタッフに見てもらったら面白いと言われたので、そこからどんどん内容を広げていきました。歌詞は3パターンくらい書いてたので、それをどうやって1つの歌詞にまとめるか色々考えましたね。上手く歌詞が繋がっていく様にメロディにはめていきました。
●歌詞の中の“あなた”は色々な人に例えられますね。
高岡:そうですね。自分の両親だったり兄弟だったり、誰かが聴いた時に“自分の事を励ましてもらってる”という気分になってくれたら嬉しいです。自分の大切な人に置き換えて、色々な捉え方をしながら楽しく聴いてもらいたいです。
●この作品が今年最初の作品という事になりますけど、出来上がってみて改めて思う事はありますか?
高岡:もちろん作品に対して色々と思っている所もあるんですけど……、自分の曲が流れるという事もあってドラマが楽しみです。もう絶対見ます!!
●ドラマはよく見られるんですか?
高岡:見ます、見ます!! この枠は良く見るんですよ(笑)。お昼とか何もない時は見てますね。
●ドラマの方にも出演されているとお聞きしましたが、どうでしたか?
高岡:今回は本当にエキストラとして出させて頂いたんです。ど素人ですけど、ガチガチに緊張するとかではなく、その時の流れに身を任せてやってみました。ギター・ケースを持って通り過ぎるシーンだったんですけど、シリアスな演技をしている役者さんてなかなか見る機会がないので、現場の空気を感じながらも、1人の観覧者みたいになっていました(笑)
●そういった別の形でもドラマに関わっているんですね。
高岡:エキストラとしてなので、“何月何日に出演します”と発表しないと気付かないぐらいのシーンですよ(笑)。実は親にも話そうと思っていたんですけど、“あっこれ分かんないな”と思ったから内緒にしていたんです。そしたらHPに出演しますという情報が載っていて、そんな大きな事にしてしまってどうしようと思ったんですけど……、でも言わなかったら気付かないなと思って(笑)。自分的には、俳優さんの生の演技が見れてラッキーでした!!
●もし今後出演の話があったら出たいと思いますか?
高岡:エキストラでは出たいと思わないですね。映るならちゃんと映りたいです(笑)。こういう風な流れでやっているんだなとか分かって面白かったし、新鮮だったので機会があれば出てみたいです。今回ドラマを通して曲を作れた事は、自分の新しい扉を開く鍵になったと思います。これからも音楽に限らず、新しい事には何でも挑戦してみたいです。人生は1回きりですし(笑)
●色々な面で以前と考え方も変わりましたか?
高岡:25歳になって自分の中での考え方が変わってきました。もう25歳になったし“子供じゃないな”って、“絶対的に大人なんだな”って思う様になってから、追いつめられたというか(笑)。どうしようって色々考えちゃいました(笑)。人生目標は色々あるので、そういうものを前提に今自分がどうするべきかという事を考えてやっていきたいと思います。こうしたらこうなるかも知れないし、とりあえずここはこうしとこうっていう部分が今まではあったんですけど、こうなったら怖いとか、そんなのやってみなきゃ分からないし、あまりネガティヴなものに捕われずに何でも言ってみよう、やってみようと思う様になったら、今すごい人生が楽しくて(笑)。25歳になってから人生が楽しいんです!!
●今月には増崎さんとのライヴもありますね。
高岡:今回は滴草由実さんと竹井詩織里さんもいらっしゃるので、お2人の足を引っ張らない様にちゃんと練習をしなくてはいけないなと思ってます(笑)
●今年も半分が過ぎましたけど、後半はどんな感じで活動を進めていきたいですか?
高岡:制作はずっと進めているので、新しい作品を作っていきたいですね。今作のリリースまでに1年掛かってしまったので、次作は絶対にそこまで空けたくないです(笑)
●これからやってみたい事は沢山ありますか?
高岡:気持ちの中では、チャンスがあったら絶対に逃したくないです。私って単純で、来年が12年に1度の最高時期なんです(笑)。だからそこに向けて今やるべき事を頑張ってクリアしていきたいですね。
●目標があると頑張れるタイプですか?
高岡:目標があったら、頑張れます。頑張る為の頑張る目標ですね(笑)
●今後リリースしていく作品とか歌詞に、形として現れる事はありそうですか?
高岡:高岡:そこまでは分からないですけど、ひょっとしたら……!?
●今年は楽しく過ごせそうですか?
高岡:そうですね、楽しく前向きに過ごしたいです。
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