北原愛子2007年夏に送るラテン・ソングは、情熱的なサンバのリズムに乗って、切ない大人のタブーな恋を描いた刺激的なナンバー。いけないと分かっていても、気づいた時には自分の気持ちに素直になってしまっていた、タブーな恋に落ちてしまっていた……そんな複雑かつ繊細な女心を歌った新作について本人に話を聞いてみた。(INTERVIEWED BY YUKARI MATSUBARA)
●まずズバリ、新曲「SAMBA NIGHT」の聴き所を教えて下さい。
北原愛子(以下北原):夏らしい曲なので、何も考えずリズムに乗って、この夏一緒に盛り上がって行こう!っていう部分ですね。
●サウンドはまさに賑やかなサンバ!という感じですが、歌詞の内容は切ない作品になっていますよね。
北原:そうですね。サンバだからってただ楽しいだけじゃなく、どこか切なさが感じられる様な、そんなギャップが私は好きなので、そういった要素を盛り込みました。
●歌詞は切ない女心が描かれていますね。
北原:一般的に三角関係だったり、大人のタブーな、秘密を持った恋愛を描いてみました。どんな人も、人を好きになるのは頭ではなく心ですよね。好きになってはいけない相手だって分かっていても好きになってしまう……。何を求めるわけでもなく、ただ側に居たい、ただ側に居て欲しい……、そんな切ない女心を歌ってみました。
●そこまで深いタブーな秘密の恋愛をテーマにした歌詞って、これまではなかったですよね。
北原:ないですね。今までは2人の恋愛風景を描いてきたので、すでに2人がいて、そこにもう1人が加わってくるっていう、複雑な恋愛シーンや叶わない恋を描くのは初めてですね。
●何故秘密の恋をテーマにしようと思ったんですか?
北原:最近友達とか、私の周りでそういう切ない、叶わない恋愛をしている人が多くて、相談を受ける事が多いんですよ。何でそうなってしまうのかなって思いつつ、でもしょうがないのかなって思ったり……、きっとその立場に立ったら、もどかしくてしょうがないんだろうな〜って。そんな想像を膨らませながら書いていきました。
●前の取材の時にタブーな恋とか、浮気とか、そういうモノに対して北原さん自身は否定派って話がありましたけど。
北原:そうですね、私は基本的には否定派ですね。だって、結局傷つくのは女の子ですからね。自分も、そして相手の女性も傷つけてしまう事になるじゃないですか。
●でも、もしも自分がそうなったら、どうなってしまうと思います?
北原:私の場合、最初に彼女が居るとか、奥さんが居るって分かった段階で完全に対象外になるんですよ。相手に他の人が居るって分かった時点で、その人は異性という対象ではなくなるんですよね。
●それってある意味楽ですよね。
北原:そうですね。苦しまずに済みますからね。でも1回位はそういう経験もしてみたいなって(笑)。そんな願望も今回の歌詞には入っているかもしれないです(笑)。なので、もし自分がそういう状況だったら、というシチュエーションを想像して書いていきましたね。
●三角関係の切ない内容ですが、タイトルは「SAMBA NIGHT」という、ちょっとイメージと離れるネーミングですね。
北原:まずメロディを聴いて、この言葉が最初に浮かんできたっていうのと、あと、タブーな恋愛の複雑な心境っていうのが、サンバの情熱的で熱い、パーカッション等、色々な音が鳴っているイメージと重なったんですよね。何ていうか言葉では表せない、刺激的なニュアンスが重なったんです。サンバのイメージって私の中では、夜の大人の世界観っていう感じだったので、それとかけてみました。初々しいというより、“訳あり”みたいな(笑)。そういうイメージだったんですね。
●じゃあ、曲全体のイメージは昼間というより、夜の魅惑的なという感じなんですね。
北原:はい。夕方から夜にかけての、大人の世界観の曲ですね。
●歌詞の中では、サビの最後の“素直になってしまった”という部分が印象的でした。人を好きになる時って、いけないって分かっていても、理性では押さえられない部分で素直になってしまうものですよね。
北原:そうですね。好きな気持ちを押さえ切れずに、その好きな気持ちに素直になってしまった、落ちてしまったっていう、きっとそんな感じなのかなって思って書きました。彼と一緒に居る時は頑張っていい子でいようっていう、ただ側に居るだけで幸せで、でも心の底には叶わないっていう現実を抱えていて、そんな幸せな気持ちと悲しい気持ちが複雑に入り交じって今にも涙が出そうなんだけど、でも今はまだ流れないでっていう……2番にそんな歌詞が出てくるんですけど、歌入れをしてくれた女性のエンジニアさんがそこが好きだって言ってくれていました。多分その辺りは、恋愛のタイプは違ったとしても、きっと女性ならみんな共感出来る心情なんだと思います。
●2曲目「MY★WAY」は歌詞がいいなと思いましたが、聴き所はどんな所ですか?
