前作「SUNDAY MORNIG」から約3ヶ月振りの6月18日、上木彩矢がニュー・シングル「君去りし誘惑」をリリースする。この曲はPOCARI SWEAT presents“ブカツの天使”応援ソングとして既にオンエア中なので、耳にした人も多いはず。爽快でキャッチーなメロディにのせて歌うのは、自分のもとを去った人との夏の思い出を懐かしむ主人公の姿。やりきれない心情を綴った歌詞には“潤す”“流れる汗”など、“夏”を彷佛させるキーワードがちりばめられており、彼女の目から見た青春が感じられるナンバーになった。その後に続く「Whenever youユre gone Today」は青空と吹き抜ける風が感じられるサウンドと、クールな女性の言動が綴られた歌詞が魅力のナンバー。丸みを帯びた上木の歌声が堪能出来る楽曲だ。今年に入って更に精力的に楽曲制作を行っている彼女に、今作について話を聞いてみた。
●前作の「SUNDAY MORNING」が春に向けた曲で、今回の「君去りし誘惑」が夏を意識した曲という事で、季節シリーズになっているのかと思ってしまったのですが……。
上木彩矢(以下上木):季節を見越して作ったという訳ではないんですけど、今年はリリース・タイミングが良かったのかもしれませんね。とは言っても、今回のシングルのジャケット写真も青空の下で撮影しているので、自然と、意識した様な形にはなっています。
●「君去りし誘惑」はPOCARI SWEAT presents“ブカツの天使”応援ソングとなっていますが、これは曲を作る段階からあった話だったんですか?
上木:このお話自体は少し前から聞いていたんですけど、いつからオンエアされるとかそういう事は決まっていない頃から作ってはいましたね。
●となると、歌詞の内容もそういう事を考えて書かれていたと。
上木:そうですね。応援ソングという事だったので、中高生の青春みたいなものをテーマに、夏っぽく爽やかというイメージでは作りました。
●この曲を聴いた時はどんな印象を持ちましたか?
上木:この曲は今年に入ってから聴いたんですけど、デモはすごくシンプルでした。聴いた時に直感で気に入ってしまった曲です。洋楽っぽい感じが良かったというか……。
●もともとサビから始まる構成だったんですか?
上木:もとはサビから始まる形ではなかったんですけど、サビ頭から始まるヴァージョンもレコーディングして、最終的にこの形でいく事になりました。
●この曲もアレンジで変わったんですか?
上木:そうですね。岡本さんのアレンジでかなりのロック・チューンになっていると思います。アレンジで曲が変わっていくのも楽しいし、それから歌詞が入って曲が完成すると、またイメージが変わってくるので、制作作業はすごく面白いですね。最近は比較的余裕を持って制作作業が出来ているので、ミックスやマスタリングにも時間をかけられたし、1曲を見つめ直す時間があったと思います。歌詞に関してもサラッと書けたし、レコーディングもテンポ良く進んだので、そういう意味で安定している部分が作品にも出ているんじゃないかと……。
●歌詞の言葉選びも順調だったと。
上木:かなり早かったと思います。最近は歌詞を書くのも早くなってきました。私は短気集中型なので、普段の生活の中で色々なものを吸収しておいて、“歌詞が書きたい”という気持ちが爆発した時に一気に書くんです。そうするとすごくスムーズに歌詞が書けるという事が最近分かってきました。それも、自分の中でペース配分が出来るようになってきたんだと思います。
●ちなみにタイトルの「君去りし誘惑」という言葉はどういう所から出て来たのでしょうか?
