先月リリースしたシングル「GO YOUR OWN WAY」に引き続き、滴草由実が約2年半振りのニュー・アルバム『THE PAINTED SOUL』をリリースする。前作『花Kagari』で叙情的な詞の世界と多彩な音楽ジャンルを取り入れたサウンドを聴かせてくれた彼女が、今作のテーマにしたのはオーガニック・ソウル。生音や自然の音にこだわったシンプルなサウンドと、ありのままの気持ちを素直に表現した歌詞が詰め込まれている。「I still believe 〜ため息〜」のアルバム・ヴァージョンやCRAFTとフィーチャリングしたラップ・スタイルの曲等、新たなフィールドへ一歩踏み出した作品と語る今作について、早速彼女に話を聞いてみた。
●前作『花Kagari』はジャズやサルサ、ロックをベースにした多彩なサウンドが印象的でしたが、今作はご自身の中でどういったアルバムになりましたか?
滴草由実(以下滴草):前作をリリースしてから色々と自分の音楽を見つめ直して、滴草由実の音楽のジャンルや色をきちんと固めたいなって思っていました。そう考えた時に、やっぱり私は、自分の歌を聴く事で皆が癒されて欲しいという思いが1番強かったんです。だから生音だったり、自然から出来た音であるオーガニック・サウンドをテーマに作っていきました。それが自分らしいサウンドでもあるので、オーガニック・ソウルを詰め込んだ作品です。
●選曲についてのコンセプトを教えて下さい。
滴草:曲の印象が1番ですね。自分が書きたいと思う曲やキャッチーで聴いた人の心にすっと入っていく様な、曲の持つイメージを重視して選んでいます。アルバム制作中にライヴを行ったりしていたので、お客さんの前で歌う事をイメージして選んだ曲もありますね。前作はバラードが多かったんですけど、今作はライヴで盛り上がれるアップ・テンポのナンバーも取り入れました。
●制作をしていく中で特にこだわった点はどんな所ですか?
滴草:今回は新たな自分の色を出すという事だったので、サウンド面は時間を掛けてこだわりました。それと同じ位時間を掛けたのがやっぱり歌詞ですね。歌詞は歌う時にすごく重要なものなので、出来上がるまでに時間が掛かった歌詞も多いです。2年半振りという事もあったので、その間に感じた事や伝えたい事を込めようと思って詞を書いていきました。
●全体的に前向きな歌詞が印象的ですが、詞を書いていく時に“キーワード”にした言葉や思いはありますか?
滴草:今までの作品や歌詞を客観的に見てみると、結構受け身な自分がいたので、受け身ではなくて自分から進んでいく事が次に繋がる事にもなるのかなと思っていました。その思いが全体的に前向きな歌詞に繋がっているんだと思います。その中でも人との出会いから学んだ事というのは1番大きかったですね。正直に、素直に伝えていく事で、より身近に私を感じてもらえると思ったので、アーティストとしてではなく1人の人間として語りかける様に詞を書きました。
●タイトルの『THE PAINTED SOUL』に込めた想いとは?
滴草:“THE PAINTED SOUL”は自分で魂を彩る、生まれ変わったという意味なんですけど、この作品を聴いた人に、自分の力で生まれ変わる事は出来るんだって思ってもらえる様に、新しく毎日を彩っていって欲しいなという思いを込めてこのタイトルにしました。
●1曲目に収録されているタイトル曲「THE PAINTED SOUL」は、作品全体のエピローグ的な意味合いもあるんですか?
滴草:このイントロは後半に作った曲なんですけど、新しい自分に生まれ変わるという意味で、心臓の音から始まる様にアレンジャーさんにお願いしました。アルバム全体をトータルしたイメージに仕上げたかったので、アルバムの音の中から感じ取ったものを詰め込んだという感じです。
●イントロとして1曲目に入れたのは、滴草さんのアイデアですか?