北原:聴いているうちに、最後は何だか不思議とやる気が出てくる曲だと思います。「MY★WAY」っていうのは、“自分の人生”っていう意味なんですけど、誰でも人生をどう生きようかと考える時ってありますよね。人それぞれ悩む事があると思うんですけど、ちょっとでも共感してもらえて、同じ気持ちを分かち合えて、少しでも背中を押せるんだったら嬉しいなと思います。がむしゃらに精一杯に、泣いたり、落ち込んだりしても、そんな自分も自分で逃げられないじゃないですか。人は考え出すと難しく考えてしまいがちですけど、でも、本当はもっとシンプルなんじゃないかなって。心の中にはすでに答えがあったりして。幸せってその心次第だと思うんです。きっとそんな風に悩んでいるのは自分だけじゃなくてみんな同じなんだと思います。
●今までにもこういう世界観の歌詞はありましたが、この曲は特に北原さんらしさが表れた歌詞だなって思いましたが?
北原:そうですかね(笑)。みんなの背中を押すつもりで作って、結局いつも自分に返ってくる事が多いんですよね。今回も聴いていて自分自身もなんだかやる気が出てきました(笑)
●では3曲目の「ありがとう」の聴き所はどんな所ですか?
北原:この曲はスピカさんの作曲、編曲の作品ですが、オケはオシャレな感じでとても気に入っています。歌詞は失った人に対する想いを描いてみました。私のイメージでは天国に逝ってしまった人に対する気持ちなんです。「ありがとう」といつでも言えると思っていたのに、いつでも側にいてくれると思っていたのに、もう2度と言う事が出来ないっていう切ない内容です。人って普段なかなか気付けないんですよね。健常で暮らしていると、大切なモノに。失って気付く事って多いけど、でもそこからだと遅いんですよね。この曲は、是非歌詞を見て頂きたいです。
●「ありがとう」って言葉的には温かい言葉なのに、それがもう言えないっていう、曲の中では逆に物凄く切ない響きに聴こえてきました。
北原:そうですね。「ありがとう」といつでも言えると思っていたのに、言えなくなるシチュエーションってどういうものかなって思っていて、相手がこの世からいなくなってしまうという究極のシチュエーションを選んで描いてみました。1秒あれば言える言葉……「ありがとう」。みんなちゃんと言えていますか?というメッセージも込めています。
●北原さん自身、今まで過ぎた後に後悔した事とか、失った後に気づいた大切なものってありましたか?
北原:そんな事たくさんありますよ。後悔した事はあまりないんですけど、気付いた事は山程ありますね。でも、その時は辛かったり、しんどかったりするんだけれども、それがあったから大切な事に気付けたり、人に優しくなれたり……。確かに失った後に気づいても遅いんですけど、でも次に生かせるっていうのはとても貴重な事だと思います。
●一見ありふれた、シンプルな言葉なんですけど、実はとても大切な言葉なんだなって、こうして改めて音楽で気付がつかされる事ってありますよね。それが音楽のいい所だなって、この曲を聴いて感じました。
北原:大切な言葉って、得てしてシンプルだったりするんですよね。でも、それを言うのって意外に難しい。前にブログにも書いたんですけど、“もしも残り3日の命だとしたら何がしたい?”っていう質問に、立派な家を建てたいとか、高級な車に乗りたいとか、お金持ちになりたいとか、そんな事は誰も望まないらしいんですよね。産んでくれたお母さんに“産んでくれて有り難う”って言いたかったり、困らせた人に“ごめんなさい”って言いたかったり、愛する人に“愛している”って言いたいと思うそうです。または大切な人と同じ時を過ごしたい、心の友に、みんなに感謝の気持ちを伝えたい……、そんな事を人は切実に望むそうです。どうして人は3日あれば出来る事を、一生をかけて出来ないんですかね? 命には限りがある事を忘れてはいけないなって思いますね。
●3曲出来上がってみて、ご自身で聴かれてみていかがでしたか?
北原:それぞれ聴いて下さる方々によって、3曲の中にドキっとするフレーズが必ずどこかに入っていると思うので、是非聴いて楽しんで頂けたらと思っています。アレンジャーさんも3曲全員違っていて、ギタリストも皆さん違うので、その辺のオケの違いも楽しんで頂けると思います。
●では最後に2007年夏のご予定は?
北原:まずは8月25日の大阪・hillsパン工場でのレコ初ライヴが楽しみなのと、あとは2007年の夏は今年しかないっていう事を胸に刻んで……健康オタクで頑張りたいと思います!
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