上木:私は、タイトルを決めるのが得意ではないと思っているので、1人で決めないんですね。だからいくつか候補を挙げて、スタッフとみんなで話し合って決める事が多いんです。今回のタイトルもそうやって決めたんですけど、“君去りし誘惑”という言葉自体には、付き合っていた人が去って1人になったら、今まではなかった誘惑が新たに現れてきた。でも、結局“君”との思い出がずっと忘れられなくて、やっぱり“君”が1番だという事を痛感しているという、ちょっとした裏テーマ的な意味もあったりします。でも、聴いて下さる人がこのタイトルを見て“これって何だろう?”って思ってもらえたらそれで良いと思います。そこから勝手に色々考えてもらっても良いですし。
●曲調的にはかなり爽やかな感じになっていますね。
上木:青春真っ盛りの中高生が聴いたら、すごくグッとくると思います。青春時代を経て大人になった人達も、晴れた日にドライブで海に向かう時に聴いてもらったりしたら、合うんじゃないですかね。
●“青”というキーワードは、歌詞を書く時から掲げていたんですか。
上木:はい。夏の曲を作ろうというのがあったので、“青”から想像するとなると“海”“空”というダイレクトな言葉を挙げて歌詞を書いた感じです。だから分かりやすい内容になっていると思うし、去年発表した「明日のために」とはまた違う夏ソングになっていますね。
●すごくはっきりしていますよね。
上木:そうですね。「明日のために」も応援ソングですが、それとはちょっと違う仕上がりになっています。「君去りし誘惑」は切なさと汗と涙の結晶が凝縮されている感じです。
●上木さんは、そういう汗と涙と……という世界についてはどう思っていますか?
上木:私は高校の頃は転校とかがあったので帰宅部だったんですけど、中学生の時は部活をやっていたんです。うちの中学は部活の掛け持ち禁止だったので、欲張りだった私は、1年生の時はバスケットボール部、2年生はコーラス部、3年生の頃は陸上部、と言っても足が速かったので陸上の大会だけ出てくれと言われて、練習には参加せずに大会にだけ出場したり(笑)と、色々やっていました。陸上部も大会が終わったら辞めた形になっているので、卒業アルバムの部員写真にはどこの部にも写っていなという少し苦い思い出がありますね(笑)。でもバスケ部だった時は一生懸命練習して、スタメンに入れる様に努力したりしていましたよ。あの時が1番青春していたかも。
●あの頃だからこそ、出来た事かもしれませんね。
上木:若さは無限大だなって思います。今の自分からすると、やっぱり羨ましい世界ですよね。よく20代の人や30代の人が“制服姿が羨ましい”とか“若いって良いわね”とか“学生時代に戻りたい”と言っていたりしますけど、10代の頃はそういう事を言う事自体が年を取った証拠だろうと思っていたんです。そしたら自分も最近思う様になっちゃって……(笑)。学生達を見ていると、キラキラしていると思うんですよね。自分が学生の頃、学校に来たOBの人が“今やっている事は無駄じゃないよ”と言っていた気持ちが今になって分かる様になりました。良い事も悪い事も全部無駄じゃ無い、キラキラしているあの時代はすごく良いなと思います。そういう意味で、今の中高生がこの曲を聴いてくれたら、曲を通して繋がっていられるなって……。
●聴いてもらいたい対象がはっきりしている曲ではありますよね。
上木:中高生の力ってすごいと思うんですよね。それは真似出来ない事だし、本人達はそのパワーのすごさに気付いていないと思うんです。色々な意味で無限大の可能性を持っている事に気付いて欲しいですよね。今回、こういう形で青春に触れた歌詞を書く事になった事で、改めて青春と向き合う事が出来たのは良かったと思います。
●歌詞にある“カラッポのココロ”という言葉が印象的だったんですけど、上木さんがカラッポのココロの状態になった時、それをどうやって埋めていくのでしょうか。
上木:私がこういう状態になったら、結構どんよりしたままで居ると思います。それでふとした瞬間にパチンと弾けて、急に吹っ切れる。それで吹っ切れてからカラッポの中身を埋めていくかも。カラッポの時はある程度カラッポのままにしておいて、ウジウジしているのが長いと“もういいや!”という感じになっちゃう時がいつか来ると思うので、その時に友達と会ったり、家族と電話したりとかして、色々な人とのコミュニケーションを通して埋めていきますね。“恋愛の傷は恋愛で治すべし”という意見がありますけど、それは違うと思います。その時は良いとしても、その事を後悔して落ちこむ日がきっと来るという事が分かっていてそうしているとしか思えないので、私はそういう事はしたくないです。だったら健全に埋めていきますね。
●そういう健全さは「君去りし誘惑」に通じるものがありますね。
上木:私って意外と真面目なんですよ!?(笑)。お酒を飲んで騒いでいる様なイメージを持たれたり、誤解される部分があるので、そういう人ではない!という事を今回の曲の歌詞を読んで思ってもらえると嬉しいです。
※この続きは本誌にて…。
|