滴草:そうですね。最初からイントロを入れたいって話していました。スタートするという感じを出そうと思って、曲のアレンジに関しても私のアイデアが沢山散りばめられています。
●では収録曲の中で、今回新たに制作された曲について色々とお話を伺っていきたいのですが、「言葉にならない」はピアノのフレーズが印象的ですね。
滴草:元々はギターで刻んでいる感じの曲だったんですけど、綺麗なピアノを入れたいなと思って、DIMENSIONの小野塚さんにピアノをお願いしました。レコーディングに立ち会って頂いた際に、もう少しエモーショナルな感じでとかサビ前のフィルは力強くとか……色々話し合って制作していきました。ライヴでもよく歌う曲なんですけど、全体的に人の温かさというものを伝えたくて……、自分達が生活している日常の中で当たり前になっているものこそ大切で、見落としちゃいけないんだよという事を優しく表現しています。
●小野塚さんとは以前にも一緒に制作されていますよね。
滴草:前回のアルバムでも参加して頂いていますし、ライヴでもご一緒させて頂いたんですけど、生音がすごく素敵で聴き惚れちゃいました(笑)
●今作では他にも小野塚さんが参加されている曲はあるんですか?
滴草:「君の本当の君」も小野塚さんにエレクトロ・ピアノを入れて頂いています。
●「Cause It's my life」は、初期の頃のサウンドに近い様な気がしたんですが……?
滴草:これは1番温めていた曲で、2年前位に歌詞を書いて収録した曲です。“だって自分の人生なんだから”というタイトルなんですけど、ちょうどその頃に決意を新たにした出来事があったので、すごく印象深い曲ですね。歌詞をみているとなんだか懐かしくなります。
●当時、詞を書く時に色々と思い起こした事等もあったんですか?
滴草:地元から夢を追う為に東京に出て、その中で別れもあったりして……、その時の切ない気持ちとか色々あった事を絶対に無駄にしない為に、この世界で前向きに頑張ろうという気持ちを込めて書きました。今回のアルバムに入れる時に録り直しした方がいいのかと思ったのですが、その時の声とか想いは、その時にしか出ないと思ったので、当時の、歌詞を作ってその後すぐに歌った歌をそのまま収録しています。
●次の「Everything's gonna be alright」は、日本語と英語を織り交ぜた歌詞になっていますが、このラップの部分は?
滴草:この曲は自分で作詞・作曲・アレンジをした曲で、曲を作る時にエスニックっぽく、ワールド・ワイドな感じにしようと思っていました。曲の構成を考える時に、ここはラップを入れるというイメージでスペースを空けていたんですけど、英語ではない何かを入れたくて……色々迷いました。それでスタッフと相談をしたら、「CALLING ME」のカップリングで参加して頂いた方がタガログ語を話せるという事だったので、その方にレコーディングをお願いしたんです。英語とタガログ語が半分ずつ入っているので、歌詞表記を見ても分からない方が殆どでしょうね(笑)。男の子とかヒップホップ系の人は好きなテイストだと思います。
●制作にも時間が掛かりましたか?
滴草:今回は全体的に時間が掛かりましたね〜(笑)。その中でも、次の「Merry-go-round」はアレンジにすっごく時間が掛かりました。
●それでは「Merry-go-round」についてですが、具体的にどの部分に時間が掛かったんですか?
滴草:この曲は以前にアメリカでレコーディングをした時、現地のラッパーの方々と制作したオケが基になっています。何回やっても1番最初のサウンドやインパクトが出せなくて……色々と試行錯誤しました。その時の音に近づける様に何度も何度もアレンジを重ねて、でも上手くいかなくて……。でもそんな時に新しいアレンジャーさんとの出会いがあって、その方にアレンジをお願いして出来たのが今回収録されたアレンジです。それで、そのアレンジを聴いて浮かんだ言葉が「Merry-go-round」でした。
●タイトルが「Merry-go-round」に決まって、歌詞のイメージとして浮かんでいたものはあったんですか?
滴草:イントロの遅れ気味のピアノがカッコ良くて、それが頭の中を酔わせる様な、その……良い意味で回るイメージがあったので、それがタイトルの「Merry-go-round」に繋がっています。歌詞のイメージ的には、片思いをした時の伝えたいのに伝わらない想い、同じ軌道の中にいるのに手が届かなかったり、伝わらないっていう部分を“メリーゴーランド”に例えて表現しています。恋をしている時って“メリーゴーランド”みたいに光り輝いていて、ファンタジーな気持ちなんですけど、身近にいても気持ちが伝えられないもどかしさってあるんですよね……。
※この続きは誌面にて!!
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